米サンフランシスコで開催中のSymantec Vision会場で、米Symantec会長兼CEOのジョン・トンプソン氏にインタビューする機会が得られた。同氏の話を紹介したい。
|
会長兼CEOのジョン・トンプソン氏
|
―日本ではWinnyによる情報漏えいが大きな問題になっているが、当初被害が日本限定だったこともあり、セキュリティベンダー各社の対応は遅れがちだった。今後もこうした対応が限定された「セグメント化された脅威」は増えると思われるが、それに対してSymantecはどのように対応していくのか?
トンプソンCEO
Winnyが日本で大きな被害を出していることと、その被害がほぼ日本限定であるのは確かだ。Symantecでは全世界を対象にした「セキュリティ・レスポンス・センター」を展開しており、そのうちの1つは東京にある。
Winnyには他のワーム等と比べると少々異なる性質があり、Winnyとウイルスの組み合わせでファイルがユーザーの意図に反して公開されてしまうという問題を生じた。外からPCへの侵入ではなく、PCから外への情報公開が問題になったわけだ。こうした問題について、従来のアンチウイルスソフトウェアの技術で十分検知は可能だったはずだが、一方で従来型のアンチウイルスソフトウェアの対応とは逆の対応が必要だったということもあり、そこにギャップが生じていたことは確かだ。今はこのギャップを埋める対策を取っており、日本国内にこれ以上まん延しないような対策ができている。
現在では、確かに多くの攻撃が以前よりも対象を絞っている傾向がある。以前は幅広くインターネット上の全システムをターゲットとする攻撃が目立ったが、現在は1つの国、銀行などの特定の業界、あるいは特定の企業のみをターゲットにする攻撃が増えてきている。Symantecの対応組織もこうした状況の変化に対応し、対策を講じるよう努力を続けている。
―SymantecとVERITASの合併の時点で、ビジネスの比率としてコンシューマビジネスとエンタープライズビジネスが半分ずつと説明されたと記憶しているが、それから約1年が経過した現在、その比率はどう変化したか?
トンプソンCEO
合併以前のSymantecは、コンシューマビジネスとエンタープライズビジネスがほぼ半々の企業であり、VERITASは100%エンタープライズビジネスの企業だった。Symantec VisionはもともとVERITASがVERITAS Visionとして開催していたもので、今年で9年目になる。そのためもあって、Visionの来場者はエンタープライズユーザーが中心となっている。一方、現在のSymantecのビジネスの比率は、25%がコンシューマ、75%がエンタープライズとなっている。
企業としてのSymantecの考え方は、全世界のユーザーのソフトウェア投資の状況に対応していくということだ。現在、ソフトウェア市場の約2/3は、エンタープライズクラスの大企業と政府/官公庁で占められている。個人ユーザーと中小企業によるソフトウェア購買市場規模は、おおよそ全体の1/4~1/3程度だ。そこで、Symantecがビジネスに取り組む際の力の入れ方の比重も、ほぼこの比率に合ったものとなっていると考えている。
さらに、将来的にはコンシューマ市場からの収益は現在よりもさらに減少する可能性もあると考えている。そのためもあり、エンタープライズビジネスをより一層成長させていきたいと考えている。
―将来のSymantecの姿はどうなっていると考えるか?
トンプソンCEO
2010年頃には、現在の2倍の規模に成長させたいと考えている。つまり、現在は売上高で50億ドル規模の企業だが、これを100億ドル規模にしたいという意味だ。そのとき、従業員数では3万人規模に成長しており、うちエンジニアリングに携わる人員が8000人という数字になっているのではないか。
製品の面では、ITインフラ保護、情報保護、Web上での“インタラクションの保護”のすべての分野でトップとなっていることを期待している。パートナー経由での売上が全体の8割を占め、強力なブランドイメージを確立している企業。
私がイメージしている2010年のSymantecの姿は、このようなものであり、実現できることを期待している。
■ URL
米Symantec
http://www.symantec.com/
( 渡邉 利和 )
2006/05/12 00:00
|