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「世界の通話分数の40%を手がける」米Sonusが切り拓く、xSP向け長距離VoIP市場


 日本ではなじみがあるとはいいにくいが、今成長し続けるVoIP市場において、特にサービスプロバイダ向けに、地道に長距離ソリューションを提供し続けるベンダがある。本社を米国マサチューセッツに構える米Sonus Networks(以下、Sonus)がそれだ。なじみ深くはないといっても、1997年に設立した後、VoIPゲートウェイ「GSX9000」といった主力製品はすでに、ワールドワイドでも日本でも大手の通信事業者たちが導入しているから、この表現は的を射ていないのかもしれない。

 具体的にはBell SouthやAOL、Quest、AT&T、Verizonなどのほか、日本でもNTTコミュニケーションズはじめフュージョン・コミュニケーションズ、ソフトバンクBB、ウィルコムなど多数のキャリア/サービスプロバイダらが名を連ねている。今回は、こうした顧客を持ち、順調にビジネスを展開しているというSonusの近況を、このほど来日した社長兼COOのバート・ノティーニ氏に聞いた。


サービススピリットの根源は、選ばれた人材が生み出す“確かな技術”

Sonusの社長兼COO、バート・ノティーニ氏(右)と、日本ソナスの代表取締役、大島貴之(左)
 Sonusは、限りなく技術にこだわるベンダだという。そうした面では、華々しいベンダが名を連ねるネットワーク業界においては、少々地味な企業イメージを受ける。しかしノティーニ氏は「Sonusは最初から、サービスプロバイダ向けの確かな技術をもとにした、大規模VoIPネットワークの構築支援に特化していた」と明確な企業フィロソフィを主張する。このためには強力な人材が不可欠であり、ネットワークやテレコム、デジタルシグナルプロセシングの各分野から卓越した技術者達を結集させ、ハイパワーな製品を開発し続けてきたのである。

 Sonusのビジネスは、従来の回線交換機を回収してIPボードを搭載しVoIP化させたり、あるいは一般企業も相手にしたり、といった他ベンダのそれとは根本的に異なるという。そのソリューションとは「キャリア/xSP向けに特化した上で、ハードウェアであるスイッチの一部を、ソフトウェアプラットフォームに組み込んで、スイッチアーキテクチャをディストリビュートしている」とノティーニ氏はいう。

 特に、“キャリアグレード”と“次世代型”は同社が最もフォーカスする2大キーワードだ。つまり、キャリアグレードだからこそ信頼性や拡張性、可用性などを重視。同社の最重点製品「GSX9000」などはシェルフ1台で16スロット(インターフェイス用スロットは14)を備え、288~2万回線のサーキット側電話回線をサポートする。加えて最大9台のシェルフを連結させれば1つのシステムとして使用もでき、最大18万回線まで拡張可能なスケーラビリティを備える。

 それでいて、顧客の要望をふまえ、音声サービスに必要なトラフィック管理やふくそう制御など従来の回線交換機における機能も保有しているのである。また業界標準であるIMS(IP Multimedia Subsystem)アーキテクチャに準拠させており、ケーブルはじめxDSL、Ethernetなどの有線、あるいはCDMA、2GSM、3GSM、WiMAX、Wi-Fiなどのワイヤレス、いずれのネットワークを介してもサービスを提供できるし、後で顧客がIMSに完全対応させたいときでも、ソフトウェアをアップグレードするだけですむ。これが、次世代対応型という意味だ。


日本市場にも定着させたい“Sonus=技術者集団”イメージ

 同社の日本法人、日本ソナス・ネットワークス株式会社(以下、日本ソナス)は2001年に設立したが、米国でそうであるように日本でも、優秀な技術者の確保には最重点をおいてビジネスしているという。大島貴之代表取締役は「最高の製品と最高のサービスが両輪として動いていくことが不可欠。そのためには技術が果たす役割が大きく、現社員40名中の80%以上が技術者であり、今後もさらに増やし続ける。この意味で日本ソナスを、優秀な技術者集団と評価していただけるとありがたい」と願っている。ちなみにワールドワイドにおけるSonusは、社員数630人(2005年9月現在)であり、うち85%が技術者、さらにその50%が開発に携わっている。

 また国内でのビジネスも順調で、設立当初から、フュージョン・コミュニケーションズのように次世代ネットワークを構築して新しいサービスを行うことを目指す顧客を擁している。特に、VoIPゲートウェイにフォーカスした日本市場でみると、シェア62%と、同16%の2位以下を引き離し、さらに高密度ゲートウェイでは80%シェアにもなっている(Infornetics及びSynergy Research Group調べ)。また、日商エレクトロニクスをはじめ住友、コミューチュアらと販売契約を結び、パートナー関係を維持している。


ワールドワイドで導入進む長距離ソリューションに確かな手応え

主力製品の「GSX9000」
 Sonusでは、VoIP環境で自社ソリューションがどれほど貢献しているかの目安として、通話分数をもって市場にアピールしている。さきごろ、2005年度第4四半期末までの通話分数は170億分以上を達成したと発表した。このことは、業績も対前年比70%の成長をしており、ひいては世界のVoIP通話分数のおよそ40%がSonusのソリューションで実行されたことをも物語っている(iLocus調べ)。

 もともとVoIPは、コスト削減目的で導入されていたが、いまではサービスプロバイダなどの新たな収益獲得源という位置付けになっている。「現在、ワールドワイドでみた長距離通信トラフィックは、いまだ13%程度しかVoIP環境にはない。しかも、従来の回線交換機からVoIPに急速に切り替わりつつあることも手伝って、ビジネスチャンスは大いに期待できる」とノティーニ氏は明るい見通しをたてている。その一例がVoBB(Voice over Broadband)だ。VoBBは周知のように、特に日本での成長が著しいが、北米でも加入者数が2005年度第3四半期に約40%に増大、350万人に達したという。いわば世界のアクセスネットワークは、VoBBに向けて着実に移行しつつあるといってよさそうだ。

 そんな中同社では「無線アクセスによるVoIP活用は、注目のソリューション」とみている。特に無線アクセスはここ数年、有線アクセスを上回っており、このことは「とりもなおさず、有線と無線の統合サービスに対するニーズの増大を示すものでもある」という。Sonusではこれを、IMSに準拠し有線と無線を統合したオールIP環境「IMX Application Platform」で提供する。これにより各サービスプロバイダは、従来よりもアプリケーション開発速度を早めることができ、収益確保のチャンスが生まれてくるというわけだ。

 またSonusの2006年フォーカスポイントは、有線や無線を問わず急成長し続けるVoIPのサポート力をさらに加速させることにある。また革新的なIP技術を開発し続けるために、アクセス回線事業部門を開設する。自力でオリジナルの技術を育んできた企業の底力は、ネットワーク業界の歴史からもはっきりとうかがい知ることができる。限りなく技術にこだわるSonusの今後が楽しみだ。



URL
  米Sonus Networks
  http://www.sonusnet.com/


( 真実井 宣崇 )
2006/02/16 11:29

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