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「セキュリティホール」の理解度はわずか1割-IPA、新たな脅威に対する意識調査を実施


IPAセキュリティセンターのセンター長、三角育生氏

意識調査アンケートの基本属性
 独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は、インターネット利用者を対象とした「情報セキュリティに関する新たな脅威に対する意識調査」を実施し、その調査結果をまとめた報告書を4月26日に発表した。これにあわせて、同調査に関するプレス向け説明会が行われ、IPAセキュリティセンターのセンター長、三角育生氏が調査結果の重点ポイントなどを説明した。

 今回の調査は、スパイウェアやフィッシングなどの新たな脅威に対する認知度、理解度、対策の実施状況などの実態を把握し、IPAが行う情報セキュリティに関する対策情報の発信や、普及啓発活動などに役立てることを目的に実施したもの。調査期間は2月3日、4日の2日間。15歳以上のPCインターネット利用者を対象にWebアンケートを行い、5,142人の有効回答数を得た。そのうち男性が48.5%、女性51.1%、平均年齢は35.2歳だった。


情報セキュリティに関する言葉の認知度

情報セキュリティ被害経験の有無

情報セキュリティに関する事象の理解度
 情報セキュリティに関する言葉の認知度では、「ウイルス感染」が最も高く98.7%。「スパムメール」、「スパイウェア」もそれぞれ8割前後と言葉の認知度は高かった。「ボット」(12.8%)と「ファーミング」(10.4%)はともに認知度が低い結果となった。

 情報セキュリティの被害経験については、「ウイルス感染」が33.3%でトップ、以下「スパイウェア」11.3%、「個人情報の流出」3.7%、「ワンクリック詐欺」3.1%、「フィッシング」0.7%と続いた。ウイルス感染では3人に1人、スパイウェアでも9人に1人の割合で被害経験があり、一般ユーザーでも多くの被害が発生していることがわかった。

 また、今回のアンケートでは、情報セキュリティに関する各事象の理解度についても調査を行っているのが特徴。三角センター長は、「今回のアンケートの調査対象は一般のインターネット利用者。そのため、従来のように単純にセキュリティに関する言葉の認知度を聞くだけでなく、それぞれの言葉に関連する簡単な○×クイズを3問出題し、その事象が正しく理解されているかどうかを確認した」という。

 この結果、「ウイルス感染」については約6割がその事象を正しく理解していたが、「スパムメール」、「スパイウェア」については言葉としての認知度が8割前後あったにもかかわらず、事象を正しく理解している回答者は約3割にとどまった。「フィッシング」も74.5%の認知度に対し、約15%という低い理解度だった。

 さらに、「セキュリティホール(脆弱性)」については、言葉の認知度が5割程度、事象の理解度に至っては、わずか1割程度しかないのが現状で、「セキュリティ関連の対策情報としてごく普通に使われている用語が、一般ユーザーにはあまり浸透していないことがわかった。これからは、情報セキュリティ関連の用語をもっとわかりやすくしていく必要がある」(三角センター長)と指摘した。


認知者全体と性別でみた情報セキュリティに関する事象への脅威
 情報セキュリティに関する事象への脅威に関する調査では、ほとんどの事象において9割近くまたはそれ以上の人が「脅威に感じている」と回答したが、「スパムメール」については75.1%と比較的低かった。年代別にみると、どの事象でも、脅威と思う人の割合は「10代」が最も低い結果となった。

 情報セキュリティ対策の実施状況を年代別に見ても、すべての項目で10代の実施状況が低く、「10代のインターネットユーザーは、情報セキュリティに関する言葉や事象をある程度知っているにもかかわらず、それを脅威と思わず、対策も行っていない。くしくも世間で問題になっている10代の感染症への関心度にも似た結果となった。今後は若い時期から、積極的に情報セキュリティ教育を行っていく必要があるだろう」(三角センター長)と分析している。


年代別でみた情報セキュリティに関する事象への脅威 年代別でみた情報セキュリティ対策の実施状況

 性別で情報セキュリティ対策の実施状況をみると、男性の70%が自分自身で対策を行っているのに対し、女性は35%と低かった。女性は情報セキュリティについて脅威と感じている人が多い一方で、情報収集などを家族に任せていたり、情報収集を面倒と感じていたりする人や、対策方法がわからないという人が多かった。

 このほか、インターネット利用開始時期別にみた情報セキュリティの実施状況では、利用開始時期が遅い利用者ほど、情報セキュリティ対策が十分に行われておらず、情報セキュリティ関連の情報収集を行っていない人も比較的多いという結果になった。

 なお、IPAでは今回の「情報セキュリティに関する新たな脅威に対する意識調査」を、今後も継続的に実施していく予定としている。


性別でみた情報セキュリティ対策の実施状況 インターネット利用開始時期別でみた情報セキュリティ対策の実施状況


URL
  独立行政法人情報処理推進機構
  http://www.ipa.go.jp/
  情報セキュリティに関する新たな脅威に対する意識調査の報告書公開について
  http://www.ipa.go.jp/security/fy17/reports/ishiki/press.html


( 唐沢 正和 )
2006/04/26 17:25

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