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米FileMaker CEO、「機能が多すぎて使い切れないソフトにはしたくない」


「FileMaker Pro 8」の発表会の様子
 ファイルメーカー株式会社が10月12日に開催した「FileMaker Pro 8」の記者会見は、ユニークな内容だった。同製品はデータベースソフトであるが、会見中にはデータベースの定番である、「リレーショナル」や「フィールド」、「スキーマ」といった用語がほとんど出てこなかったからだ。

 この点を指摘すると、米FileMaker社のドミニーク・グピール社長と、開発を担当したシステムエンジニアのアンドリュー・ルケイツ氏はガッツポーズをとった。

 「実は、当社の製品がデータベース以上の機能をもっていることをアピールすることが狙いだった」とルケイツ氏は明かしてくれた。同社はFileMaker Pro 8をどんな狙いをもって開発したのか。米FileMaker社のグピール社長、ルケイツ氏、そして日本法人の社長である宮本高誠氏にその狙いを聞いた。


あえてデータベースらしくない内容をアピール

米FileMaker社のドミニーク・グピール社長
―記者会見で、データベースらしくない部分をアピールすることは狙いだったそうですが、なぜ、そういう狙いでアピールしたのでしょう。

グピール氏
 現在のソフトには、機能が盛り込まれすぎています。そのため、多くのユーザーがソフトを使いこなせなくなっているのです。以前、マイクロソフトが調査を行ったところ、必要な機能を盛り込んでいるにもかかわらず、「そんな機能があるのは知らなかった」と答えるユーザーがほとんどだそうです。

 当社はせっかく搭載した機能を、「そんな機能、あったんですか!知りませんでした」なんて言われたくない。だから、そうならないよう、かなり注意しているんです。

 メーカーの都合ではなく、ユーザーにとって必要なフィーチャーをサポートしているのが当社の特徴。ユーザーにとって不要な機能まで搭載するつもりはない。

 そのために、新しいバージョンをリリースする前に、ユーザーにとってわかりやすいテーマを打ち出し、その点を強くアピールするという方法をとっています。FileMaker Pro 8でいえば、「Work Faster」と「Share More」がユーザーにアピールするためのテーマです。そして、新機能はこのテーマを実現するためにあるとアピールすることで、各機能がもつ意味が明確になるわけです。

 今回は、Share Moreというテーマは情報の共有の重要さが必要だと感じたからこそ、選んだテーマです。Work Fasterは、時間がかかることが多いアプリケーション開発において、より効率的に開発が行えるようにするという点に力を注ぎました。


米FileMaker システムエンジニアのアンドリュー・ルケイツ氏
ルケイツ氏
 今回、このテーマに沿って訴えたかったのは、FileMakerという製品がビジネスルールに基づいたツールをたくさん揃えた製品であるという点でした。その方がデータベースにはつきものの、スキーマやフィールド、リレーションズといった機能を紹介するより、ユーザーのみなさんにとってはずっと効率的ですから。

 ですから、記者会見では旅行会社が顧客にアピールするための案内状をPDFで作成して、即メールで送信するといったデモを行いました。顧客名簿から該当する顧客のみを選び出してメールを送るといったことはデータベースソフトならではの機能です。しかし、当社の製品はそれだけではなく、画像を貼り付けた案内状を作成し、それをPDFフォーマットにして送信するといったことが可能です。ビジネス現場に即した内容だったと思います。


PDFのサポートではマイクロソフトより1年先を行っている

―グピール社長は、会見の中で、マイクロソフトの「Office」に比べて、「当社の製品は1年、先をいっている」と発言していましたが。

グピール氏
 マイクロソフトも次期OfficeでPDFをサポートすることを発表しています。これは大きな変化だと考えています。マイクロソフトというメーカーは、他社が開発したものを取り込むことに大変慎重なメーカーですからね。彼らがPDFをサポートすることを決めたのは、PDFというフォーマットがユーザーにとって欠かせないことの証でしょう。当社がPDFをサポートしたことも間違いなかったといえると思いますよ。

 ただし、マイクロソフトの製品が登場するまでには、まだ1年かかる。それに対し、FileMaker Pro 8は11月中旬には発売になる。すぐにPDFを利用したいと考えたユーザーのみなさんは当社の製品を利用した方がいいですよ(笑)。


―マイクロソフトにはない機能を盛り込むために、Linuxへの対応を行う計画はありますか。以前の会見で、Linux対応の予定はないとコメントしていましたが、その方針に変化はないでしょうか。

グピール氏
 ないですね。サーバーとしてはLinuxのサポートを検討すべき時期に入ったようにも思いますが、デスクトップOSとしてのLinuxに対応する予定は今のところありません。


―データベースを使ってアプリケーションを開発するような技術者からは、対応を望む声があがっていないのでしょうか。

グピール氏
 FileMakerのユーザーというのは、一般的なアプリケーション開発者とは違う部分があります。かなり、FileMakerセントリックな人が多いんです。OSについていくというより、FileMakerについていくといってくれています。彼らからはLinuxを要望する声はまだあがってきていません。


ファイルメーカー株式会社の宮本高誠社長
―以前あった、iモード携帯電話プラットフォーム対応のFileMaker Mobile for i-modeに関しては、今、バージョンでは発売予定がないそうですが、その理由は。

宮本氏
 for i-modeは、日本で企画しリリースした製品でした。発売した当時は、データ通信ができる携帯電話市場は、iモードがほぼ独占状態にあったわけですが、現在では市場が様変わりしています。複数のプラットフォームが混在していますし、携帯電話に対するニーズそのものが変化したととらえています。そういう市場の変化の中で、すでにFileMaker 7の時代から製品発売を休止していましたし、その発表はすでに行っていました。しかし、新バージョンの発売にあたって、あらためてその点も説明した方がよいと考え、ニュースリリースにもそのことを書き添えました。


―市場が変化したということですが、以前のバージョンの売れ行きはどうだったのですか。

宮本氏
 販売目標は一切公表していませんから、それに対してどれくらい売れたかということは答えられないのですが、決して売れ行きが悪かったというわけではなかったですね。


―携帯電話の世界では、シンビアンのようにワールドワイドで大きなシェアをもつプラットフォームも登場しています。将来のバージョンで対応の予定はありますか。

グピール氏
 将来計画は公表しないのが基本ですが、米国の携帯電話市場はだいぶ分断されていますからね、携帯電話対応の製品にフォーカスする予定は今のところないですね。当分は様子を見ることにとどめておきたいと思います。



URL
  ファイルメーカー株式会社
  http://www.filemaker.co.jp/

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( 三浦 優子 )
2005/10/21 12:35

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