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リコー、中期経営計画で営業利益率10%に意欲


桜井正光社長
 株式会社リコーは3月2日、現在進行している2007年度を最終年度とする第15次中期経営計画の進ちょく状況になどについて説明会を行った。

 同中期経営計画では、2007年度に売上高で2兆3000億円、営業利益は2350億円、営業利益率は10.2%、当期純利益は1370億円をゴールに掲げており、2004年度実績に対して、売上高で約5000億円増、営業利益は約1000億円増、当期純利益では約500億円増という強気の成長戦略となっている。

 その点でも初年度となる2005年度の業績が、中期計画の行方を大きく左右することになると見られていたが、先ごろ、通期見通しの下方修正を行うなど、その進ちょくについても厳しい見方が出ていた。

 リコーの桜井正光社長は、「たびたびの修正に関しては大変申し訳なく思っている」と前置きし、「修正の理由としては、2005年秋以降の新製品投入ラッシュに向けた販売、サービス体制の確立の準備や、海老名への開発拠点の統合、本社移転費用といった経費の増加がある。トータル原価の低減やソリューションを中心とした高付加価値製品の提供に向けた準備は着実に進んでいるが、その成果ができるまでにタイムディレイが生じていることも影響した」と説明した。


成長戦略の構造 成長戦略の展開

MFPの事業戦略
 今回の説明会では、成長戦略のひとつめの柱として掲げているオフィス向けの事業の強化に関して、「MFP(マルチファンクションプリンタ)をダントツの事業として、収益確保のためのエンジンとする」ことを強調したほか、「レーザープリンターおよびジェルジェットプリンタは成長の核として、この分野に対して積極的に投資をしていく」(桜井社長)ことを明らかにした。

 なかでも、MFPでは、2006年度に向けて新世代カラー複合機と呼ぶ製品群をフルラインアップする考えを示し、ハイエンドモデルとローエンドモデルの双方に製品レンジを広げていくことを明らかにした。

 「ここでいう新世代とは、画質や高速性といった基本性能の大幅な向上に加え、使いやすさを追求した人にやさしい製品であること、省エネなどに対応した地球にやさしい製品であること、そして、セキュリティを強化し、ソリューションとして提供できるという要素を実現した製品を指す。まだ一部しか発表できていないが、引き続き製品を投入していく」と話した。

 また、ジェルジェットプリンタに関しては、「2004年4月に、ビジネスカラーという新たな領域を創造する製品として投入したが、まだ利益を出す段階にはきていない。だが、2006年度に投入する製品では、高画質、高速、コストパフォーマンスの点で優れたものを投入でき、ランニングコストで収益があげられるようになる。中期経営計画の最中には、利益が出る事業構造にすることができる」と、同事業の収益体質への転換に自信を見せた。

 また、成長戦略の2つめの柱として掲げている産業分野においては、選択と集中の徹底を図ることを明確化。現在、同社の5つのカンパニー(電子デバイス、サーマル、電装ユニット、光学ユニット、パーソナルマルチメディア)ごとに、成長領域を吟味し、集中的な投資を行う姿勢を見せた。

 一方、これらを支える技術戦略として、キーパーツの内部開発および内製化、試作品を作らない「作らずに創る」方式の定着、消費地に近いところで生産するリコー式生産方式の確立と世界展開、装備および設備の内製技術の強化をあげた。

 「これまでのリコーの歴史においても、トナーや感光体を自社で開発し、製造してきたことが他社との差別化につながっている。リコーにおいてキーパーツとはなにかというものを選定しており、その分野で他社との差別化を図る」(桜井社長)という。


2005年度の業績見通し
 2005年度の見通しについては、1月30日に下方修正を発表した時点と変わりがなく、売上高は1兆9100億円、営業利益は1530億円(営業利益率8%)、当期純利益は970億円。

 2006年度の業績予想に関しては、「2005年度の通期業績を発表する4月末に明らかにしたい」としたものの、「ここ数年取り組んできた体制や拠点の整備、2005年に投入した新製品投入の効果が、2006年度には必ず出てくると確信している」と成長戦略に取り組んでいく姿勢を見せた。

 また、社長の任期に対する考え方についても質問が飛び、それに対して桜井社長は、「社長は長くやっていればいいというものでもないし、私自身もしがみつくつもりはない。社長には先取りする力とそれにあわせて組織を動かす力が必要。環境の変化が激しいため、先取りするのはどんどん難しくなる。社長の交代に関しては、私なりに判断し、さらにコーポレートガバナンスなどに照らし合わせ、適切なタイミングに適切な人と交代するのがいいと考えている」とコメントした。

 2004年から2005年にかけては、次の飛躍に向けた投資の時期というフェーズでもあり、業績の悪化や下方修正というマイナスの要素が前面に出たが、今年度下期から来年度における成長戦略に向けた桜井社長の手腕に注目が集まる。



URL
  株式会社リコー
  http://www.ricoh.co.jp/


( 大河原 克行 )
2006/03/02 16:23

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