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インテル、2006年は消費電力の低減にフォーカス

インテル・デベロッパー・フォーラム Japan 2006 基調講演

アナンド・チャンドラシーカ上席副社長
 インテル株式会社は4月6日、同社の最新技術を開発者向けに公開する「インテル・デベロッパー・フォーラム Japan 2006」を開催、米Intel上席副社長兼セールス&マーケティング統括本部長のアナンド・チャンドラシーカ氏が基調講演を行った。

 基調講演のテーマは「インテル・ビジョン」。インテルは、今年1月に新しい企業ブランド戦略を発表し、その後、次々と新たなプラットフォーム技術やプロセッサ、次世代マイクロアーキテクチャーの発表を行ってきた。同氏の基調講演は、これら最新の動向を紹介するとともに、2006年のインテルの目指す方向性を示すものとなった。

 チャンドラシーカ氏は、「2005年は組織をプラットフォーム中心に再編し、モバイル、デジタルホーム、デジタルエンタープライズ、デジタルヘルスの4つの市場分野に注力してきた。2006年はすべてのプラットフォームにおいてIT機器の電力効率が重要になると考え、消費電力低減の問題に本格的に取り組んでいく」方針を述べた。


 その取り組みの1つがプロセッサのマルチコア化。チャンドラシーカ氏はマルチコア化を進める狙いについて、「1993年に発表したPentiumから2005年のPentium 4にかけて、パフォーマンスは4倍になった一方で、1命令あたりの消費電力は上がり続けていた。この、性能向上にともなう電力効率低下のジレンマを解消できるのがマルチコア・テクノロジーである」と説明した。

 チャンドラシーカ氏によると、プロセッサのクロックが20%上がるとパフォーマンスは13%向上する一方で消費電力は73%も増加。逆に、クロックを20%下げるとパフォーマンスは13%低下するものの、消費電力は5割近くも下がるという。そして、「これをデュアルコア化することで、パフォーマンスを73%アップしながら消費電力はわずか0.2%アップに抑えることができる」とした。

 すでにサーバー向けには、2005年からプロセッサのマルチコア化を進めており、「デュアルコア インテルXeonプロセッサ7000番台」を出荷している。「2006年は、サーバーだけでなくモバイル、デスクトップまですべての製品をマルチコア化する」考えで、2006年第3四半期にシングルコアとデュアルコアの比率が逆転し、2006年第4四半期にはデュアルコアの比率が75%近くに達すると予測している。


マルチコアにより優れた電力効率を実現 インテルプロセッサにおける消費電力と演算性能の関係

 具体的なマルチコア化への取り組みとしては、1月6日にデュアルコアの「インテルCore Duoプロセッサ」を発表。3月8日には、同プロセッサの基盤となる新たなアーキテクチャー「インテルCoreマイクロアーキテクチャー」を発表している。

 この「インテルCoreマイクロアーキテクチャー」は、業界先進の65nmのプロセス技術を採用し、高い性能と優れた電力効率を備えているのが特徴。チャンドラシーカ氏は、プロセス技術による消費電力低減への取り組みについても触れ、「90nmプロセス技術に比べ、65nmプロセス技術はトランジスタ性能を20%アップしながら、スイッチング電力を30%下げられる。2007年には45nmプロセス技術の実用化を目指している。これは65nmプロセス技術よりも、さらにトランジスタ性能を20%アップし、スイッチング電力を30%低減することができる。そして、2009年をめどに32nmプロセス技術を投入できるよう研究開発を行っている」と、そのロードマップを説明した。


プロセス技術のロードマップ マルチコアへの移行予測

 また、チャンドラシーカ氏は、「マルチコア・プラットフォームの能力を最大限に引き出すために、ソフトウェアのマルチスレッド化も積極的に支援しており、その流れは確実に加速している」とした。

 最後にチャンドラシーカ氏は、消費電力の低減は業界全体で取り組むべき課題でもあることを提言。「インテルが取り組んでいるCoreマイクロアーキテクチャー、低消費電力プロセス技術、マルチスレッド・ソフトウェアといったプロセッサ中心の動きだけでは、プラットフォーム全体での省電力化は実現できない。OSやディスプレイ、ストレージなどからも消費電力低減へのアプローチが強まれば、プラットフォーム全体の電力効率はさらに高まるだろう」と訴え、「2006年は優れた電力効率性能の幕開けになる」と締めくくった。


カーク・スカウゲン副社長
 なお、チャンドラシーカ氏の基調講演を受け、副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部サーバー・プラットフォーム事業部長のカーク・スカウゲン氏による基調講演「デジタル・エンタープライズ」が行われ、インテルの企業向けプラットフォーム・ソリューションの展望が語られた。

 まずスカウゲン氏は、「2006年、インテルはプロセス技術、インテルCoreマイクロアーキテクチャー、プラットフォーム・フォーカスという3つの革新的な取り組みを一度に展開しようとしている」と述べ、ミッションクリティカルな企業環境の中で、高度な処理能力、高生産性、トータルコスト削減、低消費電力、セキュリティなど多様な要件に応えるためのインテルの取り組みについて、通信インフラストラクチャー、サーバー、クライアントの各プラットフォームに向けた最新情報を紹介した。

 通信インフラストラクチャーへの取り組みとしては、テレコム向けハードウェアの新たな標準規格「ATCA(AdvancedTCA)」への対応について説明。「ATCAプラットフォームにおけるハードウェアの選択肢が増えている」ことを背景に、3月15日に発表したATCA準拠の「Intel NetStructure MPCBL0040 シングル・ボード・コンピュータ」について、その特徴などを解説した。


 次にサーバーへの取り組みでは、Itaniumソリューションが実現する新たなミッションクリティカル・コンピューティングについて、「従来のミッションクリティカル・コンピューティング・モデルは独自のOS、ハードウェア、アーキテクチャーを使用したものだったが、Itaniumソリューションでは、Itaniumアーキテクチャーの上にハードウェアはマルチベンダーで、OSもWindows、Linux、UNIXなど10種類から選択でき、柔軟なシステム構築が可能になる。さらに、6000以上ものアプリケーションがItaniumプラットフォームに対応している」(スカウゲン氏)とした。

 Itaniumベース・システムの出荷状況については、「IDCによるとItaniumベース・サーバ-の出荷金額は2004年の14億ドルに対して2009年には66億ドルまで成長すると予測している。また、日本においても出荷が伸びており、2005年下期においてはSPARCを上回る出荷金額だった」という。


Itaniumソリューションが実現する新たなミッションクリティカル・コンピューティング Itaniumベース・システムの顧客向け出荷金額の推移

エンタープライズの仮想化ビジョン
 エンタープライズ・サーバー分野でのもう一つ大きな取り組みが、サーバーを仮想化する技術「インテル バーチャライゼーション・テクノロジー」である。スカウゲン氏は、「サーバーの仮想化によって、IT部門はインフラの合理化やシステム・リソースの利用効率の向上、TCO削減、ビジネスにおける即応性などが実現できる。2006年は仮想化をメインストリームとして展開していく」考えを示した。サーバー仮想化をサポートしたx86サーバーの出荷台数は2009年に100万台を突破すると予測している。

 また、バーチャライゼーション・テクノロジーに対応したTrulandプラットフォーム、Bensleyプラットフォームに関して、その特徴や性能強化のプランなどが紹介された。

 最後にクライアントへの取り組みとして、インテルCore Duoプロセッサに基づいたデスクトップ向けの65nmデュアルコア・プロセッサ「Conroe」について触れ、「Conroeは、Pentium Dプロセッサ950に比べてパフォーマンスが最大40%向上するとともに、消費電力についても40%削減できる」と説明した。さらに、Conroeの投入とともに、デジタルオフィス戦略を実現するプラットフォーム「インテル プロフェッショナル・ビジネス・プラットフォーム」についても強化を進めていく考えを述べた。



URL
  インテル株式会社
  http://www.intel.co.jp/
  インテル・デベロッパー・フォーラム Japan 2006
  http://www.intel.co.jp/jp/idf/


( 唐沢 正和 )
2006/04/07 00:14

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