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“ブロードバンド先進地域”アジア重視の戦略で世界と戦う、米Juniper


アジア太平洋地域担当副社長のアダム・ジャッド氏
 米Juniper Networksはバンコクにて、6月7日(現地時間)からExecutive Forum 2005を開催した。それに併設して同社は6月6日よりプレスセミナーを開催し、CEOや副社長らが事業戦略を解説した。

 アジア太平洋地域担当副社長のアダム・ジャッド氏によれば、アジア太平洋地域でのビジネスは、2~3年前から急激な成長が見られるという。これに対応すべく、同社では台北に新オフィスを設けたのをはじめ、20カ所のオフィスを同地域で運営しており、人員数も、2003年の100人程度から、現在では600名を超える規模に成長している。加えて、米国の会社でありながら、R&Dの拠点をインドと北京に設けているという。

 この理由として同副社長が挙げたのは「特別にアジア向けの製品を開発したかったから」ということ。ブロードバンドの普及と成長は、アジアが欧米を上回っているため、そこにフィットした製品を開発するのは、アジアで行うのが適していると同社は分析しているというのだ。また、ブロードバンド先進地域であるアジアで開発したものは、普及が遅れている欧米で、少し遅れて再利用できる可能性が高い。米国の業界関係者の中にも、訪米したJuniperのアジア地域担当者に対して、その動向を逐一問うてくる人がいるとのことで、ことブロードバンドに関する限り、業界全体でもアジアへの注目度は高くなっている。

 そして、Juniperのアジア重視戦略は、同社のアジアでの高いシェアに現れてきているという。ブロードバンド回線において、日本では54.3%でシェア第1位、中国では38.2%で同じく第1位、もっともブロードバンド化が進んでいるといわれる韓国でも45.8%で第2位の現状だとのことで、ジャッド副社長は「NTTが発表した資料によれば、この先5~6年で、3億人のブロードバンド加入者が出てくると見込まれている状況だ。当社にとって、もっとチャンスがあると思っている」と述べ、現状に満足せず、よりシェアを高めていく姿勢を示した。

 また、Juniperの中における数字を見ても、同社がいかにアジアを重視しているかがわかるという。アジア太平洋地域マーケティング担当シニアダイレクター、アンディ・ミラー氏は、他社はせいぜい、アジアで10~20%程度か、日本で5%程度なのに対して、「収益におけるアジアの比率は、当社全体の30%を占める。日本だけでも10%だ」と述べ、いかにアジアがJuniperにとって重要な市場かがわかる、とした。 


今後のビジネス向けブロードバンドの伸びが、Juniperのさらなる後押しになる

アジア太平洋地域CTOのアンドリュー・カワード氏
 Juniperではさらに、現在のアジアでは一般消費者向けの回線からブロードバンドの導入が進んだものの、「売り上げ単価が既存回線に比べて下がるブロードバンドは、キャリア側がビジネス向けには当初あまり積極的に提供してこなかったため、導入が遅れている。逆に、まだここでは伸びる余地がある」(ミラー氏)、「アジアでは、ブロードバンドの“サービス”導入が遅れている」(アジア太平洋地域CTOのアンドリュー・カワード氏)と分析しており、キャリアやサービスプロバイダに向けて、付加価値サービスの導入を訴えていくという。「インテリジェントなQoSなどの機能を持ち、大容量を備えるEシリーズなどのルータなら、ユーザーごとの帯域を下げずに、トリプルプレイサービスを提供できる」(カワードCTO)。


重要な要素にフォーカスし、ユーザーのニーズに確実に応える

会長兼CEOのスコット・クレンズ氏
 またクレンズCEOは「すべての戦略を自社で行うのは不可能。私が伝えたいのは、業界内での連携が大事になっているということだ」として、協業の大切さを主張。同CEOは続けて、「インテルがメインフレーム端末を作らずプロセッサに注力しているように、Juniperでは、トラフィック、アプリケーション処理の分野で勝者となるための戦略を練っている」と説明した後、同社が中心となって構想している次世代のキャリア向けネットワーク「インフラネット」構想を、インフラネット評議会として、45社以上の、キャリア・xSPや機器メーカー、アプリケーションベンダなど、異なった立場の企業が連合して推進していることを、協業の例として示した。

 さらにスコットCEOは重要なこととして、ユーザーを観察してニーズに応えること、そこから学習することのほか、「回答する前に質問することだ」と述べ、これらから得た確かな視点、確かな製品、そして確かなパートナーをもとに、確かな進歩を提供していく姿勢を強調していた。



URL
  米Juniper Networks
  http://www.juniper.net/

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( 石井 一志 )
2005/06/08 15:30

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