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サンと東大、“グローバルな産学連携モデル”を目指し共同研究を推進


今回の共同研究のイメージ

東大の産学連携研究推進部長、太田与洋教授
 国立大学法人東京大学(以下、東大)とサン・マイクロシステムズ株式会社(以下、サン)は6月20日、新しい産学連携モデルの確立を目指し、IT分野における共同研究の協定書を締結したと発表した。東大とサンではこれまで、CPUの開発や高速ネットワーク構築といったIT分野の研究では、長期にわたって協力関係を継続してきたとのことだが、今回はワールドワイドでの連携も含めて、さらなる関係の強化を図るという。

 今回の共同研究では、「具体的な成果を出す、新しい産学連携モデル」(東大の産学連携研究推進部長、太田与洋教授)である「Proprius21」制度の仕組みを用いる。同制度は、従来の共同研究が陥りやすい、「テーマがわい小化する」「実用化しても使い道がない」「期待していた成果が出ない」といった課題を克服するべく始められたもの。計画立案の段階で時間をかけ、「守秘義務付きで、本音ベースで議論をする」(同教授)ことによって、目的や費用、期待できる成果などを、開始前にはっきりと設定できるようにするという。

 こうして検討段階で時間をかけるのであるから、当然、共同研究が中止になることもあり得る。しかし太田教授は、すでに中止になったものがあることを明らかにした上で、スタートした研究は十分な検討が行われた後に始まったものであることから、「リスク回避につながる。中止もあることが、このモデルの良さだ」と述べ、この制度のメリットを強調した。なお、サンとの共同研究は全体の9例目にあたるとのことだが、グローバル企業との連携は初になる。

 また今回の共同研究では、相互の橋渡しを務める共同研究員に、東大のポスドク(博士課程を修了し、常勤雇用される前の若手研究者。ポストドクター)をサン側の費用負担で起用し、円滑に研究開発を行えるようにする点も特徴という。将来的には、東大の研究員をサンの研究所に採用したり、逆にサンの研究者を東大に派遣するなど、グローバルな相互の人材交流も視野にいれているとのことで、太田教授は、「仮想的な話だが、将来は当大学の学生がサンの米国拠点へインターンシップに行く、などということがあってもいい」と述べた。


 研究対象分野は、次世代デジタルキャンパス(ナレッジ・マーケットプレイス)やeラーニング、コンピュータ科学分野などで、その中からセキュリティ、コンパイラ、HPC、モバイルテクノロジーなどにフォーカスするとしているが、具体的な研究テーマに関しては、Proprius21の制度に基づき、1年ほどかけてじっくりと選定するとのこと。サンでは3年、5年、10年といった長期的な視野に立って取り組むとしており、サンのエデュケーション・リサーチ営業本部 執行役員、中西直之本部長は、「テーマにもよるが、毎年数億円程度の投資をすることになるだろう」と語った。

 なお、この協定書締結に関して、東大の理事で、産学連携本部長を務める石川正俊副学長は「グローバルな戦略の中で、当大学の技術が全世界に向かって広く使われることを期待している。優れた成果が生まれるように、今後の協定の中で強く連携を保っていきたい」とコメントしたほか、サンのダン・ミラー代表取締役社長は「当社のコンピュータ業界での役割は、基本的な概念、新しいアイディアを創出すること、またコミュニティの中にそれを還元すること。東大とは20世紀においてさまざまな関係を培ってきたが、21世紀に向けて、Proprius21という枠組みの中で新たな出発をきれるのは喜ばしいことだ」と述べた。


協定書に署名するサンのダン・ミラー社長 互いに署名した協定書を交換し、握手を交わすサンのミラー社長(左)と、東大の石川正俊副学長(右) 共同研究のテーマ候補として説明された、「分散型データ共有システム向けストレージ」


URL
  国立大学法人東京大学
  http://www.u-tokyo.ac.jp/
  サン・マイクロシステムズ株式会社
  http://jp.sun.com/
  プレスリリース
  http://jp.sun.com/Press/release/2005/0620.html


( 石井 一志 )
2005/06/20 18:47

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