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NEC、2005年度連結決算を発表

PC事業は今年度に続き、2006年度も赤字見通しに

2005年度実績

的井保夫取締役執行役員専務
 日本電気株式会社(NEC)は5月11日、2005年度連結決算を発表した。

 売上高は前年比0.5%増の4兆8249億円、営業利益は32.7%減の954億円、税引前利益は42.6%減の833億円、当期純利益は84.3%減の121億円の増収減益となった。

 4月21日に発表した業績修正と比べて、ほぼ想定した内容となっている。

 NECの的井保夫取締役執行役員専務は、「モバイルインフラ事業が売り上げ、利益ともに成長したのに加え、平成電電の影響はあったもののブロードバンド関連事業が収益力改善を継続。NGN(次世代ネットワーク)戦略に向けた足場固めができたと判断している。さらにSI事業や半導体事業も回復基調にある。だが、半導体、モバイルターミナル(携帯電話)といった懸念事業の改善施策の実行の遅れ、為替変動の影響により赤字化したPC事業に代表されるように、環境変化に対する対応力、スピード力不足が、繰り返し行った業績の下方修正や営業減益、予想値未達といった結果につながっている」と総括した。

 ITソリューションは、売上高が前年比0.3%増の2兆1746億円、営業利益は、243億円減の818億円。

 ITソリューションの内訳では、パーソナルソリューション分野の売上高は、パソコンの出荷増加の影響で、前年比3.5%増の7495億円。

 だが、営業損失は、前年比140億円減少のマイナス70億円の赤字となった。パソコン事業の価格競争の激化や、急激な円安による資材費の増加などが影響し、パソコン事業そのものも通期収益は赤字となった。

 SI/サービス分野の売上高は、ほぼ前年並みの8324億円。営業利益は約60億円減の約600億円。

 コンピュータ・プラットフォーム分野は光ディスクドライブの売り上げ減少が響き、売上高は2.0%減の4899億円。営業利益は約30億円増の150億円弱。

 ソフトウェアは前年に大型案件があった影響から売上高は3.8%減の1028億円、営業利益は約70億円減の150億円弱となった。

 「ソフトウェア分野に対する開発先行投資に加え、保守事業が想定以上の収益減少となったことなどが大きく響いたほか、当初想定した外注費削減目標を達成できていないことも損益悪化の要素」とする一方、「SIにおける生産革新の効果が下期からあがり始めているほか、不採算プロジェクトを当初目標の100億円以下のレベルに抑制できている。SIにおける収益力は着実に改善していると判断している」とした。

 なお、パソコンの出荷台数は、上期が7.6%増の141万台、下期が4.9%増の149万台。年間では、6.2%増の290万台となった。2006年度は300万台を目指す。


 ネットワークソリューション事業は売上高が4.8%減の1兆7862億円、営業利益は205億円増の620億円。

 ブロードバンド分野の売上高が3.6%減の5922億円、モバイル分野の売上高は8.9%減の9161億円。モバイル分野のうち、モバイルターミナルの売上高は、26.3%減の4548億円、モバイルインフラの売上高は18.7%増の4613億円となった。社会インフラ分野の売上高は、8.8%増の2779億円。

 「モバイルターミナルは、中国市場における再建費用などで赤字幅が250億円に拡大している」という。

 携帯電話の2005年度上期の出荷台数は21.7%減の470万台、下期が12.7%減の620万台。通期では16.8%減の1090万台となった。2006年度は900万台を目指す。「モバイルターミナルは、下期黒字化を目指して採算性重視の出荷計画とした。900万台のうち、海外は2割弱、国内が8割強。国内ではほとんどが3Gになるのに対して、海外は若干数に留まる」としている。

 一方、エレクトロンデバイス事業は、売上高が7.0%減の8084億円、営業損失は、589億円減のマイナス255億円の赤字となった。


2006年度の連結業績見通し

2006年度のセグメント別売上・損益予想
 2006年度の連結業績見通しは、売上高が1.6%増の4兆9000億円、営業利益は346億円増の1300億円、税引前利益は167億円増の1000億円、当期純利益は379億円増加の500億円とした。

 「成長戦略の実行に向けて、IT/ネットワークの融合戦略を加速させる。NGNの本格化および開発投資の拡大のほか、UNIVERGE事業の拡大、SI/サービス事業の収益性向上を図る。生産革新、プロセス改革の継続的な取り組みにより、収益改善施策の確実な実行につなげたい」(的井取締役執行役員専務)とした。

 ITソリューションは、売上高が前年比2%増の2兆2200億円、営業利益は82億円増の900億円。ネットワークソリューション事業は売上高が3%減の1兆7400億円、営業利益は80億円増の700億円、エレクトロンデバイス事業は、売上高が9%増の8850億円、営業利益は335億円増の80億円とする。

 ITソリューション事業の内訳では、SI/サービスの売上高が8400~8500億円、営業利益が約680億円。ソフトウェアの売上高が1000~1100億円、営業利益が約150億円。コンピュータ・プラットフォームが売上高が4900~5000億円、営業利益が約100億円。パーソナルソリューション分野は、約9割を占めるPC事業の利益改善が下期以降になることから、通期でマイナス30億円の赤字を見込む。2005年度に続き、2年連続での赤字の見込みだ。

 「PC事業に関しては、生産プロセスの革新を継続するとともに、品質向上による保守およびサポートコストの削減に取り組む。また、為替変動といった事業環境の変化への対応力強化が早急の課題」と指摘した。


ITソリューション事業 ネットワークソリューション事業 エレクトロンデバイス事業

モバイルターミナル出荷状況
 また、モバイルターミナル事業および半導体事業は、PC事業同様に下期からの黒字化を予定しており、「懸念事業、低収益事業のすべてを、下期から黒字化する」とした。

 2006年度におけるモバイルターミナル事業は、国内での競争激化によって採算は悪化すると予測。海外では出荷を絞り込むことで赤字幅を減少させ、下期からの黒字化を目指すが、通期での黒字化は2007年度以降を目指している。


 なお、今回の決算では、子会社であるNECエンジニアリングの従業員による架空取引問題に関して、その修正を行うなど、2000年度から2004年度までの連結財務諸表を、米国会計基準に基づき、修正再表示(リステート)している。

 「今後、内部統制およびコンプライアンスへの取り組みの強化を図り、こうした問題が二度と起こらないようにしていく。とくに、運用面での問題があり、体制や内部監査によるけん制機能の強化、順法行動の徹底などを図る」(的井取締役執行役員専務)とした。



URL
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/
  平成17年度(第168期) 決算概要
  http://www.nec.co.jp/press/ja/0605/1101.html


( 大河原 克行 )
2006/05/11 19:05

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