富士通株式会社は6月22日、次世代スーパーコンピュータ開発における要素技術として、国立大学法人九州大学と共同で光スイッチをはじめとした計算ノードのインターコネクト技術における研究開発計画を発表した。同社がペタ(ギガの100万倍)スケールのスーパーコンピュータを開発する目標に向けた取り組みの一環だ。
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スーパーコンピュータの性能トレンド
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この計画は、文部科学省が推進する次世代スーパーコンピューティングに向けた研究開発プロジェクトの下、今後3年間取り組まれ、2005年度には4億円の研究費が投じられる。研究開発されるのは、複数の計算ノードを並列に接続するための高機能スイッチネットワークや光パケットスイッチネットワークを含めたインターコネクト技術。バンド幅をGB/sから数10GB/sに拡大するとともにケーブル数を削減し、現在1000ノード前後が限界とされるクラスタを10000程度まで接続可能とする狙い。
富士通研究所ペタスケールコンピューティング推進室長の木村康則氏によると、同社が目指すのはピーク性能3PFlops(ペタフロップス=1秒間に3000兆回の浮動小数点演算)、実効性能1PFlopsのスーパーコンピュータを2010年度末までに開発すること。3PFlopsとは「PCでいうと、3GHzのマシン50万台分、(国内で最速のスーパーコンピュータである)地球シミュレータの約75倍の性能」だという。ちなみに地球シミュレータの性能は41TFlops(テラフロップス)といわれ、かつて世界最速を記録していたが、現在では米IBMのBlueGeneがそれを上回ったとされている。
ただし、現在の技術の延長で3PFlopsを実現しようとすると、ノード間のインターコネクトに必要な電気ケーブルは地球半周に相当する2万キロ、消費電力は1万5000kWと現実的ではない値が必要となる見通しで、「技術的なブレイクスルーが必要」(木村氏)なことから、今回のような研究開発が行われる。
その中でもインターコネクトは、従来のようなCPU速度の向上が望めず「2010年までに2~3倍程度」(木村氏)の伸びと予想されることから、システム全体の性能を向上させるには最重要課題となるとのことだ。
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研究開発されるインターコネクト技術
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次世代スーパーコンピュータの実現イメージ
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■ 「スパコンは高性能サーバーの延長線上にある」
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取締役専務 伊東千秋氏
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俗にスーパーコンピュータは、サーバーやPCなど一般で利用されているコンピュータと比較して性能が高い反面、汎用性が低く、ビジネスにつなげることが難しいとされている。しかし同社取締役専務の伊東千秋氏は「スーパーコンピュータと汎用のコンピュータが別物であっては、当社としても永続的な提供はできない」と述べ、高性能サーバーの延長線上にスーパーコンピュータがあり、その技術を汎用のコンピュータに応用できるとの考えを示している。
伊東氏によると、現在スーパーコンピュータは特に精密機器や自動車メーカーでの導入がさかんだという。これらは「時間を稼ぐため、試作・評価をすべてスーパーコンピュータの中でやってしまう一発勝負のもの作りが行われている」(伊東氏)とのことで、製品開発における時間短縮を目的にスーパーコンピュータの利用が広まっているという。
同社は今年後半にはItanium 2を搭載する基幹IAサーバー「PRIMEQUEST」をベースにLinuxで稼働するスーパーコンピュータの発表を予定しており、また今後もクラスタやグリッドなど必要とされる技術の研究開発を継続していくとしている。
■ URL
富士通株式会社
http://jp.fujitsu.com/
プレスリリース
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2005/06/22.html
( 朝夷 剛士 )
2005/06/22 17:39
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