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ビル・ゲイツが語る検索市場戦略、エンタープライズへの進出は?


米Microsoft 会長兼チーフソフトウェアアーキテクト ビル・ゲイツ氏
 米Microsoft 会長兼チーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ氏が6月27日に来日した。3日間の滞在中に各種イベントや教育機関などで講演を行う予定だ。初日にはMSN事業部が主催するイベントに登場し、同社が取り組む検索技術と、その戦略についてをデモンストレーションを交えながら披露した。

 検索技術において同社は、GoogleやYahoo!に一歩遅れた感を否めないが、次世代のネットワーク環境にかかわる上で必須の技術であるとの認識のもと、大きな投資を行い2社を猛追している。国内市場においても例外ではなく、6月23日には、自社開発の検索エンジン「MSN サーチ」、およびWindowsにMSNサーチの検索バーを追加する「MSNサーチツールバー with Windows デスクトップサーチ」各正式版の提供を開始した。

 さらに同社はこの日、日本市場に特化した検索技術やコミュニケーションサービスなどを研究・開発する「MSN R&Dセンター」の設置を発表した。米国主導型の同社が海外に研究開発施設を設置するのは異例のこと。ゲイツ氏は、日本は米国に次ぐMSNユーザー数をかかえ、さらにブロードバンドやモバイル環境が充実していることを挙げ「大きなチャンスがある」と日本市場への期待を示した。

 なお、7月には現マイクロソフト日本法人の代表執行役社長マイケル・ローディング氏が米国MSN事業のトップに就任する予定であり、日本市場に対して継続的に力を入れていく可能性は高い。


MSN R&Dセンター インフォメーション・サービス開発統括部 部長に就任する浅川秀治氏
 検索サービスなどを担当するインフォメーション・サービス開発統括部の部長に就任する浅川秀治氏によると、管轄がMSNであることからもわかるとおり「まずはコンシューマ市場に向けた開発を行う」としている。しかしWindows戦略がコンシューマからエンタープライズに軸足を移してきたことや、企業内ドキュメント検索などのエンタープライズ向け検索市場が拡大している中、同社の検索技術がコンシューマ市場だけに利用されるとは考えにくい。浅川氏に聞いたところ「まだ何とも申し上げられる時期ではない」としながらも「まずMSNで技術を蓄積していく。(エンタープライズ製品が)出るとすればWindows Server製品群として、MSNではなくマイクロソフトから出るだろう」との回答を得ることができた。

 浅川氏が語るように、MSNサーチはコンシューマ向け製品だが、当然ビジネスでも大いに役立つ。例えばデスクトップサーチ機能は、検索した画像や音声のほか、ExcelやPowerPointなどのOffice文章をプレビューすることができるなど、同じ会社の製品であることの強みを生かし、先行する他社より一歩進んだ機能を提供している。

 また、同社が大きくアピールするのが、利用者が検索サイトで調べることに対して、その答えを得ることができるサイトへのリンクではなく、直接答えを提示する「クイックアンサー」と呼ばれる機能だ。例えば同社の百科辞書ソフト「エンカルタ(MSNではダイジェスト版を提供)」と連携し、関連ワードの記事を検索結果に表示される。同様に関連する最新のニュースなどを表示することも可能だ。

 この機能はPC上での検索と共に、モバイル環境での利便性を上げる狙いもある。PCに比べ制限の多い携帯電話上でユーザーの問いに、より迅速に答えることができるからだ。同社はモバイルに対して非常に高い関心を示しており、キャリア主導の日本市場でどのような展開をするのか注目される。


タスクバーからデスクトップやWeb検索が可能となる「MSNサーチツールバー with Windows デスクトップサーチ」 MSNデスクトップサーチとGoogleデスクトップ検索の比較

PowerPointファイルのプレビューや、そのままスライドショーに移ることも可能 質問に直接答える「クイックアンサー」

好みの情報モジュールを組み合わせてポータルを形成する「Start.com」
 さらに米国で実験中のパーソナルポータルサイト「Start.com」も披露された。これは、ユーザーの好きなスポーツチームや住んでいる地域の天気予報、近所の地域情報など、利用者が求める情報をモジュール化しドラッグアンドドロップなどの操作で自由に組み込んで、ポータルサイトを作ることができるというもの。将来的にはこの情報を基に利用者の好みにあった広告を表示させるビジネスモデルも検討しているという。

 ゲイツ氏は「検索サービスは数年前に比べてはるかに良くなった。しかし今後数年の間に劇的な変化が起きる」と、MSNサーチが検索市場にイノベーションを起こすことを宣言した。浅川氏も「今後1年以内に大きなサービスを開始する予定があるので期待してほしい」と語っている。


米国のMSN Searchで先行して搭載される機能も披露された。例えば「Suzuki Ichiro」と検索すると、リアルタイムの成績を表示される 「ビル・ゲイツと結婚したのは誰?」などといった問いに、検索結果から推測される回答を上部に表示する自然文検索 観光スポット周辺の地図のほか、周辺の駐車場やレストランの位置などを示すローカル地域情報。さらに近辺にいる知り合いの居場所をモバイル端末から表示できるようになるという


URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  MSNサーチ
  http://search.msn.co.jp/
  プレスリリース(R&Dセンター)
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2329
  関連記事:マイクロソフト自社開発の検索エンジン「MSNサーチ」が日本でも正式版に(INTERNET Watch)
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/06/23/8130.html


( 朝夷 剛士 )
2005/06/28 12:22

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