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米Microsoft、知財戦略を説明-「営利企業にソフトウェア特許は必要」


米Microsoftの知的財産担当コーポレート副社長兼副ゼネラルカウンセル、マーシャル・フェルプス氏
 マイクロソフト株式会社は9月8日、プレス向けセミナーを開催し、米Microsoftの知的財産担当コーポレート副社長兼副ゼネラルカウンセル、マーシャル・フェルプス氏が、Microsoftの知的財産権に関する取り組み、戦略についての説明を行った。

 フェルプス氏はまず、知的財産権の保護の重要性を訴えた。Microsoftでは現在、年に70億ドルという巨額の資金を開発費用として投資しているというが、こうして開発した機能を保護するために、ITの分野ではもっとも特許が重要だとした同氏は、「特許権を保持することによって、発明のフレームワーク開示が可能になる」とし、Microsoftも現在、この戦略を取っていると説明する。

 実際には、特許をはじめとする知的財産を保有する企業の選択肢としては、ほかに、公開しないことで他社による特許利用を制限するやり方となども存在するという。現にMicrosoftでは2003年末に現在の方針へあらためるまで、知的財産を公開しないクローズなやり方を採用していた。しかし、「化学や製薬の業界ではまた異なるやり方があるだろうが、IT業界では、1社だけですべてを発明するのは無理」と考えて、方針を転換したという。

 現在は、「条件、条項はもちろん異なるが、どの技術もすべて請われれば供与するし、いつでも、いかなる会社からのいかなる要求に対しても、できる限り応える」(フェルプス氏)という姿勢で望んでいるという。

 もちろん、Microsoftが知的財産のポートフォリオをオープンにしているのは、それによるメリットがあると考えているからでもある。フェルプス氏は「知的財産の公開は必ずしも収益を得るためではなく、業界のため」と述べたが、「知的財産をライセンス提供することによって、相手企業との信頼関係が確立するというメリットもあるし、研究開発の成果として得た知的財産を供与して売り上げを得て、さらにそれを次期の開発のための予算にあてることができる」とも語り、ライセンス提供によって“知的財産のサイクル”が維持されるという側面もあることに触れた。

 しかし世間には、ソフトウェアに特許があること自体について否定的な向きもある。フェルプス氏はこれに関して「商業活動している企業にとっては、(ソフトウェア特許の否定という流れは)受け入れられない。多額の投資をしてイノベーションを推進しているのだから、開発の成果を享受できる環境が必要」としたほか、「小さな会社でも知的財産を利用して成長できる。現に、知的財産保護を推進することによって、さまざまな会社が成長してきた」と述べ、ソフトウェアの特許も必要であると強調した。


 また、ソースコード自体もまったくのクローズではなく、「学術研究のためにソースコードを大学に供与している。62の米国の大学、58の米国外の大学に提供することで、学術にも貢献している」と主張。あわせて、市場で圧倒的なシェアを持つ同社製品の代替・対抗製品として挙げられるオープンソースソフトウェアとの関係に触れ、「顧客からすれば、ITがどういうふうに動いているのかは関係なく、動けばいいと考えている。相互運用性が確立されれば、WindowsでもSUSEでも問題ないと思う」「オープンソースは必要であり、なくなることはない」などと述べた。

 さらに、MicrosoftがOEMベンダと結んでいるNAP(non-assertion of patents provision、特許権非主張)条項に関して、「15年前に案として出された時には当社は特許を持っておらず、ソフトの特許化も知られていない状況で、訴訟は起こりにくかった。確かに、当社が知的財産に関する大きなポートフォリオを持った今では時代錯誤だ」と述べ、2004年2月には、新規の契約からは同条項を取り除くことを決めたと説明。「周囲の変革に対応していく会社がよい会社であり、当社もそうありたい」とした。ただし同社では、過去に結んだ契約をあらためることはしていない。

 なおNAP条項とは、Microsoftと各PCメーカーとの間で締結されたWindows使用許諾契約に含まれるもので、PCメーカーが保有する特許がWindowsによって侵害されても、MicrosoftやほかのPCメーカーに対して訴訟を提起できないと規定している。日本の公正取引委員会は、同社が独占的地位を利用し、各PCメーカーとの間で不当にNAP条項を含む契約を締結させたと認定。2004年7月に独占禁止法違反として排除勧告を行っているが、Microsoftは応諾せず、現在も審判が続けられている。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  米Microsoft
  http://www.microsoft.com/

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( 石井 一志 )
2005/09/08 16:41

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