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「電力効率化が最重点課題」、インテルのエンタープライズ戦略


マーケティング本部の阿部剛士本部長
 「ITマネージャーにとって、消費電力あたりのパフォーマンスは、最も重視すべきものになっている」、インテル株式会社マーケティング本部の阿部剛士本部長は、ITシステムに対するユーザー企業の関心が、単なるパフォーマンスの追求だけではなく、消費電力にも集まっていることを改めて強調した。

 インテルは3月22日、同社のデジタル・エンタープライズ事業に関する取り組みについて説明会を行った。そのなかで、同社が強調したのが、パフォーマンスと消費電力という相反する要件を両立することの重要性であった。

 阿部本部長は、「Pentium 4の時代は、このままクライアントやサーバーを増やしていけば発電所が必要になるのか、という話もあったが、2003年に、パット・ゲルシンガー上席副社長と、イスラエルの開発チームによって、命令あたりの消費電力を大幅に削減したPentium Mを開発した。これによって、93年のPentiumに比べて、性能が2倍以上でありながらも低い消費電力を実現した。また、この考え方はCore Duoにも引き継がれており、さらに命令あたりの消費エネルギーを低減させた」と語る。

 低消費電力化においては、2つのアプローチがあるという。ひとつは、パワーマネジメントなどを含む、マイクロアーキテクチャーレベルでの対応。Pentium Mが、Baniasと呼ばれるアーキテクチャーを採用することで、低消費電力化を図ったのはその好例だ。

 現在では、Baniasのほかに、Pentium 4やXeonで採用されているNetBurstアーキテクチャー、そして、次世代アーキテクチャーとして、インテルCoreマイクロアーキテクチャーが用意されており、同アーキテクャーによって低消費電力化にも大きな威力を発揮している。

 そして、もうひとつがプロセスそのものの改良である。今年のインテルの主力となる65nmプロセス技術は、従来の90nmプロセス技術に比べて、トランジスタパフォーマンスで20%の向上を実現しながら、スイッチング時の消費電力は30%削減しているという。

 また、サーバー向けのXeon MPの次期CPUとなるWoodcrest(開発コードネーム)は、現行のXeonプロセッサ2.8GHz(デュアルコア、2次キャッシュ2MB×2)と比べて、パフォーマンスで80%向上、消費電力で35%削減を実現。さらに、デスクトップ向けのConroe(開発コードネーム)では、Pentium Dプロセッサ950と比較して、パフォーマンスで40%の向上を図りながらも、消費電力では40%の削減を図ることになるという。

 「65nmプロセスの工場は、全世界で4つの工場が稼働している。来年には、300ミリウェハーの工場として新たに2つの工場を稼働させる予定だが、これは45nmプロセスの工場となり、低消費電力化にもさらに威力を発揮することになるだろう」(阿部本部長)と語る。


マーケティング本部デジタル・エンタープライズ統括部・平野浩介統括部長
 インテルのマーケティング本部デジタル・エンタープライズ統括部・平野浩介統括部長も、異口同音に「インテルプロセッサの進化は、電力効率化への取り組みが最重点課題であり、今後の進化のなかでも、ワットあたりの性能は必ず引き上げていく」と語る。

 平野統括部長は、その一例として、Xeon DPの今後の進化をあげる。

 Xeon DPは、最高性能を追求したパフォーマンスモデルレンジ、主力となるメインストリームボリュームレンジ、高密度サーバー(ブレードサーバー)向けのローボルテージレンジという3つの製品群を用意している。

 パフォーマンスモデルのPaxville(開発コードネーム)DPでは、135Wの消費電力となっており、Itaniumのそれを超えているという状況だ。これが第3四半期以降に投入されるWoodcrestでは新たなコアを採用することで、80Wを実現。さらに、2007年のClovertownではクアッドコアながらも120W以下に削減できるという。

 また、メインストリームボリュームでも、現在のIrwindaleの110Wだったものが、第3四半期のWoodcrestでは80W、2007年のClovertownではクアッドコアながらも、デュアルコアと同様に80Wを維持できるという。

 超高密度サーバーでは、低電圧のIrwindaleでは55Wであったものを、今年第2四半期に投入するSossamanで31Wに、下期の低電圧版のWoodcrestでは、64ビットデュアルコア化しながらも40Wとする計画だ。

 「インテルでは、ソフトウェアによる消費電力の最適化を実現するために、アプリケーションの書き方でも働きかけを行っている」と平野統括部長は語る。

 インテルが提供しているデマンド・ベース・スイッチングにより、電力を最大24%削減したり、パワー・ツール・キットの活用により、密度を最大57%向上させるといった取り組みも、低消費電力化には欠かせないものだといえよう。

 インテルでは、こうした低消費電力化と性能向上に対して、プラットフォームという観点からも取り組んでいる。

 同社では、サーバー向けのBensleyプラットフォームを発表しており、ここでは、Dempsey、Woodcrest、Clovertownという3つのCPUに対応。2006年第2四半期半ば以降には、サーバーメーカー各社から、Bensleyプラットフォームに対応したサーバーが登場することになるという。

 プラットフォーム戦略では、Xeon DPプロセッサに対応したプラットフォームにおいて、Bensleyプラットフォームのほかに、ワークステーション向けのGlidewellプラットフォームを用意。これが2008年以降に、新たなプラットフォームへと進化する。

 また、Xeon MP向けには、2006年のTrulandプラットフォームに続き、2007年には、クアッドコアのTigertonに対応したCanelandプラットフォームが用意され、NetBurst系からの進化を図る。

 そして、Itaniumも進化の過程のなかで、省電力化が追求され、2006年のMontecito、2007年のMontvaleに続き、Tukwilaを投入。TukwilaからRichfordと呼ばれる新たなプラットフォームへと移行することになる。


Xeon DPのロードマップ Bensleyプラットフォームの詳細 サーバー/ワークステーションプラットフォームのロードマップ

Averillプラットフォームの詳細
 もちろん、クライアントPCに関しても、余念がない。

 同社では、ビジネスクライアントPC向けのプラットフォームとして、Averillプラットフォームを提唱。デュアルコアプロセッサのConroe、インテルQ965およびICH8-DOのチップセット、ギガビットイーサ対応のネットワークコントローラ、および関連ソフトウェアで構成される。

 さらに、インテルバーチャライゼーションテクノロジーによるハードウェアベースの仮想化テクノロジー、クライアントPCを管理するインテルアクティブ・マネージメント・テクノロジーによって、より高度なセキュリテイ環境、効率的なシステム管理、システムパフォーマンスの向上が実現するという。

 「新たなテクノロジーによって、新たな利用形態や新たな付加価値を提供することができる」(インテル マーケティング本部エンタープライズ・プラットフォーム・マーケティング部ビジネス・クライアント・プログラムマネージャー・岡本隆志氏)と、Averillプラットフォームによる進化について語る。

 インテルでは、「エンベデッドIT」という言葉を提唱しはじめている。この考え方は、まさに、Averillプラットフォームによって実現されるものだ。

 ここでは、デュアルコア環境と、バーチャライゼーションテクノロジーを利用することで、クライアントPCを、「ユーザーOS側」と「サービスOS側」に分離。ユーザーOS側では、メールやオフィスアプリケーションといったユーザーが日常利用するアプリケーションを稼働させ、サービスOS側では、セキュリティや管理のためのツールおよびアプリケーションを稼働させ、それぞれのネットワークや実行を分離した形で、クライアントPCを管理することが可能になる。

 ユーザーOS側に障害が起こっても、管理を行うサービスOS側には影響を及ぼさないという環境が実現するのだ。

 今後、インテルでは、エンベデッドITによるクライアントPC環境の提案を行っていく考えだ。

 同社では、プロセス技術とCoreマイクロアーキテクチャー、プラットフォームフォーカスという3つの観点からアプローチを行い、ソリューション全体をとらえたデジタルエンタープライズの提案を進めていく姿勢を示す。

 インテルのプラットフォーム戦略は、明確なロードマップが敷かれ、その上での新たな利用提案が行われようとしている。

 デュアルコア、クアッドコアによる高性能化と、プロセスおよびアーキテクチャーによる進化、そして、低消費電力によって、大きな価値をユーザー企業に与えることになりそうだ。



URL
  インテル株式会社
  http://www.intel.co.jp/


( 大河原 克行 )
2006/03/22 19:53

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