Enterprise Watch
最新ニュース

アドビ、長期保存に最適な電子文書フォーマット「PDF/A」


 アドビ株式会社は5月16日、同社の長期保存のための電子文書フォーマット標準であるPDF/Aに関する説明会を開催。説明会には、記録管理の専門家の協会であるARMA Internationalの東京支部 理事 兼 自治日報顧問の西川康男氏が出席し、記録管理が企業にとってどのような必要性を持つかについて紹介が行われた。


ARMA International東京支部理事 兼 自治日報顧問の西川康男氏
 西川氏は、企業がおかれた現状について、「情報流出や粉飾決算など、多発する企業の不祥事に対応する形で新会社法や日本版SOX法など新たな法規制の動きがある。一方で、政府のe-Japan戦略やIT新改革戦略など、ITの進歩による規制緩和も起きている。どちらも、第三者による評価が可能な文書化を行うことが求められている」と、電子文書などによる情報の保存の大切さを指摘する。しかし、文書を作ることと記録することは必ずしも一致しないと西川氏は説明する。「日本の企業の多くが文書と記録をあいまいにしているが、文書は修正可能な情報であり、記録は修正変更ができない情報。証拠能力のあるのは記録であり、この記録管理が企業に求められている」と、記録管理が企業にとって重要であるとした。

 この記録管理を行う上で重要なのが、原則を理解することと西川氏は説明する。「記録に求められるのは、本物であることを証明する“真正性”、内容・処理・活動など業務活動の過程を証明できる“信頼性”、変更から守られている“完全性”、利用できる記録の条件を示している“利用性”の4点。日本では、記録管理への対応が遅れており、電子化社会を支えるためにも早急な対応が必要」と、記録管理への対応を求めた。


マーケティング本部ナレッジワーカー部 部長の市川孝氏
 この記録管理の要件に対応しているのが、PDF/Aになる。PDF/Aは、2005年9月にISO(国際標準化機構)で承認された電子記録の長期保存を目的とした標準規格。Adobe PDF 1.4をベースに長期保存に最適化されたフォーマットだ。

 同社マーケティング本部ナレッジワーカー部 部長の市川孝氏は、「PDFという電子文書のデファクトスタンダードを元に、長期間経過後も可読性を持ち続けるフォーマットとなっている。可読性を保つために、暗号化(パスワードを忘れた場合に読めなくなるため)、LZW圧縮(特許の問題に対応)、外部参照(外部データ消失の可能性があるため)などを禁止しているのが特長」と、環境に依存せず自己完結するフォーマットとなっていると説明する。

 Acrobat Professional 7.0.7やAcrobat 3D、LiveCycle PDF Generator 7.0、LiveCycle Forms 7.1によってPDF/Aは作成可能。市川氏は「PDF/Aは、公文書の保存に最適な電子文書。海外では、オーストラリアのビクトリア州公文書館で必須フォーマットとして利用されたり、事実上の標準として採用されている。日本では、まだ標準フォーマットとして利用されていないが、行政などの公文書で利用されることになるのではないか」と、国内でも標準として利用されていくと説明した。


PDF/AとPDF 1.4の関係 PDF/Aで求められる必須事項や禁止事項 PDF/AはPDF設定で行える


URL
  アドビシステムズ株式会社
  http://www.adobe.com/jp/


( 福浦 一広 )
2006/05/16 19:14

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.