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日本IBM、大和事業所で「Innovation Days 2005」を開催

大歳社長が、イノベーションへの取り組みに言及

Innovation Days 2005のために用意された法被を着て挨拶した大歳卓麻社長
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は7月29日、同社の大和事業所において、同社の技術開発の成果を発表する社内向けイベント「Innovation Days 2005」を開催。そのなかで、同社・大歳卓麻社長および開発製造部門を担当する内永ゆか子取締役専務執行役員が、報道関係者を対象に、同社のイノベーションに対する取り組み、および大和事業所をはじめとする同社研究開発拠点における研究、開発、製造に関する取り組みについて説明した。

 大和事業所では、毎年、地域の人たちに事業所の様子を公開することを目的としたイベントを開催してきたが、今年は大和事業所開設20周年を迎えたことから、基調講演や座談会、部門対抗プログラミングコンテンストなどを盛り込み、規模を大きくして開催した。

 報道関係者向けの会見で大歳社長は、「イノベーションは、インベンション(発明あるいは技術動向)とインサイト(洞察あるいは市場動向)が交差するところに生まれる。イノベーションは、企業を成長させる唯一の原動力だ」と前置きし、「日本の企業は特許取得件数では上位であり、スーパーコンピュータでも米国と日本のメーカーで上位を占めるなど技術的な強みはある。しかし、国際競争力は20位以下であり、米国に比べても、特許が必ずしも収益には結びついていない問題がある」として、日本の企業の課題は、インベンションをイノベーションに変えられていないところにあると指摘した。


イノベーションの定義

 大歳社長は、同社のイノベーションに対する取り組みに触れ、いかにして同社の戦略が立案されるかについても説明した。

 同社では、インベンションとして、GTO(Global Technology Outlook)と呼ばれる技術動向を捉えた取り組みと、インサイトとしてのGMT(Global Market Trend)による市場動向の掌握に加え、これに、IBMの全世界の技術者、コンサルタント、および外部の有識者などの意見を取りまとめて作成したイノベーションの要素をまとめたGIO(Global Innovation Outlook)を融合、これによって、全社的な戦略を立案する体制を確立している。

 「技術と市場動向に加えて、どんなイノベーションが必要であるかという要素を計画立案にインプットすることで、全体的な戦略の方向性を決めることができる」という。

 一方、EBO(Emerging Business Opportunities)と呼ばれる取り組みによって、イノベーションによって変化を起こすことにも力を注いでいる。

 「企業が継続的な成長を遂げるには、成功に満足するのではなく、常にイノベーションを起こさなくてはならない。EBOは、そのための取り組みであり、これまでにLinux、Grid、E&TSなど25の課題に取り組み、そのうち23個が成功した。日本円に換算して1兆5000億円以上、実に売り上げの2割近くが、EBOから生まれている」とした。

 さらに、日本IBMは女性、外国人、若手の登用にも積極的に取り組んでいるとし、現在、女性の社員比率は約17%、女性役員および理事は1998年には1人だったものが、現在では9人(うち執行役員3人)に拡大している事実を示した。

 「女性が働きやすい環境の実現のために、勤務時間や勤務する場所をフレキシブルにするなど、多様な働き方ができるようにしている。これもイノベーションのひとつ」とした。


GTOとGMTとGIO IBMの新規事業分野 EBOの事例

内永ゆか子取締役専務

IBMの研究・開発体制
 内永取締役専務は、IBMの日本の研究開発拠点である「APTO(Asia Pacific Technical Operaions)」の取り組みを説明。とくに、その中核拠点となる大和事業所の位置づけなどに触れた。

 APTOは、全世界のIBMにとって、基礎研究、ハードおよびソフトの製品開発拠点が集まる唯一の場所で、大和、野洲、藤沢の3拠点、2400人の体制で構成される。

 基礎技術を担当する研究部門、製品開発を行う開発部門、製造技術支援などを行う製造部門、ソリューション開発などを担当するソリューション営業・開発部門、ゲーム機やデジタル家電などの開発支援などを行うテクノロジーサービス部門、技術営業を担当するテクノロジー営業部門で構成される。

 「基礎技術に加え、DB2、Lotus、Tivoliなどのソフトウェア製品の開発、スレトージおよびテープ装置、xServerやz9の一部開発などを担当している」という。

 最近、APTOが取り組んでいるのが、デジタル家電・組み込み機器向けソリューションである。

 IBMが技術開発、製品開発のなかで培ったITを活用したプロセス、マネジメントなどの手法をコンサルティングなどを含めてサービスとして提供するもので、「コンシューマ機器のR&Dにおけるイノベーションをサービスとして提供するもの」(内永取締役専務)と位置づける。

 研究開発コンサルティングサービス、エンジニアリンクサービス、開発手法・ノウハウ、ツールの提供、プラットフォーム構築と組み込み技術提供の4つのサービスを用意。「デシタル家電の開発やIT機器の開発において、ソフトウェア開発が複雑化したり、統一した製品開発プロセスが欠如していたり、結果として、スパゲッティ化して新製品開発がどうにもならなくなっている企業が目立つ。計画通りに新製品が投入できずに、ビジネスチャンスを逃すといった問題も起こっている。IBMのサービスを利用することで、こうした問題が解決できる」という。

 現在、コンシューマ機器以外にも、自動車などのいくつかの製品分野に乗り出しているほか、ディープ・コンピューティングを活用した特化型ソリューションの提供にも力を注いでいるが、「将来的には、大和事業所のエンジニアの半分を、こうした事業にシフトさせたい」としている。

 IBMには、IPD(統合製品開発プロセス)という手法がある。これは、ルイス・ガースナー前CEOが確立した手法で、ITツールを駆使して、効果的に高品質で競争力の高い製品を投入することを目指す。社内的には、「倒産の危機から脱出し、強いIBM復活の原動力となった付加価値製品を継続的に作り出す仕組み」と位置づけられている。

 この手法が、大和事業所における新たなサービス事業の創出につながっていることを、内永取締役専務は強調した。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/


( 大河原 克行 )
2005/08/01 00:00

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