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西野貴司マネジャー
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アクセンチュア株式会社は3月16日、仮想モバイル通信事業(Mobile Virtual Network Operator:以下、MVNO)支援サービスを日本市場向けに本格展開すると発表した。あわせて、市場参入に先駆けて実施したMVNO支援サービス利用意向に関する調査分析結果も紹介した。
MVNOは、ネットワーク部分をキャリアからレンタルし、自社ブランドで音声、データ、コンテンツ、ゲームなど独自のモバイルサービスをユーザーに提供する事業。MVNOを活用することで、キャリアにとっては新しい顧客の獲得と囲い込み、余剰帯域の有効活用など、MVNOにとっては少ない投資での携帯市場への参入、新たな商品・サービスの構築など、そしてユーザーにとってはニーズに特化したサービスの利用、低価格でのサービス利用などのメリットがある。
今回アクセンチュアでは、MVNO事業の実施を検討している企業に対し、戦略立案からアウトソーシングまでを包括的に支援するサービススキームを構築。昨年末から今年にかけて30人規模の組織体制を整え、日本市場に向けて本格的にサービス提供を開始することにした。
西野貴司マネジャーは、MVNO支援サービスを本格展開する背景について、「MVNOへの参入を希望する企業が通信インフラを借りられる選択肢が増加したことによって、昨年来から国内でもMVNOのニーズが高まってきた。また、携帯電話市場が成熟期に移行する中で、新たな収益の柱になる事業としても注目が集まりつつある。実際に、メディア/エンターテインメント、流通、電気機器、金融などさまざまな業界の有力企業がMVNO事業参入への検討を始めている」と説明した。
同社が独自に算出したMVNOの市場規模予測によると、2010年にMVNOが提供するサービスの契約者数は250~320万人規模になり、携帯電話契約者数の約2~3%を占めるという。そして、2015年には最大で約1300万契約まで成長すると予測している。さらに、西野マネジャーは「この予測をさらに上回る成長を遂げる可能性がある」とし、その要因として、1)移行時の障害解消、2)二台目市場の確立、3)デジタルデバイド層の獲得、の3点を挙げた。
具体的なMVNO支援サービスの特徴としては、「事業戦略立案からアライアンス実行まで包括した戦略構築支援」、「最短3カ月で高品質、低コストなビジネスプラットフォーム構築」「リスク・プロフィットシェアモデルによる多彩なアウトソーシング」の3つの価値を提供することで、MVNO事業の成功を支援していく。
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エグゼクティブ・パートナー 通信・ハイテク本部の武田智和氏
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エグゼクティブ・パートナー 通信・ハイテク本部の武田智和氏は、「戦略立案からアウトソーシングまで、MVNO事業をトータルで支援できるのが今回のサービスの大きなポイント。とくに、独自開発の通信業向け統合ソリューション『ACS(Accenture Communications Solution)』を活用することで、ニーズにあわせた柔軟なMVNO事業を迅速に実現できる。さらに、日本独自の通信業仕様やACSを熟知した100人を超える日本人コンサルタントを保有している点も大きな強み。MVNOへの参入を検討している企業からも高い評価を得ている」という。
MVNOとキャリアの双方をターゲットにサービスを提供していく考えで、「今年、MVNOに参入する企業の半数へのサービス提供を見込んでいる」(武田氏)とした。また、今回の支援サービスによって実現するMVNOの事業規模について武田氏は、「数十万人規模のユーザーをターゲットにしたMVNO事業がメインになるとみている。金額的には、数億円からのサービス提供になるだろう」と予測している。
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MVNOの認知度調査結果
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なお、同社では今回の本格参入に先駆けて、日本におけるMVNOサービスの利用意向を把握するため生活者調査を実施。現状の携帯電話への不満やMVNOへの期待、興味などを調査している。
これによると、生活者のMVNOに対する認知度は全年代平均で10.6%と、非常に低い現状が明らかになった。MVNOのサービス利用意向については、1)固定電話一体型、2)スポーツポータル、3)クールコンテンツ、4)小学生向け、5)株式特化、6)ビジネスマン向け、7)高級ブランド、の7つのサービスコンセプトを対象にしてニーズを確認。このなかで利用意向が最も高かったのが「固定電話一体型」で、約45%が利用への興味を示した。MVNOの提供するサービスに移行する際の障害としては、「通信・通話料が上がる」が68.7%でトップ。次いで「手数料がかかる」(63.7%)、「メールアドレスが変わる」(63.4%)、「端末料金が上がる」(54.6%)となった。
現状の携帯電話への不満については、料金が52.1%でトップ。端末の操作性(17.2%)、デザイン(13.8%)に対する不満も高かった一方で、コンテンツに対する不満は7.1%とそれほど高くなかった。
この調査結果を受け、日本でのMVNO市場拡大のポイントとして「コンテンツでの差別化だけでは難しいと感じている。それよりも携帯端末の操作性やデザインが重視されていることから、既存のキャリア以上にユーザーの価値にあったスタイリッシュな端末を実現し、そこに付加価値として特化したコンテンツを提供できればMVNOのマーケットは立ち上がってくるはず」(武田氏)と指摘した。
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MVNOが提供するサービスの利用意向
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MVNOの市場規模予測
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MVNO支援サービスが提供する3つの価値
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■ URL
アクセンチュア株式会社
http://www.accenture.com/Countries/Japan/
( 唐沢 正和 )
2006/03/16 16:31
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