5月8~11日の4日間の日程で、米サンフランシスコにおいて「Symantec Vision 2006」が開催されている。2日目となった5月9日には、エンタープライズ向けのソフトウェア製品各種の発表が行われた。
■ 企業データセンターの進化
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データセンター・マネジメント担当シニア・バイスプレジデントのクリス・ハガーマン氏
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5月9日の午後の基調講演には、米Symantecデータセンター・マネジメント担当シニア・バイスプレジデントのクリス・ハガーマン氏が登壇し、同社のデータセンター向けソフトウェア製品の新たな展開について紹介した。
ハガーマン氏はまず、企業のデータセンターが「サービスレベルの向上」と「コスト削減」の2つの目標を達成していくために進むべき進化の道筋を示した。ITシステムが企業のビジネスのための“サービス”となるために、データセンターは「保護(Protect)」、「標準化(Standardize)」、「サービスモデルの実現(Enable ITSM)」という段階を経ていくという、同社が考えるロードマップを明らかにした。
保護とは、ビジネスを継続するために必要な、データセンターのレベルでの可用性やセキュリティの保証を確実にすることだ。ここでは、バックアップ/リストアやクラスタリングによるアベイラビリティの確保、各種のセキュリティ対策など、主としてインフラレベルの保護のことを指す。ビジネスに寄与するサービスとしてITを位置づける場合、データセンターが適切に保護され、ビジネスが要求するときにはいつでも稼働できる状況になくてはいけない。
次に、標準化は、データセンターの構成の複雑さを排除し、運用管理を効率化することを意味する。Symantecの製品はマルチプラットフォーム対応で、SolarisやAIX、HP-UXといったUNIXやLinux、Windowsなどで稼働し、いずれも同じインターフェイスで操作できる。つまり、使用しているハードウェアやOSが違っていても、実際に運用管理のために使用するソフトウェアツールのレベルでその差が吸収されることになる。
■ 製品ラインアップの整理
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Data Center Foundationの構成
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続いて同氏は、同社のデータセンター向けソフトウェアのラインアップを整理し、新製品の投入なども合わせて発表した。ここで対象になるのは、主として旧VERITASが擁していたデータ保護、可用性向上、アプリケーションパフォーマンス管理などの製品群だ。これらは新たに、“Symantec Data Center Foundation”という大きな枠に収められた。
Data Center Foundationは、本日付で発表された新製品で、ヘテロジーニアスな環境にあるアプリケーション、データベース、サーバー、ストレージを一貫したソフトウェア・インフラによって統合するための業界唯一の統合ソリューションだとされる。しかし、実態は単一のソフトウェア製品ではなく、各種のソフトウェアを組み合わせた全体構成に対して与えられた新名称だと考えてよい。従来以上に「統合」「組み合わせ」を強く意識するようになったことの表明だとみてよいだろう。
Data Center Foundationは、さらに4つの柱となる製品群から構成される、“Data Protection(データ保護)”“Storage Management(ストレージ管理)”“Server Management(サーバー管理)”“Application Performance(アプリケーションパフォーマンス)”の4種だ。
Data Protectionには、主としてバックアップソフトウェアであるNetBackupが対応する。Storage Managementの中核となるのは以前から提供されていたStorage Foundationだが、本日新バージョンとなるStorage Foundation 5.0が発表された。
Server Managementは、Cluster Serverのほか、今年2月に買収したRelicore社の技術に基づく変更/構成管理サーバー(Configuration Manager)、以前買収したJarevaの技術であるプロビジョニングサーバー(Provisioning Server、OpForceから名称変更)などで構成され、あらたにServer Foundationという名称が与えられた。
Application Performanceは、以前買収したi3の製品が中核となる。
同社では、データセンターの保護や運用管理のために使われるツール群をData Center Foundationという形でまとめて提供し、インフラとなるハードウェアやOSの構成の違いに依存しない、運用管理のための統合的な「標準化された」インターフェイスを実現する。これによって運用管理担当者の教育/習熟のためのコストが低減され、効率的な管理が実現する。
なお、Data Center Foundationを構成する個々の製品は、日本国内でも2006年第2、第3四半期に順次提供開始される予定。
■ Storage Foundation 5.0
Storage Foundation 5.0は、従来から提供されていたストレージ管理/仮想化技術を提供するソフトウェア製品の最新バージョンとなる。今回初めて、Windowsを除く対応全プラットフォーム版が同時にリリースされることになった。これは、「標準化」を単なるメッセージで終わらせることなく、実際に利用可能にするという強い意欲の表われだろう。なお、Windowsが除外されているのは、次世代バージョンとなるLonghorn(コード名、Windows Vistaのこと)のリリース遅延に対応したためだ。現時点では、Windows Vistaのβ2のリリースタイミングに合わせて投入される予定となっている。
また、新たな取り組みとして、小規模環境向けに無償バージョンとしてStorage Foundation Basicが提供される。Basicは、「1つの物理システム内で4ボリューム/4ファイルシステム以下、または2CPU以下」という規模での利用に限り、無償ライセンスが提供されるというもの。日本でも、発表同日から既存バージョンであるStorage Foundation 4.xベースのもののダウンロード提供が開始された。5.0 Basicの日本での提供は今年第2四半期の予定。
このほか、階層化ストレージの管理に対応するDynamic Storage Tiering(DST)やDynamic Multi-Pathing(DMP)といった機能の追加が行われた。
■ Server Foundation
Server Foundationは、Veritas Configuration Manager(Relicore由来)、Veritas Provisioning Manager(旧Jareva OpForce)にVeritas Cluster Serverの新機能を追加した製品ファミリ。サーバーの運用管理/監視の効率化を実現する。
Veritas Cluster Server 5.0には、新たに“Fire Drill”(火災訓練)と呼ばれる機能が追加された。これは、DR(Diserster Recovery:災害復旧)のためのテスト機能。従来DRのために代替環境へのフェイルオーバー等を設定しても、実際の災害時にうまく稼働するかどうかは確認されていない例が多かった。というのは、災害を想定して主系システムを強制的にダウンさせることには危険が伴い、テストによってシステムに深刻なダメージが生じる可能性が考えられるからだ。Fire Drillでは主系システムに破壊的な影響を一切及ぼさずに、DRで設定されたすべての機能を実行できる。これにより、稼働中のアプリケーションやデータが正しく予備系に移動し、稼働継続されるかどうかを実際に確認することができる。
■ URL
Symantec Vision 2006
http://www.veritas.com/vision/
( 渡邉 利和 )
2006/05/11 00:00
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