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富士通・黒川社長、「2005年度は攻めに転じる」


 富士通株式会社は5月25日、同社代表取締役社長の黒川博昭氏による2005年度の経営方針説明会を開催した。


2004年度はSI事業の不採算プロジェクトが大きく影響

代表取締役社長の黒川博昭氏
 まず2004年度の業績について、「売上高は4兆7627億円、営業利益は1601億円、純利益は319億円と目標には到達しなかった」と、期初に掲げた目標(売上高4兆9500億円、営業利益2000億円、純利益700億円)を達成できなかったことを報告。目標未達の理由として、「ソフトサービスの営業利益がマイナス570億円と大きく見通しがずれた」ことを明らかにした。

 ソフトサービスのマイナス要因となったのが、SI事業の不採算プロジェクト。これについて黒川氏は、「2002年以前に獲得したプロジェクトで問題が発生した。ちょうどこの頃は会社として苦しい時期であり、無理をして獲得したプロジェクトが不採算化した」と原因を分析。2004年度期初に想定できなかった点については、「正直にいって不採算プロジェクトの存在を認識していなかった。富士通の良さである顧客との約束を守るという点が、結果としてSEがぎりぎりまでなんとか対処しようとして処理できず不採算プロジェクトとなってしまった」と、完全に読み間違えを犯したと説明。「新規案件については、リスクマネジメントを徹底している」と、今後不採算プロジェクトが発生しないように対処したことを強調した。

 そのほかの事業については、プラットフォーム事業が利益体質へ転換したこと、電子デバイス事業はLSI事業への集中の準備ができた点を挙げた。


2005年度は基本方針は変えずに攻めに転じる

 2005年度は、2004年度から始めた4つのチャレンジ(既存ビジネスの徹底した体質強化・新しい事業を創り、育てる・フォーメーションの革新・マネジメントシステムの革新)の徹底と加速を挙げた。黒川氏は、「2004年度は生産性の向上・品質の向上・コストダウンを中心とした土台固めの年であったが、2005年度はこれに加えて新事業の創出や海外市場への進出など攻めに転じていく」と、積極的に展開する姿勢を示した。

 その一例として、2004年度は1800億円だった設備投資を、2005年度は2600億円まで拡大するという。「これまで原価低減を訴えてきたが、これをマイナスに受け取ってほしくない。原価低減により生まれた利益を次への投資に使い、いわゆる“プラス・スパイラル”の経営にしていきたい」と、積極的に設備投資を行う考えを示した。

 また、ITによる現場の革新も進めるという。「保守サポートを例にすると、顧客のシステムをネットワーク化して管理することで、出動率を下げたり、トラブルの修復時間を短くするなどの実績も出ている」とした。また、R&Dの研究成果を事業に早く結びつけることで、新しいサービスをいち早く提供していくとした。


プロダクト事業の基本戦略
 プロダクト事業については、QCD(Quality、Cost、Delivery)の継続的な改善、インテグレーションモデルによるシステム全体の差異化、グローバル展開の加速を基本戦略として掲げている。具体的な方策として、サーバー製品の第1四半期出荷の原則化を紹介。「これまで、プロダクトの出荷時期はばらばらであった。これを第1四半期に出荷を集中することで、残りの9カ月で商売ができるように改善する」とした。また、TRIOLEの展開加速や、商品強化を行うことにも触れた。「最近出した製品に32型ワイド液晶一体型PCがあるが、このように新しい価値を提供していきたい」とした。


システムプロダクトの基本戦略 ネットワークプロダクトの基本戦略 ユビキタスプロダクトの基本戦略

サービス事業の基本戦略
 サービス事業については、SIビジネスの健全化、ライフサイクルマネジメントへの注力、新規分野での受注活動強化、技術・人材重視を基本戦略として掲げている。「儲けるためには、リスクは無視できない。リスクをどう管理するかが課題となる。商談発生時からプロジェクト遂行を通じてリスク管理を行っていく」と述べ、リスク管理を徹底するとした。また、旧富士通サポートアンドサービス株式会社の完全子会社化の効果については、「商談数で300社、受注で20社と大きな成果が出ている」と、目標としていたビジネス創出が進展していると説明した。

 成長・新規分野の強化では、首都圏ビジネスの強化、ヘルスケアビジネスの拡大、安心・安全ビジネスの拡大、ユビキタス関連ビジネスの拡大の4つを挙げた。「首都圏ビジネスは、これまで別々であった組織を首都圏営業本部に再編し、営業・SE一体化を徹底・加速する。また、ヘルスケアビジネスや個人情報保護や災害対策などの安心・安全ビジネスなどに足がかりをつけていく」と、新規分野にも積極的に展開するとした。


2005年度の業績予想
 電子デバイス事業については、「基盤ビジネスで収益を確保し、将来の成長につながる先端テクノロジーへの投資を行う。今年9月に量産出荷を開始する90nmの割合を3年後には30%以上にしたい」とした。


 黒川氏は最後に2005年度の目標として、売上高を4兆8500億円、営業利益を1750億円、純利益を500億円をあらためて発表。「毎年確実に増益していくことをベースとする」と、着実に実績を上げるとした。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  経営方針について
  http://pr.fujitsu.com/jp/profile/kurokawa/2005/0525.html

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( 福浦 一広 )
2005/05/25 20:34

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