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執行役員日本代表 大三川彰彦氏(左)と代表取締役社長兼CEO エバ・チェン氏(右)
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トレンドマイクロ株式会社は6月23日、同社のウイルス対策ソフトが原因でユーザーのPCなどに大規模な障害が発生した事件について総括し、同社が取り組んだ対策を報告した。代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏は「困難は乗り切った」と、事実上、今回の問題に関して終結したとの認識を示した。
事件後、設置された復旧窓口には約1カ月間で法人ユーザーからは11万契約中700件(0.6%)、個人ユーザーからは350万契約中2万8300件(0.8%)もの問い合わせがあり、同社は提示した条件に基づいて対処したという。なお、事件に関する同社の損害は集計中とのことで、次回の決算にて発表される見通し。
事件は、ウイルスパターンファイルの検証段階に落ち度があったことが原因であったため、同社はまず、これを行うラボにおいて(1)検証設備の増強とプロセスの自動化、(2)監査・教育体制の拡充、(3)検証プロセスの見直しと認証方式の強化、の3つの施策を実施したという。
これにより検証設備は、従来の約4倍にあたるハードウェア1000台規模に拡大するとともに検査時間を約20分に短縮した。そして、社内監査を強化するとともに株式会社プロシードによる外部からの監査も実施する。さらにラボ従業員の教育やコミュニケーション体制の強化も図ったとのことだ。
これに加え、作成したパターンファイルの品質を高めるため、日本IBM大和事業所の製品評価センター内に「トレンドマイクロ テストセンター」を6月20日に設置、日本IBMのスタッフによるパターンファイルの再検証を行い、品質強化への取り組みを始めている。
Total Quality Management担当ディレクターの清水智氏は「人間がやっていることなのでバグが完全になくなるとはいえない。しかし事件のように顧客に大きな影響を与えることはないだろう」と、今後の安全性を強調した。
なお、事件後中断していたパターンファイルのデイリーアップデートを7月11日より再開する予定としている。
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検証機器を大幅増強
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日本IBMを含めた複数の拠点でパターンファイルの検査を実施
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会見では、体制の改善とともに、製品やサポート体制の強化といった今後の戦略についても触れられた。
製品においては、特に被害が拡大しているスパイウェアやスパムメール対策を強化する方針で、まずこれらの技術を蓄積し、今年後半にリリースが予定されているウイルスバスターをはじめとした製品群に実装していくという。これに向けては、企業買収も視野に入れているとのことで、事件への対応に追われたことによる遅れを取り戻そうとする姿勢がうかがえる。
企業向けサポートにおいては、6月15日に発表された認定パートナーを通じた「認定レスキューサービス」を7月より順次開始し、主に地方の中小企業ユーザーへの対応強化を図る。個人ユーザーに対しては、従来平日のみ受け付けていた電話窓口を365日オープンとするほか、PCベンダーとの連携を強化する。このほか、法人・個人の初心者ユーザー向けにセキュリティ対策への各種啓もう活動を実施するとのこと。
チェン氏は会見中「雨降って地固まる」と何度も強調し、事件を乗り越えたことで、同社の体制や取り組みが強化されたことをアピールした。
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今後のロードマップ
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認定レスキューサービス
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■ URL
トレンドマイクロ株式会社
http://www.trendmicro.co.jp/
関連記事:トレンドマイクロ、日本IBM大和事業所内に製品テストセンターを開設(INTERNET Watch)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/06/20/8073.html
■ 関連記事
・ トレンドマイクロのパターンファイル障害-チェンCEOが謝罪(2005/04/27)
( 朝夷 剛士 )
2005/06/23 20:17
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