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NECの執行役員常務、伊久美功一氏
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日本電気株式会社(以下、NEC)は5月31日、オープンソースソフトウェア(以下、OSS)関連の事業を強化・拡大するため、新たにOSSベンダ数社と提携することを明らかにした。提携先として発表されたのは、米JBoss、ミラクル・リナックス株式会社、米Twin Sun、株式会社SRAの4社で、NECではこの提携によって、基幹業務対応のOSSミドルウェアサポートサービスを強化する。
「NECは、国内Linuxサーバー出荷高シェアNo.1の企業」と語るNECの執行役員常務、伊久美功一氏は、同社が2000年よりOSS/Linuxへのサポート体制を構築してきたことや、OSSコミュニティへの貢献度が高く、国内においてOSS普及を積極的に推進する有力な企業であることを強調した。OSSの利点として伊久美氏は、「コスト低減や、特定のベンダや技術へのロックインを回避できる」とし、業務での利用が拡大する方向にあるという。しかし、OSのLinuxや、WebサーバーのApacheといった著名なOSSと比較すると、データベースサーバーや、アプリケーションサーバーでは、まだまだOSSの利用は少ないという。伊久美氏は「企業でOSSを本格的に利用するには、サポートが重要」と語り、今回のベンダー4社との提携によって、OSSに対するサポートを充実させるとしている。
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JBossのCEO、マーク・フルーリ氏
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ミラクル・リナックスの代表取締役社長、佐藤武氏
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具体的にはまず、JBossとの提携によって、Javaのアプリケーションサーバー「JBoss AS」と、普及の著しい「Tomcat」に対して、高品質な保守サポートサービスを実現するという。開発コミュニティの中核に近い立場にあるJBossは、ソースレベルでの解析や、ソフトウェアそのものへの修正、将来版への反映といった、よりハイレベルなサポートを提供するという。JBossのCEO、マーク・フルーリ氏は、「NECとの協業を非常にうれしく感じている」と語り、日本国内においてNECがOSS推進企業の中核を成している企業であることを強調した。また、今後は教育サービスや共同マーケティング/セールス活動も予定している。
さらにミラクル・リナックスとの提携によっては、Windowsと互換性のあるファイルサーバー機能やプリントサーバー機能を提供する「Samba」、Windowsとの相互ユーザー認証を可能にするOpenLDAPの構築、保守サポート、教育サービスを提供することができるという。同社の代表取締役社長、佐藤武氏は、「日本国内においてSambaやOpenLDAPでの豊富な導入実績を持っている」と語る。
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Twin Sunの代表取締役会長、松尾正信氏
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SRAの代表取締役社長 鹿島亨氏
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上記2社と異なり、Twin Sunは、特定の技術を提供するベンダではない。しかしUNIXのコミュニティで積極的な活動をしてきたカルフォルニア大の研究者が中心となって設立された同社は、金融、Eコマース、医療といった分野に豊富な導入実績を持っているという。Twin Sunの代表取締役会長、松尾正信氏は、「我々は特定の技術を提供するのではなく、SIの立場からOSSを利用したシステムの構築から保守までをサポートする」と語る。また、企業内の半数は米国に永住権を持つ日本人スタッフであることから、日米の時差による24時間日本語によるサポート(日本時間の昼間はNECグループがサポートし、夜間はTwin Sunがサポート)が可能になるとした。
最後のSRAは、PostgreSQLをはじめとするOSSビジネスを積極的に推進しているベンダである。長年PostgreSQL普及に努め、2004年にPostgreSQL技術者認定制度(PostgreSQL CE)を開始している。今回のNECとの提携によってSRAは、PostgreSQLトレーニングでの協業を行うとし、2005年度中には500名の受験を予定しているという。同社の代表取締役社長 鹿島亨氏は「OSSはもともとが無料で配布されるソフトウェアであるため、どうやって儲けていくのかがむずかしい」と語りながらも、「NECという大企業との提携によってPostgreSQLが普及することを願っている」と述べた。
NECでは今後の5年で、5億円の売り上げ目標(ハードウェアなどの費用を含まず)を持っているという。最後に伊久美氏は、「OSS事業は、SIの事業である。今回の各社との提携によって、他社との差別化をはかることができる」と語った。
■ URL
日本電気株式会社
http://www.nec.co.jp/
プレスリリース
http://www.nec.co.jp/press/ja/0505/3101.html
( 北原 静香 )
2005/05/31 19:32
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