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米Forrester副社長、ITをシンプルにする「オーガニックIT」のメリットを語る


米Forrester Researchのリチャード・フィケラ副社長
 米Forrester Researchは、ITがビジネスに与える影響についての助言を提供している、独立系のIT調査会社である。今回は、同社でアナリストを務めているリチャード・フィケラ副社長が来日したのを期に、ITの進むべき方向性について聞いた。

 ITが複雑化している現在の環境では、それをいかにシンプルにするか、という点に関して注目が集まっており、各ベンダは「仮想化」というキーワードでITのシンプル化を実現しようとしているのは、ご存じの通りだ。Forresterでは仮想化(Virtualization)ではなく「オーガニック(有機的)IT」という言葉を用いて、ITが進む方向性を示している。

 ただしオーガニックITとは、広い意味での仮想化技術の総称と考えれば良いようだ。リソースを仮想化し、複数台のサーバーを仮想化して1つの大きなサーバーとして見せるようにするのがまず最初の要素。また、仮想サーバー上で動くワークロードを柔軟に、かつ負荷レベルなどに応じて自動的に割り当てられるようにするとともに、その上で動くソフトウェアに対しては、モジュール化し、必要に応じて再利用可能なようにするSOAの考え方を導入することになると、フィケラ氏はこの概念を説明した。

 それではこのメリットは何かというと、それは単純化できることだという。ITは複雑化し続けると、対応にあたる人員を増やさなくてはならず、そこには当然コストが発生してくる。しかしオーガニックITによって複雑化が軽減できれば、「人的資源の節約、そしてコストの節約になる」とフィケラ氏は説明する。あわせて、単純化することによるエラー率の低下など、品質面の向上が見込めること、そしてより高速な処理が可能になることもメリットだという。

 もっとも、今すぐオーガニックITがすべて活用可能なのかといえば、そこまでは進んでいないのが現状である。フィケラ氏によれば、サーバーなどのインフラの仮想化や、管理ツールという分野では成果を出せているが、真のオーガニックITはまだベンダのマーケティング上の産物にとどまっているとのことで、同氏は「方向は間違いなくそちらに進んでいるが、オーガニックITの実現のためには、現段階ではサービスのカスタム化、プロセスの変更などが必要になるため、大規模な投資がいる。ユーザーもこれは認識しておくべきだ」とした。

 従って、現実にこうした技術の恩恵を受けられるのは、ラージエンタープライズと呼ばれる大企業がほとんどになる。特に、仮想化を進めるためにはサーバーやストレージの統合を済ませておかねばならないが、一部の大企業を除けば、こうした取り組みは米国でも日本でも遅れているのが現状であることは、フィケラ氏も認めた。


 それでも、すでに成功例はいくつかあがってきているという。例えば、サーバー150台規模のERPを使っている通信事業者では、アプリケーションの修正と再配信を定期的に行っており、この作業に3~5週間かかるほか、エラー率も高かった状況という。しかし「プロビジョニングのツールを導入することで、期間を1週間以内に短縮し、エラー率も80%低下させることができた」(フィケラ氏)。また別の事業者では、サーバーのリプロビジョニング作業を行ってロードバランスを効果的に行えるようにした結果、サーバー台数の削減を実現し、ソフトのライセンスもかなり減らすことができたという。

 一方、日本の状況についてフィケラ氏は、「まだデータを収集している段階ではあるが、日本のITの運用管理は保守的なため、実装という点では、北米よりも遅れているのではないか」と予想している。ただし、日本の技術サプライヤーと話したところ、持っている技術の高さに驚いたとした同氏は「たとえばNECも、日立も、富士通も、オーガニックITに対応できる形で取り組んでいる。今後12カ月で、かなりの選択肢が出てくるのではないか」と述べた。



URL
  米Forrester Research
  http://www.forrester.com/


( 石井 一志 )
2005/10/28 13:23

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