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仏ダッソー・システムCEO、「PLMは中小企業にも十分メリットになる」

2005 JCF 基調講演

 7月19日、20日の両日、「2005 JCF」(主催:日本アイ・ビー・エム株式会社、ダッソー・システムズ株式会社)が名古屋で開催された。基調講演には、仏ダッソー・システムズ 社長兼最高経営責任者であるベルナール・シャーレス氏、同社上席副社長 エティエン・ドロワ氏、米IBM PLMソリューションズ ゼネラル・マネージャ ウォルター・ドナルドソン氏、トヨタ自動車株式会社 コーポレートIT部 ITマネジメント部担当 常務役員 天野吉和氏が登場した。


仏ダッソー・システムズ 社長兼最高経営責任者のベルナール・シャーレス氏
 シャーレス氏は、PLMを導入する効果をイノベーションからの価値の創造、明白なROIの実証、3Dでグローバルなコラボレーションの実現、企業ナレッジの活用と保護、にあるという。そのためには、「いかにモニタリングし、定義し、そしてコントロールするかが重要」であるとする。また、今回の会場となっている名古屋で、現在愛・地球博が開催されていることを引き合いに出し、「地球の資源には限りがあります。これらを効率よく利用し、あるいはリサイクルするためにもPLMは重要です。すべての製品のライフサイクルを管理できるようになることが、ダッソー・システムの夢です」と語った。

 さらにシャーレス氏は、物理的なプロトタイプを製作せずに飛行機を完成させたメーカーの成功例を挙げ、「3Dの技術によって現実世界を定義し、シミュレートすることができる」と語る。複雑化する製造過程の中で、設計の段階で多くのバーチャルな体験を可能にすることは、大幅なコスト削減につながるという。また、PLMというとグローバルに展開する大きな企業だけのものと考えられがちだが、物理的なプロトタイプの製作といったコストの削減は、中小企業にも十分なメリットとなるとシャーレス氏は語る。

 ダッソー・システムズのPLMソリューションは、現在アジア地域で大きくシェアを拡大しているという。そのために、「今後もPLMをより推進するため、多くの企業との協業、あるいは合併を行う」とシャーレス氏は語る。中国でもシェアを大きく拡大していることにも触れ、「中国でのビジネス展開には、知的所有権の問題が生じることもあるが、パートナーをきちんと選べば、自分たちの知的財産は守ることができる」と述べた。


米IBM PLMソリューションズ ゼネラル・マネージャのウォルター・ドナルドソン氏
 次に壇上に登場した米IBMのドナルドソン氏は、7月1日付けで就任したばかりのゼネラル・マネージャである。ドナルドソン氏は、「企業は成長し続けなければなりません。そのために必要なのはイノベーションですが、それは偶発的に起きるものではなく計画的になされるものです」と語る。アジア地域のCEOの51%は、イノベーションに対して非常に関心があり、ビジネス・プロセスの中で、どのようにイノベーションを実現するかを考えているという。これは、欧米よりも高い割合であるとした。

 イノベーションに必要なものには、「情報へのアクセス」、「適切なツール」、「最適なプロセス」であるとドナルドソン氏は語る。しかし、セキュリティやコストのために、イノベーションに歯止めをかけている企業が多くあるという。しかし、IBM自身がPLMによって、大幅なコスト削減に成功していることからも実証できるように、長い目で見た場合に、大幅なコストの削減につながるとドナルドソン氏は述べた。


 ダッソー・システムズのドロワ氏は「多くの製品はデザインによって選ばれる」と語り、「今後はメカニカル・エンジニアだけではなく、デザイナーも使えるような製品にしなければならない」と述べた。これによってPLMは、エンジニアリングと製造のギャップを埋め、戦略的ビジネス変革のツールになっていくという。


トヨタ自動車株式会社 コーポレートIT部 ITマネジメント部担当 常務役員の天野吉和氏
 最後に壇上に上がったトヨタ自動車の天野氏は、「自動車の世界市場において、日本のシェアは10%程度にしか過ぎず、すでに日本市場だけでは食べていけない」と述べた。さらに、「同じ車を大量に作っていく時代は終わった」と語り、顧客のニーズにあった車種を数多く、しかも短納期で製造しなければならない現実を語った。また、グローバルに展開するトヨタ自動車においては、ビジネス効率をあげるためには分業化が重要であると語り、コラボレーションできる環境の重要性を強調した。

 さらに、「開発を効率化するためには、無駄な作りこみや作り直しを減らす必要がある」と述べ、新しいデザインの車を素早くリリースするためにも、PLMは非常に重要な意味を持っていると天野氏は語った。


 なお、イベントの名称であるJCFは、旧名称であるJAPAN CATIA FORUMの略で、ダッソー・システムズのCATIAをはじめとしたPLM(Product Lifecycle Management)製品のユーザーズフォーラムである。PLMとは、製品の企画、設計、製造、製品サポート、製品の廃棄といった、製品のライフサイクル全体を一貫して管理することによって、開発効率の向上、コスト削減、市場のニーズにあった製品をタイムリーに投入することを目的とするコンセプトである。



URL
  2005 JCF
  http://www.jcforum.com/
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  ダッソー・システムズ株式会社
  http://www.3ds.com/jp/
  トヨタ自動車株式会社
  http://www.toyota.co.jp/


( 北原 静香 )
2005/07/20 20:34

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