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マイクロソフト、3カ年計画「Plan-J」におけるアカデミック分野の取り組みを説明


米Microsoft CorporationのMicrosoft Research担当上級副社長、リック・ラシッド氏
 マイクロソフト株式会社は11月7日、国内のアカデミック分野向け戦略を発表した。7月末に発表された3カ年計画「Plan-J」では日本国内における投資を拡大するとされていたが、今回の発表もこの一環という。

 同社や米Microsoftの基礎研究所であるMicrosoft Researchではこれまでも、IJARC(マイクロソフト産学連携研究機構)を設立して、同機構管轄のもとで共同研究プロジェクトを実施するなどの施策を行ってきたが、この発表では、同プロジェクトの支援範囲拡大をはじめ、開発ツールのアカデミック版提供やオンライントレーニングの提供といった各種取り組みが行われる。

 マイクロソフトから、IJARCの設立と、同機構内のアカデミックアドバイザリーコミッティ(顧問委員会)が管轄する共同研究開始などの施策が発表されたのは6月末のこと。現在では「グラフィックスサーチ」「ユーザーインターフェイス」「自然言語処理」の3分野で共同研究プロジェクトが進行しているというが、今回はこれらに加えて「Trustworthy Computing、セキュリティ」「Windows OSテクノロジー」「HPC」など全8分野にテーマを拡大し、11月15日から研究の公募を行う。

 また2004年から実施しているフェローシップ(研究奨学金)プログラムでは、本年度4名の大学院生に奨学金が授与されているが、マイクロソフトではこのプログラムをさらに拡大するという。なおフェロー受賞者には奨学金の授与だけでなく、Microsoft Research Asiaへのインターンシップ(3カ月間)参加も認められる。

 これらの取り組みについて、米Microsoft CorporationのMicrosoft Research担当上級副社長、リック・ラシッド氏は「当社では基礎研究投資のうち15%を大学に向けており、日本の大学・研究者ともすばらしい関係を築いてきた。今年からはIJARCが始まったが、当社ではお金を出すだけでなく、研究者を出して、日本の教授や学生と一緒になってコンピュータサイエンスの最先端を追いかけていくというコミットメントをしている」と述べ、これからもアカデミック分野との連携を進めていくとした。


マイクロソフトの執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長、鈴木協一郎氏

マイクロソフトの代表執行役社長、ダレン・ヒューストン氏
 さらにマイクロソフトでは、一般の学生にも積極的にアプローチを行うという。主な施策は、1)ソフトウェアの提供、2)スキル習得や学生間交流の機会を提供、3)グローバルな挑戦機会の提供、の3本立て。

 1)では、学生限定の「Visual Studio .NET the Spoke Premium 2003」購入者(既購入者含む)に対して、追加費用なしで「Visual Studio 2005 Professional Edition」をダウンロード提供するキャンペーンを実施する。またVisual Studio 2005でもStandard Edition相当のアカデミック版を推定小売価格4800円で発売するほか、入門版の「Visual Studio 2005 Express Edition」なども広く提供されるという。

 今回、提供ソフトウェアが開発ツールに限定された理由について、マイクロソフトの執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長、鈴木協一郎氏は「携帯電話やインターネットを最初から経験している新しい世代からのイノベーションに期待しているから」と説明した。

 一方、2)ではオンライン言語学習の提供やインターネットによる教育コンテンツの動画配信、コミュニティ向けセミナー実施、ソフトウェア実践テキストの提供などが行われ、3)では、全世界の学生を対象とした技術コンテスト「Imagine Cup 2006」の予選を国内で開催する。

 あわせて、教育におけるIT活用の推進を支援する目的で行っている、新しい教育環境の提案・提唱活動も強化する。これまでにも寄付講座の提供や、教職員のスキル向上のための「ICTスキルアッププログラム」の実施などを積極的に行ってきたとしたが、2005~2006年には同プログラムを国立教員養成系大学へ展開して、13校と連携、9000名以上の受講を予定しているという。

 なお、こうしたアカデミック分野の取り組みに関して、マイクロソフトの代表執行役社長、ダレン・ヒューストン氏は「アカデミック分野はイノベーションの宝庫であり、日本においてもすばらしいイノベーションはこの分野で始まると考えている。日本の優秀な大学と連携しなくては、ITの非常に重要な機会を損なうと考えているので、アカデミックとどのような協力関係を結ぶかが、非常に重要になるだろう」と述べていた。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  プレスリリース
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2481
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2479
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2477

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( 石井 一志 )
2005/11/07 17:59

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