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“巨大ソフトウェア企業マイクロソフト”におけるサービス部門の意義は?


マイクロソフト 執行役 エンタープライズ・サービス担当の鈴木和典氏

MCSとパートナー企業とのすみ分けを表した図。MCSはアーリーアダプターを狙っていく姿勢を明確に示した
 マイクロソフト株式会社は6月14日、プレス向けの説明会を開催し、同社の執行役 エンタープライズ・サービス担当 鈴木和典氏と、米MicrosoftのMCS(Microsoft Consulting Services)担当ジェネラルマネージャ、ピーター・ラコジー氏の両氏が、「あまり認知されていない」エンタープライズ・サービス部門の取り組みについての解説を行った。

 この部門は、企業ユーザー向けのサービスプログラムを提供している部門だ。大きく分けると、計画・設計段階を支援するMCSと、運用・管理段階を支えるPremier Supportの2つがあり、国内ではそれぞれ、110名、120名のスタッフがいるという。

 このうちPremier Supportは、大規模顧客向けに用意されているサポートサービスという位置付けになり、同サービスを契約すると、24時間365日のテクニカルサポートを受けることができる。また顧客にはそれぞれTAM(テクニカルアカウントマネージャ)と呼ばれる担当者がアサインされ、顧客のニーズを的確にくみ上げてくれるという。一方、もう1つの核となるMCSでは、マイクロソフトの製品に特化したコンサルティングを行っている。

 鈴木氏によれば、これらのサービスを通じてこれまで注力してきたことは、「新しい製品・技術の市場への効果的な展開支援」「製品・技術の活用による生産性向上支援」「ユーザーの声を製品開発へフィードバックさせること」などだという。

 これらはどういったことかというと、たとえば大企業は、場合によっては年間数億円のライセンスフィーをマイクロソフトに支払っている。その中には当然、常に最新版が利用できるソフトウェア・サブスクリプションを契約している企業もあるので、権利としては最新版が使えるはずなのだが、「安定した現在の環境でいい」「最新版をどう使ったらいいのかがわからない」といった声があるという。

 これに対して同社では「どうすればITシステムを堅牢にできるか、最新技術を導入するとどういったメリットが得られるか、購入したライセンスを最大限有効に使えるか、などをアドバイスすることで、企業の生産性やTCO向上を支援したきた」(鈴木氏)と説明する。「たとえばストラテジコンサルティングのサービスなら、マイクロソフト製品のロードマップを熟知しているスタッフが、翌年、あるいは3~5年後に出てくる製品も含めて助言することによって、中・長期的なITシステム戦略の立案を支援可能だ」(同氏)。

 もっとも、こうしたサービスは、マイクロソフト自身ではなく同社のパートナー企業でもあるコンサルティングファーム各社が提供してきた部分のように思えるので、パートナーとのサービスの競合を指摘する向きもある。しかし鈴木氏は「当社のサービスはマイクロソフト製品に特化した形なので、そうしたところと競合することはないだろう」との見方を示したほか、「MCSでは、アーリーアダプターを中心に考えている。ノウハウを次に正しく生かせるようにしておけば、成功を見てパートナーが参入してくるだろう」と述べ、自ら開拓者となることによって、逆にパートナーに成功例を提供できるとした。


米MicrosoftのMCS担当ジェネラルマネージャ、ピーター・ラコジー氏
 またマイクロソフトでは、製品開発の早期段階から実際のシステムに導入する早期ユーザープログラム「TAP(Technology Adoption Program)」も、日本においてより積極的に推進し、ニーズをくみ上げていきたいとの意向を示している。このプログラムは、リリース前の製品を実環境で運用して、その結果をマイクロソフトへフィードバックをすることによって、製品の品質を向上させようとするもの。

 両氏は、「ユーザーコード自体がフリーズしていない段階から(フィードバックが)もらえれば製品版での修正が可能になる。またその後も次期製品やサービスパックで反映していける」(ラコジー氏)、「たとえばアドレス帳で、米国ではABC順で(Microsoft会長の)ビル・ゲイツが一番上になくても気にされないが、日本では会長が上にないと問題視されることもある。こうした本社が気が付いていないシナリオも製品として反映した方がいいのかなどを、製品リリース前に考えることが大事だ。細かい製品内部の仕様やクオリティの改善に対して、真剣に取り組んでいる」(鈴木氏)とそれぞれ述べ、TAPの意義について解説した。

 現在、日本では名古屋銀行がSQL Server 2005においてTAPに参加しているが、まだまだ数が少ないとのことで、鈴木氏は「日本の品質要求基準は高く、日本からの要求を取り入れて日本で通用するものにしていけば、世界でも通用する」と語り、7月から始まるマイクロソフトの次年度(FY06)においては、これまで以上に積極的に参加を呼びかけるとした。

 なお鈴木氏によれば、エンタープライズ・サービス部門はFY05(2005年6月まで)において、黒字を計上できる見込みという。「当部門の根幹は、お客様/パートナー指向。この分野で大きくもうけるつもりはない」とのことだが、少しずつでも事業は拡大していきたいとした。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/

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( 石井 一志 )
2005/06/14 18:38

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