検索エンジンをはじめ、ブログやRSSに関するネットサービスを提供するベンダーの担当者らによるフォーラム「CNET Innovation Conference 2005 Summer(主催:シーネットネットワークスジャパン株式会社)」が6月20日に都内で開催された。技術の進展や利用者の増加により、ビジネスへの利用が本格化しつつあるこれらのサービスの現状と今後の展開などが語られた。
■ 利用者と機能の拡大を続ける検索エンジン
インターネットの検索サービスは、ネットユーザーの広がりとともにますます拡大しており、Yahoo! Search Marketing(前Overture Services)マーケティングディレクターのPatrizio Spagnoletto氏によると、2005年1月には、米国人口のおよそ半分にあたる1億3300万人のユニークユーザーが、米国内の各サイトで計49億回の検索を行ったという。また、ネット経験が長くなるにつれて検索を行う回数も増える傾向があるとのことだ。
さらに米Ask Jeeves シニアバイスプレジデントのジム・ランゾーン氏によると、「日本人は1カ月で平均33時間ネットを利用しており、これは世界で2番目に長い」と、日本でも検索エンジンを利用する機会が増加しており「もはや生活の一部」になりつつあるという。
こんな中、検索サービスを提供するベンダーも、技術的なアプローチによる検索機能や、これを利用した収益力の向上に向けた対応を急いでいる。検索機能の向上においては、テキストだけでなく画像や映像、モバイルなどへの対応といった縦の強化と、検索結果の精度を高める横の変化だ。
2月より国内では後発でサービスを開始したAsk.jpは、Googleのような機械的に決定した人気順だけでなく、より利用者の満足度の高いサイトを上位に表示する仕組みをとるという。ランゾーン氏によると、例えばある製品を検索した場合、Googleでは、ほとんどの場合にメーカーの製品ページが表示されるが、Ask.jpでは専門家らによる分析によって、さらに有益な情報を提供するコミュニティサイトなどがある場合、そちらの方が上位に表示される場合もあるという。こうした試みはYahoo!でも行われており、検索結果の質の向上を図っている。ちなみにヤフーは同日、検索機能に集中・強化した「Yahoo! SEARCH」ベータ版を公開している。
一方、広告によるビジネス対応の強化も進んでいる。Yahoo!で一般的な用語で検索すると登録サイトの前に「スポンサーサイト」が表示されるが、これは広告主が関連するキーワードに対し1クリックあたりに支払う金額をオークション形式で入札し、高額なほど上位に表示される仕組みだ。また、ユーザーが広告をクリックすることで初めて課金されるシステムをとる。
「広告主が指定するキーワードで検索したユーザーに対してのみ表示され、さらにクリックされて初めて課金されるため、従来の広告に比べ圧倒的に安価で効率的」とSpagnoletto氏は説明する。主に中小企業は、少ないコストで購買に直接結びつけることを目的とするためキーワードを絞り、大手企業はプロモーションを目的に大量のキーワードを購入する傾向があるという。国内ではこうした広告の受付をオーバーチュアが行っており、Yahoo!のほかMSNやNIKKEI NETなど「リーチ率89%」のメディアへの出稿や、キーワードのコンサルティングを受け付けている。
■ RSSを利用した広告配信が続々サービス開始
こうした検索エンジンとともに、新たに広告によるビジネス利用が進みつつあるのがRSSだ。ブログやニュースサイトで配信されるRSSフィードに、その内容に合った広告を載せて配信するシステムで、すでに各社で実験や実稼働を開始しているが、同日にはネットエイジグループが出資するRSS広告社がリクルート、サイバー・コミュニケーションズと提携し、RSS広告サービスの開始を発表した。
RSSの特徴は、ユーザーが興味あるサイトやブログを巡回せずに更新情報を入手でき、より効率的な情報収集が可能になることだ。はてな取締役最高技術責任者の伊藤直也氏は「1日に100個、1000個のWebサイトチェックが可能となる。情報の流通速度が上がる」と話す。
RSS広告は、RSSフィードの内容を基にユーザーの興味に合わせることができるため、対象をターゲティングでき、効率的な配信が可能だ。現在のところ、RSSはITリテラシーが比較的高い一部ユーザーにしか利用されてないが、次世代Windows(コードネーム:Longhorn)のInternet Explorerに標準搭載される予定で、これを機に一気に普及することも視野に入れられており、RSS広告社は3年後に20億円の売上を見込んでいる。
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はてな取締役最高技術責任者 伊藤直也氏(左)と、RSS広告社代表取締役社長 田中弦氏(右)
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6月20日より開始されるRSS広告
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検索エンジンとRSSに共通するのが、既存の広告ビジネスと比較してユーザーのターゲティングをしやすく、効率的な配信が可能となることだ。このように従来、技術先行で議論されてきたネットサービスが、ビジネス目的に本格的に利用しようとする動きが各所で現れてきている。
伊藤氏は「技術の人間からしてRSSのメタデータ上に広告が載るのはあまりうれしくなく複雑な気分だが、これまでも広告が増えてきたことでWebビジネスも盛んになってきた」とこれまでの経緯を振り返り、今後こうした新しい広告ビジネスが活性化していくとの見解を示している。
■ URL
株式会社RSS広告社
http://www.rssad.jp/
関連記事:Yahoo! JAPANの検索を集約した検索特化の新サービス「Yahoo! SEARCH」(BroadBand Watch)
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/10008.html
( 朝夷 剛士 )
2005/06/21 10:26
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