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日本IBM大歳社長、今後3年間の社長続投に意欲


大歳卓麻社長
 日本アイ・ビー・エム株式会社の大歳卓麻社長は2月2日、社長会見を行い、今年から3カ年にわたって実施する中期戦略「Challenge 2008」について触れ、「この計画は、私と、それぞれの施策の責任者に任命される5人の役員が、今後3年間にわたって責任を持って推進するものだ。各責任者にも3年間やってほしいといっている」とし、事実上、社長続投宣言とも受け取れる発言をした。

 昨年夏に、米国本社から副社長としてトッド・カトーリー氏が就任。今年は、大歳社長の社長在任期間が、前任の北城恪太郎会長の社長在任期間と同じ6年目に突入するなど、業界内では、大歳社長の去就が注目されていた。

 冒頭の回答は、記者との質疑応答のなかで、「この中期戦略の策定は、今後3年間を大歳体制でいくと理解していいのか」との質問に対して、大歳社長が答えたもの。さらに、将来にわたって、外国人社長登用の可能性はあるのかとの質問に対しては、「製品、サービスおよびブランド管理といった点では外国人社長でも大丈夫だろう。しかし、日本IBMは広い範囲のビジネスを行っており、顧客との接点という役割もある。顧客との接点では、日本人の方がコミュニケーションを取りやすい。顧客もその方が安心するだろう。当社は最も信頼されるパートナーを目指しており、その点でも顧客とのコミュニケーションは大切だ。この点では日本人の方がいいと私個人は思っているし、米国本社もそう思っているだろう」とした。

 だが、「大和研究所や顧客接点以外のところを、日本法人以外が担当するということも考えられなくはない。ここは緊張感を持って取り組むべき課題である。製造業においては、物づくりが海外に出ていくという動きもあるが、その一方で日本に残しておいた方がいいという判断によって残している部分もある。ホワイトカラーも同じで、外に出した方がいいものと、なかに置いていた方がいいものとがある。今後はそうした識別をしていくことになるだろう」とした。


 大歳社長は、会見のなかで、2005年の成果について触れ、「2005年は、オンデマンド・ビジネスの実践を掲げ、これが浸透した1年であった」と位置づけ、オンデマンド・ビジネスの核となる「BTO(ビジネス・トランスフォーメーション・アウトソーシング)」が、オムロン、三洋電機、自動車リサイクルセンター、パイオニアなどで相次ぎ採用された例のほか、BTOセンターを沖縄のほか、幕張、大連、ブリスベンに設置した例をあげた。また、先進的なオンデマンド事例が増加していると指摘し、徳島県立中央病院における異なる病院間での医療データベースの共有利用の例や、肥後銀行における総合融資システムの増加といった事例を紹介した。

 一方、レノボへのPC事業の売却と戦略的提携によって、両社の強みを生かすことができる新たなビジネスモデルが短期間に創出できたことを強調。「これは単に事業売却というだけでなく、IBMビジネスコンサルティングサービスが持つCBM(コンポーネント・ビジネス・モデル)を活用して、業務変革と、発表から実行まで半年間という短期間での業務移行が完了した成功事例のひとつとなっている」とした。

 加えて、大和研究所の変革も2005年の大きな成果だったとし、「ThinkPadやソフトウェアの開発拠点という位置づけから、最先端技術によるイノベーションの開発拠点へと移行。デジタルコンシューマ・エレクトロニクスの開発支援や、オートノミック・コンピュータ・テクノロジー・センターやディープコンピューティング開発研究所による最先端技術を活用した顧客支援、イノベーション支援の体制が整った」と話した。

 そのほか、ワークスタイルの変革として、オンデマンド・ワークスタイルを全営業部門へ導入したことにより、オフィスで利用する紙の削減や、必要に応じてオフィスの環境を変化させる使い方の実践が開始されたことを報告。加えて、ダイバーシティへの取り組みとして、女性、シニア、外国人の登用を積極化した事例などを説明した。


Challenge 2008

各種施策によりお客様のイノベーションを支援
 一方、2006年以降の取り組みとして、日本IBM独自の中期戦略として策定した「Challenge 2008」について説明。「Challenge 2008では、日本IBMが、お客様にイノベーションによって成功していただくための最も信頼されるパートナーになることを目指し、5つの施策を展開する」と話した。

 Challenge 2008における5つの施策として、1)お客様およびパートナー様の新規開拓、2)高付加価値ビジネスへの注力、3)量販ビジネスの効率化、4)グローバルのベストプラクティス活用、5)グローバルに活躍できる人材の育成-をあげ、それぞれに執行役員を責任者として任命。早期に具体的な数値目標などを策定し、実行に移すことになる。責任者には、三浦浩常務執行役員、遠藤隆雄常務執行役員、下野雅承常務執行役員、橋本孝之常務執行役員、渡辺朱美執行役員が、いずれかの施策担当として就任することになる。

 お客様およびパートナー様の新規開拓では、IBMがカバーできていない中堅・中小企業領域へのアプローチや、既存顧客のなかでもBTO領域へと提案を広げるなどの、顧客あたりの事業対象の拡大も想定している。

 高付加価値ビジネスへの注力では、BTOやエンジニアリングテクノロジーサービスのほか、ITインフラ部分だけでなく、ビジネスコンサルティングのレイヤーにも力を注ぐ姿勢を示す。

 量販ビジネスの効率化は、IAサーバーにおけるボリューム販売の仕組みづくりと効率化が課題で、ダイワボウ情報システムや大塚商会などのディストリビュータやSIerとの連携強化も鍵となる。

 グローバルのベストプラクティス活用は、IBMがグローバルに所有している事例や知的資産を、リアルタイムで活用できる体制を作るほか、日本の高い品質要求に応えた事例や技術を全世界へ発信していく体制づくりが掲げられている。

 グローバルに活躍できる人材の育成としては、昨年は幹部8人だけに限定されていた海外研修を、「今年は10倍以上に増やす。新入社員を含めて80人は研修に出したい」としたほか、「一時期は、200人規模の日本IBM社員が米国本社などで仕事をしていたが、いまは50人程度。これをもっと増やしたい。また、IBMの主要部門や主要な機能部分に配置される人材を増やしたい」とした。

 こうした中期戦略の各種施策を推進するための体制として、新たな組織を設置したことも明らかにした。

 R&Dイノベーション事業部を製造業向けの営業部門内に新設し、製造業の顧客のイノベーションのためのパートナーシップを図る。また、エレクトロニクスイノベーションセンターを大和研究所の東京基礎研究所内に新設。電機業界と研究所レベルでのコラボレーションを図る体制を構築する。

 「IBMビジネスコンサルティングサービスのR&Dイノベーション・マネジメント・コンサルティングサービスと、IBMが持つソフト開発プラットフォーム、組み込みソフトおよびサービス、ハードウェア製品との組み合わせとともに、大和研究所をはじめとしたグローバルな研究開発ノウハウを提供することになる」としている。

 「Challenge 2008を通じて、日本IBM自身もイノベーションに取り組んでいく企業として成長を遂げたい」とした。


R&Dイノベーション事業部を新設 エレクトロニクス・イノベーション・センターを新設


URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  プレスリリース
  http://www-06.ibm.com/jp/press/20060202002.html
  http://www-06.ibm.com/jp/press/20060202003.html


( 大河原 克行 )
2006/02/02 17:19

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