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デルの64ビットサーバーが狙う「ハイエンドサーバーのコモディティ化」


 デルが、64ビットインテルXeonプロセッサMPを搭載した4Wayサーバー「PowerEdge 6800」、「同6850」を投入すると発表した。同製品は、UNIXキラーとも位置づけられる製品であり、デルがいよいよUNIXサーバーおよびメインフレームの市場に対して、本格的に打って出ることになる。「これによって、ハイエンドサーバー領域も、コモディティ化の世界に突入することになる」とデルエンタープライズ事業本部ソリューション本部・多田和之本部長は語る。一方、デル・プロフェッショナル・サービス事業部・諸原裕二技術本部長も、「すでにレガシーマイグレーションの導入事例が数多く出ており、今回の製品投入で、これにさらに拍車がかかることになる」と、今後のハイエンドエンタープライズ領域への展開に自信を見せる。多田本部長と諸原技術本部長に、64ビット4Wayサーバーの製品投入によって新たなフェーズに突入したデルのハイエンドサーバー事業戦略を聞いた。


ハイエンドレガシーシステムもIAサーバーに移行する

デルエンタープライズ事業本部ソリューション本部・多田和之本部長

デル・プロフェッショナル・サービス事業部・諸原裕二技術本部長
─今回の64ビット4Wayサーバー「PowerEdge 6800」および「同6850」の投入は、デルのサーバー事業にとって、そして、ユーザー企業にとって、どんな意味を持ちますか。

多田氏
 当社のサーバー事業では、2004年3月から、レガシーマイグレーション、あるいはUNIXマイグレーションといった方向性を強く打ち出していますが、これが本当の意味で、加速する段階に入ると思います。振り返ると、2003年は、サーバーにおいては、RISCサーバーとIAサーバーの売上高が交差し、同時にストレージでは、ハイエンドとミッドレンジ以下の比重が逆転した、まさに転換の年だった。つまり、ここで、サーバーとストレージのいずれもがレガシーの世界から標準の世界へと移行し、標準化された製品によるスケールアウトの世界が主流になったといえます。そして、2004年は、当社のエンタープライズ製品が出揃うとともに、サービス体制が整い、具体的な導入案件が数多く出揃った1年だったといえます。

諸原氏
 2004年の1年間で、当社で提唱するスケールアウトのコンセプトがユーザーの間に理解され、製造、流通、金融、公共やインターネット関連企業など、幅広い業種でスケールアウトによるシステムが稼働しはじめた。これらの実績からも、ユーザー自身が、IAサーバーによるエンタープライズシステム構築に乗り出しているのがわかると思います。

多田氏
 こうした実績を踏まえて、2005年は、ハイエンドレガシーシステムにおいて、IAへのパラダイムシフトが一気に加速する年になるだろうと見ています。ハイエンドサーバーは、UNIXしかない、あるいはメインフレームでなくてはならない、といっていたものが、標準化された技術がこの分野でも主役になるきっかけができた。ハイエンドサーバーのコモディティ化が進むことになるのです。それを牽引するのが今回の製品ということになります。

諸原氏
 昨年までは、レガシーマイグレーションといっても、情報系だけを切り出して移行してみたり、これまでレガシーで対応してきたような新規の案件を任せてみるかという程度だった。だが、一部導入したシステムが安定稼働し、運用コストでもメリットを享受できることがわかり、ユーザー自身がこのままレガシーシステムにこだわっていていいのだろうか、という疑問を持ち、気持ちが大きく揺らぎ始めている。さらに、当社においても事例が数多く蓄積でき、ユーザーに対して、成功事例をいくつかの角度から提示できるようになってきた。最初は、情報系だけという小さな突破口だったものが、デルが提案するレガシーマイグレーションや、スケールアウトのメリットが浸透しはじめ、どんどん企業のなかに広がっている。そうした状況のなかで、今回の製品が投入できたということに非常に大きな意味があります。


─デルでは、スケーラブルエンタープライズ戦略を打ち出し、そこで、ユーザーが必要に応じてサーバーを増設するスケールアウト戦略を打ち出していますが、それは2Wayサーバーまでで構成するものだと考えていました。

多田氏
 当社では、IPFベースの4Wayサーバーをラインアップしていますが、これを導入するよりも、2Wayサーバーでのスケールアウトの方が、性能も高く、導入コストが安く済む。結果として、2Wayでのスケールアウト提案が多かったですから、どうしてもそういった印象が強かったのでしょう。実際、社内でも2Wayがスケールアウトの標準的モデルになりつつありました(笑)。しかし、今回の製品投入は、64ビットXeon MPで最大4基まで搭載できる4Wayサーバーですから、IPFベースのサーバーとは異なり、高いコストパフォーマンスを実現できる。これからは、4Wayサーバーによるスケールアウトの提案が一気に増加すると考えています。


Itanium 2はHPCに、その他は64ビットXeonでいける

─デルでは、Itanium 2によるIPFと、64ビットXeon MPによって実現するEM64Tは、それぞれどのように位置づけますか。

多田氏
 IPFは、浮動小数点演算が求められる科学技術分野、つまり、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の分野に適したサーバーとし、その他のアプリケーション分野に関しては、64ビットXeon MPでいけると見ています。デルでは、サーバープラットフォームの主流は、EM64Tであると判断したわけです。


─国産メーカーは、ハイエンドサーバーでIPFを積極的に採用しているのとは一線を画しますね。

諸原氏
 もちろんIPFの良さもあります。しかし、コストパフォーマンスを追求するとEM64Tの方がメリットがやすいとデルでは判断したわけです。

多田氏
 可用性や信頼性を指摘する声もありますが、それらはサーバーそのものの評価だけでなく、クラスタなどのハードウェア、アプリケーションやソリューション、あるいはサービスといったさまざまな要素が絡み合うことで実現し、評価されるものであります。その点ではまったく問題がないと考えています。最も標準化されたものが、最も信頼性が高く、可用性が高い。それは、デルが取り組んできた過去の実績からも明らかです。


─AMDのx64への対応はどうなりますか。

多田氏
 現在のロードマップのなかには含まれていませんが、常に検討はしています。AMDのx64で、圧倒的なパフォーマンスが出る標準的なアプリケーションなどがあれば、採用の可能性が高くなるでしょう。しかし、そうでもない限り、製品ラインを増やすことで、過剰な投資になることは避けたい。顧客にメリットがあると判断したもの、そして、標準化されたものを採用して、製品化するのがデルの基本的な考え方です。


サービス体制の強化でハイエンド領域の信頼性を高める

─どのようにしてハイエンド領域での信頼性、可用性を高めると。

諸原氏
 サービス体制の強化は大きなポイントです。DPS(デル・プロフェッショナル・サービス)では、年内までに現在70人の社員を、150人近くにまで拡大させます。ここでは、中堅企業を対象にした人員増加も図りますが、大手企業におけるハイエンドソリューションに関しては、さらに積極的な増員を図ります。その領域だけを切り出せば、現在の3倍から4倍の人員増になります。さらに、本社に設置している検証センターのデル・テクノロジー・ソリューション・センター(DTSC)を、今年7月までの間に、80平方メートルから160平方メートルへと拡充する予定ですし、先頃開設したエンタープライズ・コマンド・センター(ECC)も24時間365日の監視体制をスタートさせます。加えて、DELL|EMCブランドのストレージ製品の定期診断サービス「SANヘルスチェックサービス」を開始し、これまでのリアクティブなサポート体制から、年2回の定期診断により、事前に障害を防いだり、改善提案をするなどの施策を用意します。今年はサービス体制の強化が大きなポイントです。

多田氏
 こうした体制に加えて、事例をどんどん公開していくことも重要な取り組みだと考えています。デル自身の事例、あるいはデルが提案したスケールアウトによる成功事例をもっと公開していく考えです。


─今回の製品投入によって、いわゆるTier3におけるマイグレーションの進展が進むことになりますが、その点での体制はどうですか。

諸原氏
 64ビットの標準化を促進するとともに、データベースサーバーへの適用を加速するソリューションを提供することが必要だと考えています。今後は、そのための仕組みづくりが必要です。

多田氏
 UNIXで動作していたERPやCRM、ユーザーアプリケーションを、いかにして、スムーズに4WayのEM64T上に移行させるかが課題でしょうね。そのためには、ISVとの連携を強化していく必要がありますし、グローバルアライアンスによるマイクロソフト、SAP、オラクルなどとの連携強化に加えて、日本ローカルの製品やベンダーとの連携にもフォーカスを当てていく必要があると考えています。


─ビジネスコンサルティング分野にまで踏む込む必要もあるのでは。

多田氏
 いや、むしろ、ますますインフラテクノロジーで求められる部分が多くなるでしょう。もちろん、ビジネスコンサルティングが求められるシーンもあるでしょうが、それはパートナーとの連携によって解決したい。この分野では、パートナーをむやみに増やすのではなく、案件が発生した段階で、最適なパートナーと手を組んで、ユーザーに提案していく体制を作りたいですね。


─新製品の商談は、すでに始まっているのですか。

多田氏
 レガシーシステムを導入しているユーザーが高い関心を示しています。また、IPFベースのサーバーで商談していたものを、今回の製品に切り替えたりといった例もあります。これから、この事業は加速していくことになります。4Wayサーバーという観点から見れば、少なくとも、現在の倍は売っていきたいですね。



URL
  デル株式会社
  http://www.dell.com/jp/

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( 大河原 克行 )
2005/04/12 11:35

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