日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、同社のソフトウェア事業戦略の方針について、報道関係者に説明を行い、このなかで、ミドルウェア戦略の強化、およびSOAの具現化に向けた取り組みとして、主要ITプロセスの統合を自動化する「ITサービス・マネジメント・ソリューション」を明らかにした。
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ソフトウェア事業部・三浦浩事業部長
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今回の報道関係者向けの事業説明会は、5月17日、18日の2日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催されている、IBMソフトウェアの統合展示会&カンファレンス「IBM Software World 2005」にあわせて行われたもの。ソフトウェア事業部・三浦浩事業部長は、「IBMの強みは、Rational、Lotus、WebSphere、DB2、Tivoliの5つのブランドのミドルウェア製品群を中核に、幅広いレンジをカバーしていることであり、これによって、ユーザー企業のビジネスの変化に柔軟に対応できる情報システム構築を支援する」とコメントしたほか、「ソフトウェア企業の買収は、これまでどおり継続する」とした。
ミドルウェア強化に関しては、「これまでの製品個別の強化から、それぞれの製品を組み合わせたインフラストラクチャー・ソリューションへと発展し、今後は、ビジネスパートナーとの連携によるインダストリー・ソリューションの展開へと取り組むことになる」と前置きし、それぞれのフェーズにおけるIBMの事業展開について説明した。
プロダクトの強化では、Rational、Lotus、WebSphere、DB2、Tivoliの5つのミドルウェア製品ブランドにおいて、2005年に入ってからも数多くの新製品投入や機能強化を進めていることを示し、「情報システムを構築するための、より強力なエンジンを提供できるようになった」とした。
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5ブランドのプロダクトを強化
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これまでのソフトウェア企業買収の内訳
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3月25日に「CICS Transaction Server for z/OS V3.1」を投入して、既存のCICS系のアプリケーションをWebサービスやSOAに対応できるようにしたのを皮切りに、4月には、ESBを実装するメッセージングミドルウェアとして「WebSphere MQ for Multiplatform V6.0」や、SAPへの最適化を図った「DB2 Universal Database V8.2.2」、Eclipseベースの新たな負荷テストソリューションとしての「Rational Performance Tester 6.1」を投入。そのほか、今年中に大規模なバージョンアップを控えている「Lotus Notes/Domino」の機能強化や、「Tivoli」の強化なども発表している。
さらに、2001年以降の企業買収が21社に達していることを明らかにし、「部品としての先進性を追求するために、補完できる技術や製品を持った企業を買収しており、このペースは今後も続くことになる」として、買収戦略を引き続き加速することで、製品強化を図っていく方針を示した。
今年に入ってからも、3月には、データ統合ソフトソリューションのAscential、5月には、オープンソースWebアプリケーションサーバーのGLUECODEをそれぞれ買収している。
「提携関係ではビジネススピードや、技術の適用という点で狙った成果が出ない場合があり、過去にもそうした失敗の経験がある。ソフトウェア事業においては、必要と思われるものに関しては全面的な買収を前提としている」と付け加えた。
また、インフラストラクチャー・ソリューションへの展開としては、ポータル/コラボレーション、コンテンツ管理、セキュリティ、情報統合、ワイヤレス(ユビキタス)という5つのソリューション分野に対して、5つのブランド製品のそれぞれの機能を組み合わせた提案が可能になるとして、「いかなる要求に対しても、コンポーネントの組み合わせで対応できる」としている。
また、ビジネスパートナーとの協業によるインダストリー・ソリューションへの展開としては、業種特化ソリューションの提供を強化ポイントとして掲げており、今年、ISVソリューションを販売する部門を日本IBM社内に設置したほか、業種に特化したISV向けプログラムの展開として、業界特化型ソリューションを持つISVを支援するPartnerWorld Industry Networks、ソリューション開発支援プログラムのSolution Builder Express Portfolioなどの制度を用意した。
「IBMのミドルウェアに対応したISV製品は、昨年までは約500製品だったが、今年は600製品に増加する。また、ISVとの提携、協業を進めるための中堅中小企業向けのプログラムであるISV Advantage Agreementは、昨年の15社から今年は40社へと拡大している。よりビジネスに直結した提案が行えるようになる」とした。
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SOAアプリケーションのライフサイクル
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一方、SOAの具現化としては、日本IBMが全社部門横断で取り組んでいる「SOAプロモーション・オフィス」の設置による製品/サービスのデリバリーのほか、ISVパートナー向けの研修制度の提供や技術支援をはじめとする協業体制などをベースに、ユーザー企業のアプリケーションのライフサイクルをエンドトゥエンドでサポートする体制構築に取り組んでいることを示した。
「ビジネスの変化に情報システムが柔軟に対応できるための各種部品を提供する一方で、ユーザー企業の間で問題となっているのは、システム同士の相互接続の硬直化、システムの複雑化といった点。SOAの実現では、インテグレーション、開発、運用といった部分が肝であり、これらを解決することで、オンデマンド型のダイナミックな体制が構築できるようになる」
同社では、ソフトウェアとサービスで主要なITプロセスの統合を自動化する新たな「ITサービス・マネージメント・ソリューション」を発表。ITプロセスを管理可能な部品あるいはサービスへと変換した上で、統合を自動化する。企業はこれまでのように手作業で部門ごとのITプロセスを設計したり、他部門との統合を行う必要がなくなり、一度、ITプロセスを設計すれば、すべての部門、業務間の統合を自動化できるようになるという。
「IBMの強みは、カバーしているレンジが幅広いこと、SOAアプリケーションのライフサイクルを管理するソリューションを提供できる点に強みを発揮する」とした。
■ URL
日本アイ・ビー・エム株式会社
http://www.ibm.com/jp/
IBM Software World 2005
http://www-6.ibm.com/jp/software/isw/
( 大河原 克行 )
2005/05/17 16:19
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