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企業の情報開示にも役立つ、EMCの「新しいアーカイブストレージ」


 「情報開示ができない企業は訴訟リスクにさらされる」、こう語るのは米EMC Centera部門マーケティング・ディレクターのエリック・ジャン・シュミット氏。同社は先月、長期アーカイブのためのディスクストレージ「Centera」の中堅・中小企業向け製品を発表しており、このCenteraを利用することで、企業の情報開示を支援できるとしている。Centeraを使うことで、どのようなメリットがあるのだろうか。


光ディスク・磁気ディスク・テープの利点を持つ「Centera」

米EMC Centera部門マーケティング・ディレクターのエリック・ジャン・シュミット氏
 Centeraの特長として、光ディスクのようなWORM(Write Once, Rad Many)機能を持ちつつも、磁気ディスクと同様にオンラインで利用でき、さらにテープのようにTCOの最適化が可能と、アーカイブに必要な要件をクリアしている点が挙げられる。

 アーカイブにとって光ディスクのWORMが必要な理由は、データの改ざんを防止するためだ。Centeraでは、これを実現するための機能としてCA(コンテンツアドレス)を利用している。Centeraでは、データをコンテンツという単位で扱い、そのコンテンツをCAによって管理している。このCAは、保存するデータがCenteraに送られた時点でハッシュアルゴリズムを用いて生成されるもので、データにアクセスするためにはこのCAを用いることになる。直接データに触れることがなくなることから、データの改ざん防止として効果があるという。

 また、データを管理する際、同一文書は1つのみ保存されることから、ディスクの使用効率も向上するという。「メールの添付ファイルの場合、複数人に送られると複数の添付ファイルができる。これを個別に管理するのではなく、1つの添付ファイルは1つだけ保存する仕組みを提供している」とシュミット氏は語る。

 そのほか、CenteraにはXMLベースのメタデータを使用したデータ管理機能がある。このメタデータには、データの作成者や作成日時などの情報が含まれており、このメタデータを用いてポリシーの設定が可能となっている。これにより、一般社員は2年間保管し、経営層では7年間保管するといった設定が容易に行える。こうした機能はディスクベースだからこそできる機能といえる。

 オンラインで利用できるというメリットは、プライマリストレージおよびバックアップストレージにも大きな恩恵を与えている。これまでのアーカイブはテープや光ディスクを使って行われることから、バックアップサーバーからアーカイブするファイルを選んで保存することが多かった。シュミット氏はこれについて、「これでは、プライマリストレージの容量も減らず、それによりバックアップストレージの容量も減らなくなり、コストが増大することになる」と指摘。Centeraを用いた場合、オンラインで利用できることから、プライマリストレージに収められるデータをそのままCenteraに保存することが可能になる。つまり、長期保存の対象となるデータはそのままCenteraに保存し、その分プライマリストレージの容量は削減できるというわけだ。プライマリストレージの容量が減れば、バックアップストレージの容量も減ることになり、TCOの削減に効果があるとしている。

 Centeraのもうひとつの特長は、容易な管理性にある。Centeraには、保管されたデータの保全性を保つため、システムに自己構築、自己修復の機能が用意されている。また、Centeraへのアクセスは、Centera APIという独自のインターフェイスを用いて行うため、一般ユーザーからはまったく見えない構造になっており、SANやNASなどを利用するときの手間がかからないという。「いったん導入すると、ほとんど管理を行わなくてすむ。SANの30分の1の管理コストになった企業もある」と管理性の高さを強調した。


すばやい情報開示には、テープよりもディスク

 こうした利点とe-文書法などの影響もあり、国内での関心も高まっているという。シュミット氏は、「企業のコンプライアンスという面でCenteraは有効だが、もうひとつ電子情報の開示という面でも有効だ」と述べる。

 シュミット氏は、具体的な例として米国で98年に起きた訴訟を紹介した。「Morgan Stanleyのバイスプレジデントが新ビジネスを開始した。しかし、そのビジネスは失敗し、多くの損失が出た。元バイスプレジデントはこの失敗について、Morgan Stanleyに対し成功しないことをわかっていたはずとして起訴した。訴えられたMorgan Stanleyは、これまでの事業記録を証拠として提出する必要が生じたが、これらの事業記録はテープに保存されていた。テープからデータを復元するのに時間がかかり、また出廷後に別のテープを発見するなど、証拠の提出に非常に時間がかかった」と、テープベースのアーカイブの問題点を紹介。「結果、Morgan Stanleyは、IT上の責任を果たしていないとして10億ドル以上の損害賠償を行うことになった」と、情報開示が企業にとってリスク要因にもなると指摘した。

 アーカイブを正しく行っていても、情報開示ができないと企業にとって不利益になりかねない。シュミット氏は、「コンプライアンスだけでなく、企業は契約などに準拠したデータ開示を行う必要がある。こうした要件にCenteraは有効だ」とした。



URL
  EMCジャパン株式会社
  http://www.emc2.co.jp/

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  ・ EMC、中堅・中小企業向けアーカイブストレージ「Centera」(2005/05/19)
  ・ 各種法規制に準拠するディスクベースのアーカイブストレージ「EMC Centera」 [前編](2005/03/14)
  ・ 各種法規制に準拠するディスクベースのアーカイブストレージ「EMC Centera」 [後編](2005/03/22)


( 福浦 一広 )
2005/06/03 17:40

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