Enterprise Watch
最新ニュース

「SOA導入の最大のメリットはビジネスの俊敏性を実現すること」-米Forrester


 IT関連調査会社の米Forrester Researchは2月23日、SOA(Service-oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)に関するプレス向けセミナーを開催した。

 複雑化するIT環境を統合する考え方として、SOAに対する注目度が高まりつつある一方で、現場ユーザーからは「定義が不明」「従来の概念との違いが不明確」「移行のプロセスや連携の確実性が見えない」といった声が多く聞かれるなど、まだSOAの認識は深まっていないのが現状。

 今回のセミナーでは、こうした実状を踏まえ、米Forrester Research ヴァイスプレジデントのジョン・ライマー氏がSOAの導入事例や評価結果を交えながら、SOA導入時の課題などについて説明した。


米Forrester Research ヴァイスプレジデントのジョン・ライマー氏
 まずライマー氏はSOAの定義について、「SOAはビジネス環境の変化に合わせ、すばやく柔軟にITシステムを変えられる次世代のプラットフォーム。現時点では、Webサービスが最もSOAに近いアーキテクチャである」とした。

 SOAの導入事例としては、金融サービス業のLarge financial institution社の事例を紹介。同社では、顧客情報や預金情報、保険サービスなどを統合管理できる社員向けアプリケーションの開発でSOAを導入。開発当初はXMLを利用したが、途中からSOAPに移行してシステムを構築したという。

 また、チューリッヒ空港の空港管理アプリケーションの統合においてSOA導入を手がけたUnique社の事例も紹介。この事例では、空港管理に使われている数多くのアプリケーションのユーザーインターフェイスを統合するためにSOAを活用。これによってコストを抑えながら迅速なアクセスが可能になったという。

 導入事例の紹介に続いては、北米・ヨーロッパの企業に実施したSOAに関するリサーチ結果について解説。ライマー氏は、「この調査から、SOAの導入は大企業から始まっていることがわかった。とくにエンタープライズの戦略があり、コミットレベルの深い企業ほどSOAの導入が進んでいる。SOA導入後に成長を見込んでいる企業も増えてきている。SOAの利用形態としては、社内で利用している企業が大半を占め、カスタマーやパートナーなど外部とのシステムで使われているケースは少なかった」と分析した。

 SOA導入に当たって企業が抱えている大きな課題として、「SOA導入を社内でいかに正当化できるか」という点を挙げ、これについて、「SOA導入のメリットはIT部門であればわかりやすいが、営業部門や経営陣にはなかなか理解されにくい。SOAのプロジェクトを立ち上げ、SOA導入による成果を社内に示す必要がある。具体的なポイントとしては、アプリケーションを安価かつ簡単に統合できる点、高価なEDIシステムをWebサービスに置換できる点を示すとともに、営業部門との関係を密にするために、ビジネス用語で対応することが大切」としている。


 SOA製品の動向については、Forrester Researchが実施したSOAニッチプロダクトの最新比較評価をもとに、AmberPoint社とActional社の2社が現在のリーディング企業であるとした。ライマー氏によると、「この2社は小規模の企業ではあるが、SOAのニッチプロダクト開発に真剣に取り組んでいる。IBMやOracle、WebMethodsもニッチプロダクトを出しているが、リーディング2社のSOA製品に比べると深い機能を備えていない」という。

 セミナーのまとめとしてライマー氏は、これらの導入事例、調査結果、市場環境を総合し、「企業にとってSOA導入の最大のメリットはビジネスの俊敏性を実現することである」と指摘。SOAの全体像にも触れ、「SOAは、デジタルビジネスアーキテクチャ実現への第一歩と考えている。その道程は10年はかかると思うが、将来に大きな価値がもたらされるだろう」と語った。

 最後に、SOA導入を希望する企業に向けて3つのポイントをアドバイスした。まず1つ目は、「SOAで実現するサービスはビジネスプロセス、タスクに対応すること」、2つ目は「SOA導入にあたってはアプリケーションシナリオを策定し、システムを作り直すことはせず、小規模からスタートして拡張していくこと」、そして3つ目は「IT部門と営業部門が深くかかわること」だとしている。



URL
  米Forrester Research
  http://www.forrester.com/


( 唐沢 正和 )
2006/02/23 18:21

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.