来日中の米Microsoft CEOスティーブ・バルマー氏は11月16日、都内で会見を行い、発売を目前にひかえた「SQL Server 2005」をはじめとした新製品のほか、ソフトウェアサービスとしての新たな試みである「Windows Live / Office Live」についても言及した。
■ 発表目前のSQL Server 2005、「リリースを2回に分けた方がよかった」
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米Microsoft CEO スティーブ・バルマー氏
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マイクロソフトは11月17日に、データベースソフト「SQL Server 2005」、開発環境「Visual Studio 2005」、ビジネスコラボレーション環境「BizTalk Server 2006」を一挙に発表する。特にSQL Serverは前バージョンの発売より5年の間隔を開けて満を持しての登場だ。
バルマー氏はこれだけの間が開いたことについて「.NETプログラミング環境をSQLデータベースに深く埋め込む作業が思ったよりも複雑だった」と説明した。「今から考えれば2年前と明日の2つのリリースに分けた方がよかったかもしれない。しかしこの間にリリースしたセキュリティアップデートも重要だった。次のリリースへも5年かかるとは思っていない」(バルマー氏)
さらにバルマー氏は「この5年の間にも我々はIBMやOracleに対してシェアを伸ばしてきた。今やこの2社を合わせた数より(SQL Serverが)人気が高いと思っている」と、リリースの間隔が空いたことが、同社のビジネスに影響を与えていないことを強調した。
■ 「日本はWindows LiveとOffice Liveを提供する最初のマーケットになる」
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公開中のWindows Liveベータ版
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新製品とともに注目されているのが、Googleをはじめとした対ネットサービスベンダー対策と目されているオンラインサービス「Windows Live」「Office Live」だ。
Windows LiveはWebポータルやメール、IM(Instant Messaging)、セキュリティツールなどを、Office Liveは中小企業を中心としたユーザーにExcelなどを利用した業務ツール群を、それぞれサービスとして提供するもので、広告ベースの無償提供や、サブスクリプションモデルによる課金を予定している。すでにWindows Liveの一部がベータ版として公開されており、Office Liveも2006年初旬より順次公開される予定だ。
会見に同席した日本法人のマイクロソフト代表執行役社長ダレン・ヒューストン氏は「日本は(米国と並んで)Windows LiveとOffice Liveを提供する最初のマーケットになるだろう」と語った。
Googleなどは広告収入によるビジネスモデルで先行しているが、パッケージソフトウェアの売上を収入の軸としてきたMicrosoftにとってこれらのサービス開始は大きな転換点となる。「我々は大きな賭けをしなければならない」(バルマー氏)。
バルマー氏は2つのサービスについて、企業とコンシューマ両方のユーザーに拡大していくとともに、オンライン広告が同社に大きな収入をもたらすことになると語った。その際、既存のWindowsやOfficeとはバッティングせず「今あるものを補完し追加するもの」と位置づけ、オンラインサービスの提供によってパッケージソフトウェアの売上に影響は与えないとした。
■ 「優秀な新卒学生を、“マイクロソフトジャパン”へ」
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マイクロソフト 代表執行役社長 ダレン・ヒューストン氏
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バルマー氏に続きヒューストン氏は、日本市場における3カ年事業戦略「PLAN-J」の進ちょく状況や、今後の新製品展開を発表した。
PLAN-Jは、1.国内の投資の拡大、2.企業・コンシューマ双方における技術革新、3.政府・教育機関・産業界とのパートナーシップ、を軸とした戦略で、優秀な人材の確保やパートナー企業の成功、顧客満足度の向上などを目的としている。
ヒューストン氏は、PLAN-Jの展開開始後の約100日間に発表された数々の成果を披露し、計画が順調に進んでいることをアピールした。また、人材確保について「サイエンスやビジネス分野を学んだ優秀な新卒学生を、国内・海外から“マイクロソフトジャパン”に受け入れたい」と述べ、積極的な姿勢を見せた。
また、政府調達においてLinuxが優先され、Windowsが選択肢から外されつつあるという一部報道を指摘し、自身が担当者と話をした上で「彼らはそう思ってないようだ、中立性が重要だと考えている」との感触を示し、政府・自治体への展開を強化していく考えを述べた。
■ 2006年中にERP・CRMの業務アプリケーションを発売
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今後発表を予定している製品・サービス群
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今後の新製品展開については、SQL Server 2005の発売やWindows Liveの国内展開とともに、業務アプリケーションパッケージブランド「Microsoft Dynamics」を2006年度中に国内で展開する考えを明らかにした。
Dynamicsは、同社が今後順次提供を予定している一連の業務アプリケーションを総称したブランド。米国では買収により入手したものを含めいくつものアプリケーションがDynamicsブランドで発表されている。「日本以外のほとんどの地区で(Dynamicsが)発表されている」と語るヒューストン氏は、まずCRMを2006年前半に、ERPを2006年中に発売すると述べた。
また、携帯電話市場に向けウィルコムの「W-ZERO3」を皮切りにWindows Mobileを展開していくほか、ゲーム機「XBOX 360」を12月10日より発売し、これに付随した「XBOX Live」をWindows Liveと並べて同社のソフトウェアサービス戦略の一翼を担うとした。
このほか「Windows Vista」「Office 12」「Windows Server 2003 R2」について、今後18カ月以内にリリースするとした。
■ Windowsと日本法人マイクロソフト誕生20周年記念パッケージ
2005年はWindowsが誕生(1985年11月18日に米国でWindows 1.0が発売)してから20周年であると同時に、日本法人のマイクロソフトが設立してから20年目でもある。マイクロソフトはこれを記念し、日本の独自企画としてWindows XP Professionalアップグレードの記念パッケージを発表した。9999本限定で12月9日より発売、すでに予約受付を開始している。価格は28,140円。
これはWindows XP Home EditionからProfessionalへのアップグレードに加えて、Windows 95以降のレプリカCDやペーパークラフト、20周年記念切手、ステッカーなどをパッケージしたものだ。
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20周年記念パッケージに含まれる記念品など
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「9999本限定なのでお早めに」とバルマー氏
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バルマー氏は「日本は世界第2位の市場であり、日本法人はMicrosoftにおける世界で初めての子会社。設立当初からMicrosoftの成功の鍵を握っていた」と日本市場の重要性を強調し、さらに「いろいろなテクニカルイノベーションやアイデアが日本から生まれた。ソフトウェアによるパソコン革命に大きな役割を果たした」と述べ、市場だけでなく、日本のマイクロソフトからソフトウェアにおけるイノベーションが起こる期待を示した。
■ URL
マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/japan/
プレスリリース(20周年記念パッケージ)
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2500
Windows Live
http://www.live.com/
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( 朝夷 剛士 )
2005/11/16 18:01
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