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「十分な競争力がある」アプライアンスを作ってしまったシトリックスの悩み


シトリックス 代表取締役社長 大古俊輔氏

Citrix Access Suite 4.0のシステム構成
 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下、シトリックス)は、従来「MetaFrame」として提供してきたサーバーベースコンピューティング製品群を、新たに「Citrix Access Suite 4.0」として提供すると5月に発表している。個人情報保護への関心の高まりも追い風となり、新製品の発表後も「四半期ごとに約1000社」(代表取締役社長 大古俊輔氏)のペースで順調に販売を伸ばしているという。

 Access Suite 4.0は、社内外からWebブラウザを通じて、基盤となる「Citrix Presentation Server 4.0」にアクセスし、この中でアプリケーションやデータなどを利用できることが基本機能だ。この過程で、VPNセッションの確立、PC/ユーザーの認証、接続方法(LAN、モバイルなど)の確認、セキュリティチェックなどを行い、ポリシーに沿った形でのアクセスが可能となる。

 このPresentation Server 4.0と統合し、リモートからの安全なアクセスを可能とするのが、「Citrix Access Gateway」だ。同社初のハードウェア製品となるこのアプライアンスは「IPsec VPNとSSL-VPNの利点を融合」(同社)し、複雑な設定を必要とせず、Presentation Server 4.0で利用できるすべてのアプリケーションをWebブラウザから利用できる。

 同社では、こうしたAccess Suite 4.0内での連携を特長とし、Access Gatewayはそのコンポーネントとして提供していく方針をかかげている。しかし大古氏によると、同社の販売パートナーから「Access Gatewayは単体(のSSL-VPNアプライアンス)としても十分な競争力があるから、これだけでも売っていきたい」との強い要望があるという。日本では本格的な出荷をひかえた段階だが、先行して出荷を開始している国々では「8月中に単体でかなり出た」(同社)とのことで、国内でもAccess Suite 4.0としての提供に力を入れていくとしながらも、単体での販売も行っていく考えを示している。

 さらに悩ましいのが、8月に発表されたウォッチガード・テクノロジーズのSSL-VPNアプライアンス「WatchGuard Firebox SSL Core VPN Gateway(以下、Firebox SSL)」のソフトウェアに、シトリックスの「Secure Access」をOEM提供しており、単体で販売すると競合してしまう恐れがあるということだ。Access Gatewayは単体価格で42万4200円だが、11月30日までの期間限定で10の同時接続ライセンス込みで35万円で販売される。Firebox SSLは5ユーザーライセンス、1年間の保守などを含めた基本パッケージで71万7000円だ。

 しかし、こうしたジレンマも製品が市場に受け入れられているからこそであり、ぜいたくな悩みといえるかもしれない。シトリックスは国内での業績こそ公開していないが、米Citrix Systemsは2005年第2四半期において売上高2億1120万ドル(前年同期比18%増)、純利益4780万ドル(同35%増)を計上している。



URL
  シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
  http://www.citrix.co.jp/

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( 朝夷 剛士 )
2005/09/06 18:18

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