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日本AMD、国内でもインテルに損害賠償請求を提起


 日本AMD株式会社は6月30日、東京高等裁判所(東京高裁)および東京地方裁判所(東京地裁)に対して、インテル株式会社に対する損害賠償請求を2件提起した。同社の本社でもある米AMDも6月27日(米国時間)に米Intelに対して同様の訴訟を提起しており、事実上、日米同時に法廷での争いが始まることになる。

 東京高裁に提起された訴訟は、今年3月8日に公正取引委員会(公取委)が行った排除勧告で認定された、インテルの独占禁止法第25条への違反行為に対する損害賠償請求訴訟で、請求額は5000万ドル(日本円で約55億円)。

 この勧告は、インテルが国内PCメーカー5社(NEC、富士通、東芝、ソニー、日立)に対してAMD製CPUを購入しないことなどを条件とする多額の資金提供を行い、日本AMDの取引を妨害していたことを認定するもの。日本AMDによると、これらの行為により、東芝、ソニー、日立のPCにはAMDのCPUは一切搭載されなくなり、NECにおいても搭載率が10%以下に減少、富士通は生産計画の変更や中止を余儀なくさせたという。

 インテルはこの排除勧告を応諾したが、この件では法律上制裁金が課せられないため、AMDがこれらの行為による損害額相当の金額を請求したとのこと。なお、米国の独占禁止法(反トラスト法)では、損害額の3倍の賠償を行わなければならないと規定されている。

 一方、東京地裁に提起された訴訟は、排除勧告において認定された違反行為を含め、インテルの取引・営業妨害行為から生じた損害についての損害賠償を請求するもので、請求額は5500万ドル(日本円で約60億円)。この金額は東京高裁での請求額が含まれている。

 この訴状には、国内PCメーカーに対して資金提供などを条件にカタログやWebサイトからAMD製プロセッサを搭載したモデルを削除するよう指示したこと、AMDの新製品発表会に参加を予定していた顧客に圧力をかけ参加を辞退させたこと、などの妨害行為があったと記載しているという。

 さらに、あるイベントにおいてAMD製CPUを搭載したPCをインテルが全台買い取り、代わりにインテル製CPUを搭載したPCを無償提供したこと、PC雑誌編集者に対して圧力をかけ、雑誌に掲載を予定されていたAMD製CPUに関する記載を削除させたり、性能評価記事の内容などを修正させたともしている。これらの行為の具体的な内容は明らかにされてないが顧問弁護士は「それなりの具体的な事実をつかんでいる」としている。


国内PCメーカーは「インテルのいいなりとならざるを得ない状況」

日本AMD取締役 吉沢俊介氏
 日本AMDでは、インテルのこれらの行為は、世界市場シェア90%を超えるというマーケットシェアと、膨大な資金力をバックとした市場支配的地位によるもので、営業不振が続く国内PCメーカーは、「インテルからの資金欲しさに、いいなりとならざるを得ない状況にあった」からだとしている。

 日本AMD取締役の吉沢俊介氏は、外部調査機関による調査で、各PCベンダーが営業利益率が10%以下(最も高いDellが9%)の状況の中、Intelだけが41%を確保し、さらに伸びている状況を示し「おかしいといわれても仕方ない」と語り、「これらのマージンは、エンドユーザーがPCベンダーを通じて(インテルに)支払われたもの」と述べ、AMDだけではなく消費者も被害を被っているとした。

 また吉沢氏は、現在の64ビットコンピューティングの広まりがAMD64があったからこそであり、さらにSOI(Silicon In Insulator)技術による65nm/45nm微細加工のロードマップをインテルに先駆けて公開していることなどを挙げ「インテルより優れたテクノロジーを持っていると自負している」と強調した。

 その上で、今回の提訴の目的を、インテルの独占的地位を乱用した違法行為に歯止めをかけることで、自由競争原理の回復と技術革新を促進し、ユーザーの自由選択を実現するためのものであるとした。



URL
  日本AMD株式会社
  http://www.amd.co.jp/
  プレスリリース
  http://www.amd.com/jp-ja/Corporate/VirtualPressRoom/0,,51_104_543~99764,00.html

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( 朝夷 剛士 )
2005/06/30 18:54

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