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先進自治体が語る、「電子行政システムの実現状況」

先進自治体事例発表会2005

 電子申請推進コンソーシアム主催による、「先進自治体事例発表会2005」が7月29日に行われた。自治体での電子行政システムの事例を紹介するもので、浦安市、豊中市、広島県の事例が発表された。


利用者の選択肢を増やすため紙の申請書も電子申請書も提供-浦安市

浦安市 経営企画部 情報政策課 電子自治体推進室 副主査の醍醐恵二氏
 浦安市からは、紙と電子の連携型サービスの事例が紹介された。浦安市では電子化するにあたり、市役所の各窓口に出される申請書や届出書の種類を計測したところ、「一般的に2500はあるといわれている手続きが、浦安市では1041であることがわかった」(浦安市 経営企画部 情報政策課 電子自治体推進室 副主査の醍醐恵二氏)と、対象となる手続きが1000を超えると紹介。しかし、その内訳を見てみると、「受付件数が年間1000件を超える手続きは98と10%程度で、すべての受付件数の91%にあたる71万7000件であった」と、大量にある手続きでも電子化によるメリットが得られるのは少数であるとした。また、その中でも法律上電子化不可のものや添付書類が必要なもの、事前協議が必要なものなど電子化が難しいものを除くと33の手続きとなったという。「33の手続きであれば、電子化することが現実的におもえてきた」と、現状分析の重要性を強調した。

 具体的な電子化については、「まずできるところから行う」とし、紙の申請書をPDF化してダウンロードで提供するサービスから開始したという。「PDFは入力可能な形式にしている。これであれば、費用も手間も大きくかからない」と紹介した。次の段階として進めているのが、アドビシステムズのBarcoded Formsを採用した二次元バーコード付きの申請書。駐輪場の利用申請で採用し、9月の開始を目指しているという。その次の段階として来年度の稼動を目指しているのが電子申請システムになる。

 醍醐氏は、「紙、(PDFフォームの)ダウンロードサービス、二次元バーコード付きダウンロードサービス、そして電子申請と市民にとっては複数の選択肢が用意されることになるが、行政側ではそれぞれに対応しなければならなくなり、忙しくなる」と指摘。「電子自治体を実現するというのは、市役所の横に新しい庁舎を作るようなもの。しかし人員が増えるわけではないので、ここでどうITをうまく使って効率的に業務をおこなうかが大切」と、運用面の工夫が重要であるとした。


24時間365日申し込み可能な電子市役所-豊中市

豊中市 政策推進部 情報政策担当理事の松岡勝義氏
 豊中市からは、電子市役所の構築を目指した取り組み状況が紹介された。豊中市は大阪府の中でもいち早く申込書の電子化を開始。そして今年の4月には、24時間365日、いつでもどこでも電子申し込みが可能なサービスを開始している。「現在提供しているのは、行政文書開示請求、住民票の写し等交付請求、住民票記載事項証明、印鑑登録証明書交付申し込み」(豊中市 政策推進部 情報政策担当理事の松岡勝義氏)などで、今年度中に10の手続きの電子申し込みが行えるように進めている。

 特長として、共同開発・共同運用を挙げている。「もともと1996年にスポーツ施設情報システム(OPAS)を稼動させたことが共同開発のきっかけ。実際、各自治体が抱える課題は共通するものが多く、共同開発のメリットは得られやすい」とした。現在データセンターを大阪府が用意するなど、共同開発・共同運用のメリットを享受していると説明する。

 運用面では、申し込みごとに整理番号とパスワードを発行することで、不要な個人情報を収集しないようにしている。ただし複数の申し込みをしたときの利便性を考慮し“ハンドルネーム”を利用者が設定できる機能を用意。これを利用することで複数の申し込みの検索などができるという。

 松岡氏は前例踏襲になりがちな行政の対応を否定し、「職員がツールを使いこなすことが大切」と述べ、電子化を進めるにあたり職員自身が前向きに仕事を進めることが大切とした。


全市町参加の電子申請システムが目標-広島県

広島県 経営企画部 情報総室 情報政策室 電子県庁推進グループ 企画員の山田大平氏
 広島県からは、市町共同の電子申請システムが紹介された。広島県の電子申請システムは、広島市と福山市が参加して運用を開始している。広島県でも、事前に手続き数を調べたところ「3000の手続きが存在した」(広島県 経営企画部 情報総室 情報政策室 電子県庁推進グループ 企画員の山田大平氏)と紹介。そのうち、年間10件以上の届出のある1000~1100の手続きを電子申請にするとしている。

 電子申請システムでは、PDFを申請フォームに採用。紙ベースでの申請と併用することが容易である点や、WordやExcelなどで作成した帳票フォームから入力フォームを作成できる点、また多くの住民がPDFファイルの閲覧環境が整っている点などを採用理由としてあげている。

 広島県の場合も、システム構築・運営コストの削減を実現するために共同アウトソーシング方式を採用。現在は広島県・広島市・福山市の3団体のみが参加しているが、「来年度中には全市町での運用開始を目標としている」とした。ただし、市町によって行政規模が異なることもあり、「初期経費を助成するなど、参加するメリットを訴えていく」と、全市町参加に向けた取り組みを行っていると説明した。



URL
  電子申請推進コンソーシアム
  http://www.e-ap.gr.jp/

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( 福浦 一広 )
2005/07/29 17:30

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