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「100%エンタープライズ」に転換したRed Hatが好調な理由


米Red Hat ワールドワイドセールスエグゼクティブバイスプレジデント アレックス・ピンチェフ氏
 米Red Hatワールドワイドセールスエグゼクティブバイスプレジデントのアレックス・ピンチェフ氏は、直近の決算報告において前年同期比で過去最高となる伸びを記録するなどエンタープライズビジネスが好調に推移していること、そして次期OSに向けた同社の取り組みを、10月4日に行われたプレス向け説明会で示した。

 9月28日に発表された2005年度第2四半期の決算報告によると、同社の売上高は前年同期比42%増の6570万ドル、うちサブスクリプション(定期更新サービス)は新規・更新合わせて21万5000契約、売上は同56%増の5430万ドルを計上し、合計契約数は100万に到達したという。日本国内の業績は公開していないが、ピンチェフ氏は「オープンソースソフトウェア(OSS)導入において最も成功している国の1つ。導入率は米国についで2番目に高い」と高く評価する。

 ピンチェフ氏は「Red Hatは1993年に創業した会社だが、私はまだ3年目だと考えている」と話す。同社は2003年にそれまでの事業戦略を大きく転換し、主に個人向けOSを「Fedoraプロジェクト」として分離、エンタープライズ向けサービス事業への取り組みを本格化した。これにより「オープンソースコミュニティ(OSC)との付き合い、およびOSCにおける位置づけが大きく変わった。100%エンタープライズ企業になった」という。

 「それまでは“Linuxとはリナックスと読むのか、ライナックスと読むのか”といった初歩的な質問をされることがあったが、現在ではそういったことを聞かれることもなくなり、多くの企業のIT戦略にLinuxが取り入れられるようになった」とピンチェフ氏。当初Linuxをサーバー向けに展開することは同社にとって大きな賭けで、初年度1万台を目標としていたが、現在では100万台以上の市場規模となっており、「(調査会社)IDCでは今年までに140万台の販売を予測しているが、すでに120万台を達成しており、これを超えるのは確実」とピンチェフ氏は自信を示す。ちなみにIDCは2009年には倍の280万台に達すると予測している。

 そしてこの中でも大きな割合、とりわけ日本では52%のシェアを持つのがRed Hatだという。日本法人のレッドハット代表取締役社長である藤田祐治氏は、国内での展開について「日立・富士通・NECなどへのOEM事業が好調」であることに加え、中小企業向けホスティングサービスを提供する業者がレッドハットでサービスラインアップをそろえることが多くなった」と好調の要因を指摘した。

 また、米CIO Insight Magazineの調査では、同社が「ROIの期待に応えた」「ITコストの削減につながった」といった点でトップ評価を得て、エンジニア間だけでなく経営陣にも同社やオープンソースの利点が広まっているとした。「ちなみにマイクロソフトは33位だった」(ピンチェフ氏)。


業種別Linuxサーバー導入状況 日本のベンダー別Linux OS出荷本数シェア CIO Insight Magazineによるベンダー別満足度調査

仮想化機能が目玉となるRed Hat Enterprise Linux 5

Red Hatが示すLinuxの適用範囲
 同社がエンタープライズビジネスを展開していく上で「大きなマイルストーンになった」というのが、Red Hat Enterprise Linux 4(RHEL4)だという。RHEL4はメインフレームからx86サーバーなど異なるアーキテクチャ間で共通のソースコードが利用できる。「これまではOSの種類が次々と増えていく傾向にあったが、次のステップではそうならないことは明らか」とピンチェフ氏。アーキテクチャごとにOSを用意するのではなく、すべてのアーキテクチャで共通で利用できるOSこそ次世代プラットフォームであるということだ。

 こうしたRHEL4の次期バージョンとなるRHEL5では、「SELinux」を取り込んだセキュリティの強化と、仮想化機能の実装を柱とする意向をピンチェフ氏は示した。ここでいう仮想化とは、1サーバー内で複数のOSを同時に稼働させる技術を指し、「Xen」という名のソフトウェアとしてFedora CoreやSUSE Linuxなどでも取り込まれている。また、Solaris 10においても仮想化は目玉となるなどサーバーOSにおいてホットな機能だ。RHEL5に向けてこうした機能をエンタープライズ向けに取り込み、統合していくという。



URL
  レッドハット株式会社
  http://www.jp.redhat.com/

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( 朝夷 剛士 )
2005/10/05 13:10

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