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富士通、東証システムトラブルの業績への影響は皆無

2005年度第3四半期連結決算は増収増益に

小倉正道取締役専務
 富士通株式会社は1月31日、2005年度第3四半期の連結決算を発表した。

 売上高は、前年同期比7.5%増の1兆1214億円、営業利益は62.3%増の125億円、経常利益は前年同期のマイナス142億円の赤字から、34億円の黒字に転換。当期純利益は前年同期のマイナス95億円の赤字から、33億円の黒字となった。

 なお、同社では今年度から会計方針を変更しており、国内事業に関しては、プロジェクトや案件の開発状況にあわせて売上高、利益を計上する進行基準方式を採用。さらに、英国子会社の未認識年金債務の負債計上や、英国の富士通サービスにおけるIFRSへの移行などが影響している。これらの影響分として、第3四半期には売上高で263億円のプラス、営業利益で89億円のプラスがあり、この影響を除いた第3四半期の売上高は、前年同期比7.0%増となる。

 事業セグメント別の売上高では、テクノロジーソリューションが、売上高が前年同期比9.1%増の6693億円、営業利益が26.5%減の90億円となった。

 そのうち、サーバー、モバイルシステム、光伝送システムなどのシステムプラットフォームは、売上高が前年同期比0.3%増の1496億円、営業利益は、前年同期の17億円の黒字から、一転してマイナス102億円の赤字となった。

 「海外におけるサーバーの拡販費用の増加、価格競争の激化、さらに、国内販売の伸び悩み、サーバー、携帯電話基地局、光伝送システムといった分野における次世代機種への開発費用の前倒しなどが影響している」(富士通・小倉正道取締役専務)という。

 また、アウトソーシングやSI、保守などが含まれるサービスは、売上高が前年同期比12.0%増の5196億円、営業利益は83.0%増の192億円と、テクノロジーソリューション事業を支えることになった。この数値には、国内進行基準の採用によるプラス効果があり、これを除いた売上高成長率は6.3%増となるが、「英国におけるアウトソーシング事業の好調、国内における収益性の高いプロジェクトの推進などの要素がプラス要素となっている」(小倉取締役専務)とした。


 SI、サービス事業においては、不採算プロジェクトの問題が徐々に整理されており、その成果が出始めていることが見逃せないだろう。

 「営業とSEの一体化組織への移行や、獲得したSIプロジェクトの監視体制の徹底、営業の責任範囲を売上高でなく損益にまで広げたこと、さらに、SIアシュアランス本部によって、1億円以上の案件についてはすべて審査を行い、進ちょく管理を行うといったことが徹底されてきている。これまでは四半期ごとに、20億円から30億円程度の不採算案件があると見ていたが、第3四半期は10億円程度で収まっており、確実に成果があがっている。今後は、開発の効率化を進める考えで、システムを一から作るのではなく、モジュール化、パッケージ利用、SDASの利用といった生産効率の向上に取り組みたい」とした。

 パソコンをはじめとするユビキタスプロダクトソリューションのセグメントでは、売上高が前年同期比5.9%増の2549億円、営業利益は26.7%増の59億円となった。

 同セグメントのうち、パソコンおよび携帯電話の売上高が3.5%増の1785億円、HDDの売上高が15.4%増の730億円となった。

 「国内のパソコン事業は、競争が厳しく、円安の進行で部材調達コストが上昇するといった問題があったが、2006年春モデルを2005年年末に前倒しで投入したことで物量が増加。さらに、物づくり体質の強化、品質強化などへの取り組みもあり、増益となった」とした。

 パソコン事業は、前年度第3四半期に続き、今四半期も黒字。携帯電話は前年同期の赤字から今期は黒字になったという。

 デバイスソリューションは、売上高が前年同期比0.1%減の1826億円、営業利益は91億円増加の94億円となった。売上高は微減となっているが、フラットパネルディスプレイの事業の譲渡を除いた継続事業ベースでは前年同期比12.8%の増収になるという。

 LSI事業において、携帯電話向けやデジタル家電向けの出荷が好調で、売上高は前年同期比10.1%増の1177億円。5四半期ぶりに増収に転じたという。特に海外が2けた増の伸び率を達成している。

 また、営業利益では電子部品が引き続き好調に推移したこと、事業売却によってフラットパネルの赤字がなくなったことがプラスに影響した。ただし、2005年9月から量産稼働した三重工場の300mm新棟の立ち上げ費用が利益の減少要因となっている。


 一方、小倉取締役専務は、東証のシステムトラブルに関する業績への影響に触れ、「業績や営業活動に大きな影響を与えたという認識はない。新規顧客に関しては、契約をどうするかといった問題もなくはないが、個別の顧客に対しては、ご理解をいただくといった努力を営業が行っている。運用管理までが、経営基盤のひとつであるということを認識していただくいい機会でもあったといえる。むしろ当社としては、この教訓をプラスの方に持っていきたいと考えており、運用管理を含めた提案を個別の顧客に対して、きちっと行っていくことを徹底したい」と話した。

 なお、同社では、単独の通期業績予想を修正した。

 売上高は2兆8300億円のままだが、営業利益は450億円から300億円へ、当期純利益は300億円から150億円へと下方修正した。経常利益は10月公表時の650億円のまま。一方、連結業績見通しに関しての変更はない。

 単独業績の下方修正の理由は、米AMD社とのフラッシュメモリ事業の合弁会社であるスパンション社が、12月に米NASDAQ市場に上場したことに関連し、上場時の時価が単独の帳簿価額を下回ったことで、株式評価損を計上したことになる。

 単独決算への影響額は特別損失で392億円、当期純利益では233億円。なお、連結決算では、持分法変動損失として84億円を特別損失に計上した。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  2005年度(平成17年度) 第3四半期及び9ヶ月累計連結決算概要
  http://pr.fujitsu.com/jp/ir/finance/2005q3/

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( 大河原 克行 )
2006/01/31 20:46

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