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日本オラクル、財務情報の電子化フォーマット「XBRL」への取り組みを説明


アドバンストソリューション本部シニアマネジャーの作田淳子氏

XBRL Reportによる、設計/開発のイメージ
 日本オラクル株式会社は9月6日、プレス向けのセミナーを開催し、同社のXBRL関連の取り組みを説明した。

 XBRLとはeXtensible Business Reporting Languageの略で、企業における財務情報を記述するための、XMLベースの言語のこと。米国や欧州、豪州などの中央銀行、政府機関などで一部採用されたほか、パイロットプロジェクトも多数動き始めている状況という。また国内でも、2004年2月より段階的に開始されている国税庁の電子申告において、標準フォーマットに採用されている実績があり、国際的な標準フォーマットとして注目が集まっている存在だ。

 それはなぜかというと、財務情報が電子化されることによって、「いろいろなところで、同じ形で、簡単に使えるようになる」(アドバンストソリューション本部シニアマネジャーの作田淳子氏)からだ。従来、紙で集積されてから電子化されていた情報が電子データでやりとりできるようになれば、利便性やスピードが大幅に向上するし、同じデータが、税務の電子申告や融資時に用いる財務情報など、さまざまな用途に利用できれば、ユーザーにとっての利便性は増す。

 日本オラクルでも、そうした性格を持つXBRLに早くから注目していたという。米Oracle自体も、データ作成側としてE-Business Suiteを対応させたほか、XBRL形式のファイルを受け取って分析・格納する受け皿として、Oracle DatabaseとFusion Middle WareによるBIソリューションを用意するなど、対応を進めている。あわせて、システム事業統括 アドバンストソリューション本部の本部長、林徹氏が「XBRLに関しては、日本が他国より進んでいるのを察知して、3年ほど前から取り組んでいた」と話し、日本独自の施策も積極的に行っていると説明した。

 具体的には、国内でのXBRLの普及を目指す「XBRL Japan Consortium」へ参加して積極的に活動する一方で、ISVをはじめとするパートナーへのXBRL開発キットの無償配布を実施しているという。日本オラクルには現在、約1000社のパートナーと、約900におよぶ、オラクル製品をインテグレートしたパートナーのパッケージがあり、それらが競争力のある“強い”製品になるのであれば、日本オラクルに対しても間接的に売り上げ増などのメリットがもたらされる。同社では、積極的にパートナーへの支援も行ってきており、この開発ツール「XBRL Report」の配布も、その一環だというのである。


システム事業統括 アドバンストソリューション本部の本部長、林徹氏
 9月6日に発表された、住商情報システム株式会社(以下、SCS)のERPパッケージ「ProActive」のXBRL対応も、このXBRL Reportを利用して実現されたもの。同ツールを利用すると、3画面の作成という簡単なステップでXBRLでのデータ出力が可能になるとのことで、今回SCSでは、ProActive Gv for Web Ver.6.0.0を、国税庁の法人税申告用データ出力に対応させている。また今後は、「中堅・中小企業のユーザーが多いという製品の性格上、XBRLデータを利用した銀行融資にも対応させていく」(SCSのProActive事業部 事業部長補佐、河野彰氏)予定もあるという。

 中小企業でXBRLなどというと、本当にそんなニーズがあるのかと思えてしまうかもしれないが、XBRLを用いた中小企業向けの銀行融資という分野では、弥生があおぞら銀行と提携して、審査申込から借入申込までをすべてインターネットベースで実施可能なサービスを提供するなど、すでに先行事例がある。

 また、TKCによる中堅・中小企業の計算書類公開サイト「TKC計算書類公開データベース」や、JDL、PCAなどさまざまなベンダによって提供されている電子申告ソフトなど、意外に中堅・中小企業向けの製品・サービスでもXBRLが利用できるようにはなってきた。

 もっとも、まだXBRL関連の市場規模は算出されていない模様で、国税電子申告の利用者も2万1000件強(平成16年度分)にとどまっているのが現状。XBRLを用いることで、ユーザーに明確なメリットを提供できることをわかってもらえれば、自然と利用は広まってくるのではないか。各ベンダ・団体の啓発活動にも、今後期待していきたい。



URL
  日本オラクル株式会社
  http://www.oracle.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.oracle.co.jp/news_owa/NEWS/news.news_detail?p_news_code=1441

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( 石井 一志 )
2005/09/06 17:52

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