企業インフラのIP化にともない、IP電話の導入に向けた動きが話題となっているが、同じIPを利用した遠隔コラボレーションツールとしてビデオ(テレビ)会議システムの需要も高まりつつある。SIPをはじめとした技術の標準化とブロードバンド化が進み、各ベンダーが参入しやすくなり、それにともなって使い勝手の向上と低価格化も進行しているからだ。
ポリコムジャパン株式会社は7月14日に、ビデオ会議システムのエントリーモデル「VSX 5000」を発表、代表取締役社長の奥田智巳氏は「従来の半額に近い価格にした」と述べ、中小企業や大企業のサテライトオフィスへの導入に自信を示した。同社の米国本社Polycomは、1998年以降ビデオ会議システム市場で世界シェア1位を続けているという。
PolycomのChief Marketing OfficerであるSteven C. Huey氏によると、ビデオ会議システム市場は、世界的に見て約5~20%の伸びを示しているとのことだが、「我々から見たら50%を下回る伸び率は“控えめ”とみている。もっと成長してほしいし、期待できる市場だ」と話す。
Huey氏の強気な姿勢は、VoIPなどのテクノロジーが企業の生産性向上とコスト削減につながるコアテクノロジーとして認知され浸透しはじめていると確信しているからだ。「数年前、ビデオ会議システムの購入決定者は施設や会議室の担当者だったが、現在ではIT部門長に移った」(Huey氏)。そしてこうしたコラボレーションツールは、デスクトップやモバイルにまで広がりを見せている。
同社Video Communications Product Marketing Senior DirectorのJohn Antanaitis氏は、こうした動きへの背景として、技術の標準化が不可欠だったと指摘する。同氏が指すのはSIPで、同社は1年前から本格的な対応を開始し、Microsoftなどとの協業も進めてきた。さらに「ビデオ・オーディオといった技術においても、Polycomは常にリーダーシップをとってきている」と付け加える。
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Chief Marketing Officer、Steven C. Huey氏
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Video Communications Product Marketing Senior Director、John Antanaitis氏
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■ 研究開発費の80%をソフトウェアに投資
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ポリコムのビデオ会議システム「VSXシリーズ」のラインアップ
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エントリーモデルのVSX 5000の登場により、奥田社長は「(エントリーからハイエンドまで)ラインアップがそろった」と述べた。それでは今後、何を拡充していくのだろうか。Antanaitis氏は、今後重要となるのはむしろソフトウェアだという。「ビデオ会議システムが日々の業務の中でどのような位置づけにあるのか。今後、我々は徹底的に理解していかなくてはならない」(Antanaitis氏)。つまり、単に会議室同士を結ぶだけではなく、さまざまな利用シーンに合ったツールにしていかなくてはならないということだ。
以前までユーザーは大企業が中心であったが、最近では中小企業や教育、医療などの場にも導入されるなど「ホームファクタの多様化」が進んでいるという。そこで、それぞれに合ったユーザーインターフェイスとアプリケーションを用意していく必要があるという。例えば、今後ハイエンドモデルにおいてHD(High Definition)対応を進めていくとのことだが、これを遠隔医療に利用できるようなソフトウェアの開発が必要となるという。そういった展開に向け、同社の研究開発費の80%をソフトウェアに投資しているとのことだ。
一方、同じコラボレーションツールでもSkypeといった“超低価格”なツールの登場はどうとらえているのだろうか。Huey氏は「IP上のビデオ・オーディオサービスが一般にも広がり、市場が拡大するきっかけとして、当社としてもわくわくしている。すでにSkypeとは緊密な関係を結んでいる」と、歓迎する構えを見せている。ユーザーは会議室やデスクトップ、モバイルなど、それぞれの環境に最適なツールを選択していくものであり、それぞれのインフラを提供するベンダーとは協調していくとHuey氏は語った。
■ URL
ポリコムジャパン株式会社
http://www.polycom.co.jp/
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( 朝夷 剛士 )
2005/07/19 08:44
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