Enterprise Watch
最新ニュース

NTT、ネットワークブート型のシンクライアントシステムを本社へ導入開始

本社で実証し、2005年度中の商用サービス化を目指す

今回導入されるストレージ・セントリック・セキュリティ・システムの概要

社内での基本的運用の仕組み。ディスクのマウントに関してはiSCSIを利用する
 日本電信電話株式会社(以下、NTT)は4月26日、NTT研究所が開発した、社内のストレージを統合管理する「ストレージ・セントリック・セキュリティ・システム」を、2005年度より東京・大手町のNTT本社ビルに全面導入すると発表した。これは同システムの商用化に向けた動きの一環で、同社では本年度内の商用化を目指して実証するとしている。

 ストレージ・セントリック・セキュリティ・システムは、すべてのストレージを一カ所で統合管理することにより、情報漏えいを防止できる環境の実現を目指すもの。NTTでは、1)現在と同等の利便性が確保できること、2)システムの管理コストが膨大にならないこと、3)既存のシステム・業務を前提としており導入障壁が低いこと、の3点が情報保護対策ソリューション普及の前提になると見ており、ストレージ・セントリック・セキュリティ・システムであればこれらを満たせると考え、商用化を目指しているという。

 同システムでは、HDDレスのクライアント端末を用い、ユーザーデータだけでなく、OSやアプリケーションなどもストレージで一括管理する。具体的には、ユーザーは認証用USBキーを用いて端末を起動した後、ストレージへアクセスして、そこに保存されているイメージを利用してネットワーク経由でOSをブートする、といった仕組みを採用している。こうした仕組みの場合、OSのパッチ管理やデータの集中バックアップも可能になることから、情報漏えい対策面での効果だけでなく、運用効率の向上と、それによるTCO削減も見込めるという。

 また、サーバー側のリソースでアプリケーションを処理する一般的なSBC(サーバーベースコンピューティング)と異なり、クライアント側の性能を十分に活用できる点も特徴。加えてWANとの親和性も高いとのことで、「何百kmのファイバーを経由した検証なども行っているが問題ない。WAN経由でも十分実用に耐えるパフォーマンスが得られる」(NTTの第三部門 プロデュース担当 担当部長、影井良貴氏)としている。

 なおこうしたシステムの問題点としては、始業時などPCの利用を一斉に行う時に、ネットワークへの負荷が高くなる点が挙げられるが、影井氏は「キャッシュ(サーバーなど)を設置するほか、起動をずらすなどの運用面でカバーする」とした。


ネットワークブートとリモートデスクトップを融合、モバイルでの利用も可能に

社外や社内の無線LANスポットからアクセスする場合の概要

NTTの第三部門 プロデュース担当 担当部長、影井良貴氏
 あわせてこのシステムでは、社外や社内の無線LANスポットからもアクセスできる仕組みを用意した。具体的には、ノートPCアクセス用のHDDレス端末を社内に別途設け、これをWindowsのリモートデスクトップ機能を利用して遠隔操作することで、作業を行えるようにする。またこうしたアクセスの場合にも前述の認証用キーを用いるが、これにはNTT情報流通プラットフォーム研究所が開発した「セキュア企業網アクセス制御技術」が利用されているため、ユーザーはアクセスネットワークの違いを意識せずに社内LANへアクセスできるという。なお、この利用法の場合はRDPプロトコルによって通信を行うことから、ノートPCとHDDレス端末の間では画面情報とキー・マウスの入力情報がやりとりされ、アプリケーション処理はHDD端末側のリソースによって実行される。

 さらに、これだけではファイル管理が十分でないとして、情報漏えい対策に用いられるNTT-ATのドキュメント管理システム「Smart Leak Protect」を併用する。この製品は、各ユーザーのファイル操作をセキュリティポリシーにのっとって監視する機能を備えており、違反操作の検出時に管理者へ警告したり、外部媒体への記録を制限したりすることが可能。影井担当部長はこれに関して、「すべてを制限することもできるが、持ち出し禁止を重要なファイルだけにすることで、利便性を損なわないで導入できる」とした。

 NTTではこうしたシステムを2005年度中に本社内へ導入。250台+αのPCをHDDレス端末に入れ替えるとともに、商品化を進める。商品化の形態はまだ未定だが、まずはグループ企業からソリューションとして提供される見込みで、将来的にはASP形態で提供する可能性もあるという。影井担当部長はこのシステムに関して「今のPCと使い勝手が変わらないということを考えると、非定型業務が多いところにも訴求していける。また重たいデータの出し入れを伴うところにも適用できる」として、ブロードバンドネットワーク時代のソリューションとしては、SBCよりも期待できるとの見解を示した。



URL
  日本電信電話株式会社
  http://www.ntt.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.ntt.co.jp/news/news05/0504/050426.html

関連記事
  ・ NTTと日立、サーバーに負荷をかけないネットワークPCを共同開発(2003/11/20)


( 石井 一志 )
2005/04/26 20:57

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.