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富士通・黒川社長が講演、システム導入の失敗要因などを自戒をこめて提示

富士通フォーラム2006 基調講演

黒川博昭社長
 5月18日から東京・有楽町の東京国際フォーラムで始まった富士通フォーラム2006の基調講演に、富士通株式会社の黒川博昭社長が登場した。

 黒川社長は、「経営とITの一体化」と題して講演。約1時間にわたり、富士通自らの取り組みなどを通じて、いかに経営にITを生かすか、といった点に言及した。

 冒頭、黒川社長は、「大変なご迷惑をおかけした」として、昨年11月1日の東証のシステムトラブルについて謝罪した。「11月の問題は、お客様のパートナーになるということを打ち出していた富士通にとって、大変はずかしいことであり、厳粛に受け止めている。これを富士通のビジネスの再出発点ととらえ、きちっと、お客様を応援できる体制を構築していくつもりだ」などとした。


失敗プロジェクトの典型的パターン
 また、富士通社内において、これまでの失敗案件を徹底的に分析したことについて触れ、「ITにおける典型的な失敗パターン」を示して見せた。

 黒川社長は、失敗する典型的パターンとして、要件定義、業務仕様設計、システム開発の3つのフェーズでそれぞれ問題があると指摘し、「お客様にご迷惑をおかけしたプロジェクトを分析して得た結果であり、これを回避できれば10中8、9はうまくいく」とした。

 黒川社長が示したのは、「要件定義では業務運用の定義ができていない、利用部門が参画しない、課題解決を先送りにするといったことを背景に、形だけの業務仕様設計ができあがること。また、業務仕様設計では、仕様がいつまでたっても決まらないとか、レビューの段階で現行業務分析の不備が発覚したり、ドキュメントが不備でシステム設計に進めないということで、課題未解決のまま製造工程に移行してしまうという問題。そして、システム開発では、システム設計ができず、工程が遅延したり、マネジメント不備でプログラムの単体品質が見えない、統合テストで品質不良が判明するなどの問題が発生する。結果として、改めて、現場部門の参画を得たり、要件定義や仕様設計を最初からやり直すといったことになり、失敗につながる」とした。

 また、「経営の変革のためには、ITの変革が必要であることは多くの人が知っており、それを実践している。だが、ITの価値を最大限に引き上げるには安定稼働を実現することが最も重要であり、これが確保できなければ、いくらITがプロセスを変えても効果がない」と語った。

 一方、経営とITの一体化については、三越やりそな銀行などの導入事例とともに、富士通自らの事例を提示した。

 「紺屋の白袴ともいえるが、富士通には受発注基盤でFOCSという20年以上稼働しているメインフレームによるシステムがある。ここには63ものさまざまな関連システムが連動している。これを再構築する必要がある。ただ、これをITの再構築ととらえると失敗する。経営プロセスの再構築ととらえ、経営トップがこれに積極的に参画することが大切」とした。

 また、富士通では、トヨタ生産方式の導入により、生産現場の革新を進め、効果をあげ始めているが、これをハードの製造現場だけでなく、ソフトの製造現場にも広げる取り組みをしていることを示す一方、「さらに、連携するすべての現場を、複数の現場としてとらえるのではなく、ひとつの現場としてとらえることが必要」とした。


「The FUJITSU Way」を発表する黒川社長
 「富士通は、ITで経営を変えるといったが、それならば富士通自身が変えて見せてほしい、といわれた。それはもっともなことである。富士通は、お客様の変化と進化をお手伝いするために、自ら実践し、ビジネスを変える。つまり、富士通がリファレンスモデルになり、示さなくてはならない。社内では、プロジェクトEAGLEとして、日本版SOX法に対応した業務プロセスの改革に挑んでいるが、これは単に法令にあわせるというのではなく、業務プロセスを『見える化』させることができるチャンスだととらえた。結果として、環境変化に対応できる企業へと変革できるようになる」とした。

 最後に黒川社長は、「富士通はITを軸にして、お客様のかけがえのないパートナーになることを目指したい」と宣言した。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  富士通フォーラム2006
  http://forum.fujitsu.com/2006/tokyo/


( 大河原 克行 )
2006/05/18 17:04

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