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日本IBM、Innovation Days 2005で大和事業所の成果を披露


IBMの研究開発拠点のひとつである大和事業所。中央林間駅から徒歩15分程度の距離にある。
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、報道関係者を対象に、同社の研究開発拠点である大和事業所の様子を公開した。

 これは、7月28、29日の2日間、大和事業所において開催した「Innovation Days 2005」にあわせて行ったもの。同イベントで展示された同事業所の研究成果とともに内部の様子を紹介する。


Innovation Days 2005会場に展示された世界最高速を誇るスーパーコンピュータ「Blue Gene」のキャビネットのモックアップ。中身は空っぽ。本物はローレンスバリモア国立研究所に設置され、これを64台組み合わせることで、136.80テラフロップスを実現している。ただし、これでもネズミの脳程度だという。日本IBMの大歳卓麻社長によると、「2015年には人間の脳と同じものが完成し、2020年にはパソコンでも人間の脳と同等の処理が可能になる」という。 Blue Geneに搭載されるノードカード。手前がノードカードに搭載されているコンピュータカード。コンピュータカードには、最大5.6ギガフロップスを実現するチップが2基搭載され、これが1枚のノードカードに16枚搭載されることで最大180ギガフロップスを実現。32ノードカードを搭載したキャビネットが64個でBlue Geneを構成。最終的には360テラフロップスを目指すという。

大和事業所の技術を活用して開発された地中物体可視システム「Mine Eye(マイン・アイ)」。人道目的のために設立されたNPOである地雷除去支援の会「JAHDS(ジャッズ)」の要請を受けて開発したもの。対人地雷除去のために開発された。地中レーダーの効率的な解析や表示を実現するマイクロコードと組み込みソフト技術、オペレータに対する機器本体の安全設計や操作性の実現も大和事業所の技術によるもの。また、大和事業所が開発したThinkPadで培った小型高性能化技術、低消費電力によって長時間の駆動を実現している。
センサー部分にはオムロンの技術が採用されている。すでに、タイの地雷除去センタープロジェクトで利用されたほか、今年7月から開始されたタイ、カンボジア国境「カオ・ブラヴィーハン地域復興支援地雷除去プロジェクト」で使用されている。

データ解析技術を活用したCBO(Center for Business Optimization)ソリューションの実例展示。配送業者において、数百カ所の配送先、移動する数十台のトラックなどのデータを分析し、最も短時間で、低コストで配送を実現することを支援する。また、トラックなどへの積み荷に関しても、最も効率的に積むことができる方法のシミュレーションを短時間に行える。刻一刻と変わる状況にも対応して、配送経路の最適化、積み付けの最適化を行う。すでに20社以上での導入実績があるという。IBMは、オンデマンド企業への支援を目的としたソリューション提案をしているが、そのためにはセンス&レスポンスの実現が不可欠としており、それを実現するソリューションのひとつと位置づけられる。 DUET(Dynamic User Experience Technology)によるユーザーインターフェイスのデザインを可能にするシステム。Innovation Days 2005の会場では、デジタル家電の操作画面を実例に、プログラミングなしで画面の遷移デザインを可能にするデモンストレーションを行っていた。プログラミング知識を持たないデザイナーも、感覚的に利用できる設計となっており、操作画面と操作画面の間に、新たな画面を挿入するのもプログラミングの知識不要で行うことができる。

大和事業所の地下1階には電波暗室が設置されている。現在、そこではRFIDの実験が進められている。Innovation Days 2005では、2.45GHz帯のRFIDを活用し、流通業での実用化に向けた実験を公開。複数のタグを一気に認識する方法や、ペットボトルで水や空気が入ったものをいかに効率的に認識するか、そのためにどんな工夫をすればいいかといった実験を公開していた。

1階にあるユーザー・エクスペリエンス・デザインセンター。これまでは主に、ThinkPadのユーザーインターフェイスや、ホームページビルダーなどのソフトウェアのインターフェイスの開発、これら製品のトータルデザインの開発のために利用されていたが、携帯電話などの操作性をはじめデジタル家電分野などにも幅を広げている。ユーザー・エクスペリエンス・デザインセンターの基本的な取り組みは、ユーザーセンタードデザイン、ブランドデザイン、ユニバーサルデザイン、スマイルデザインの4つの観点から行われているという。

ユーザー・エクスペリエンス・デザインセンター内に置かれたUEデザインラボ。ここでは実際にユーザーを招いて操作してもらうことで、操作上の問題点を発見する。左側の鏡の裏は、デザイナー、エンジニアなどが待機する部屋で、ハーフミラーとなっている。 各種モニターなどが設置され、撮影した映像はビデオで繰り返し検証できる。 携帯電話の操作性を実験するには、こうした小型のカメラを設置して行う。研究施設内にこうした実験設備を置くことで、デザイナーやエンジニアが、すぐに製品にフィードバックできる体制を作っている。なお、ブランド試験の場合には、ユーザーが訪れても、IBM色が出ない別の場所に実験施設を設けているという。

ユーザー試験の結果については、独自の分析ツールを利用して、視覚的にも検証できるようにしている。 大和事業所3階の渡り廊下には、歴代のThinkPadが並べられている。レノボにパソコン事業が移管されても、これは移動しない。ちなみに、レノボの研究開発部門も大和事業所内にある。


URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/

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  ・ 日本IBM、大和事業所で「Innovation Days 2005」を開催(2005/08/01)


( 大河原 克行 )
2005/08/01 18:25

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