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NEC矢野社長、「今年度は営業利益1300億円を確実に達成、NGN戦略にも集中する」


代表取締役執行役員社長、矢野薫氏

NGNによって、幅広い分野で投資の活性化が見込めるという

キャリア向けIT・ネットワーク事業の施策
 日本電気株式会社(以下、NEC)は5月29日、代表取締役執行役員社長、矢野薫氏が記者会見を行い、同社の経営方針などについての説明を行った。

 矢野社長はまず「構造改革や資産の圧縮が進み、まずまずの水準になった」とNECの財務体質に言及。そして、今まで優先してやってきた経営構造改革が第一の課題でなくなったとして、NGN(次世代ネットワーク)に対する経営資源の集中と、半導体、モバイルターミナルという2つの不採算事業のターンアラウンドを新たな施策として挙げ、「将来に向けての攻めに転じる」とした。

 ここで注目されているNGNとは一般的に、IPをベースとした新しい次世代のネットワークととらえられている。矢野社長はこれについて、「ネットワークの中にITが深く入り込んだ、新しい情報通信のインフラ」と定義。

 「ITがネットワークに組み込まれた結果、大きくこれまでのパラダイムが変革しようとしている。現在伸びているインターネットのインフラは電話、データのネットワークで、これは古いまま。これを更新する機会に、新たな収益を作り出すことをキャリアが考えることが重要」としたほか、「企業、個人のユーザーが新しいサービスを使って生活を豊かにする、もしくは事業を発展させる、という提案ができるのがNGN」と持論を述べ、そこに生まれるビジネスチャンスをつかんでいくと述べた。

 具体的な展開としては、まずキャリアで、NTTがフィールドトライアルを開始し、そのための機器・ソフトの調達が始まっているという。またKDDIでも固定網のIP化をいち早く提供するなどの動きがあり、その構築にNECが貢献しているとのこと。矢野社長は「この分野で30%以上のシェアがあり、その地位をさらに強化したい。事業体制を強化するほか、開発投資を上積みする」と述べる一方、成長性の高く、NEC自身のシェアも高いサービスプラットフォームの分野に特に集中して投資していくとしている。

 ここでのNECの強みは、「なんといっても固定、放送、トランスポート、端末、ソフト、SIというフルレイヤのあらゆるサービスが提供できる、国内では圧倒的に有利なポジション」(矢野社長)。これとともに、サービスプラットフォームでの実績も生かして、顧客に訴求していきたい考えだ。


SI・サービス事業の拡大を見込む

開発投資では、NGN分野への投資を拡大する
 一方NGNの企業向けの展開としては、「インフラが変わると、その上に構築されている企業ネットワークも大きく変わる。音声やデータの統合など、新しい発想がどんどん現実になる」とした上で、こういう動きをとらえて、先端的な製品、ソリューションを提供していきたいと主張。

 その上ではSI事業が重要だが、2005年度は若干収益性が下がった。2006年度はこれを戻すのが課題として、完全子会社化したNECソフト、NECシステムテクノロジーとの統合効果の実現、不採算プロジェクトのさらなる抑制や、これまで進めてきた開発標準化の取り組みなどをあわせて、収益強化を図る。

 企業ネットワーク事業も加速を見込む。前年度1000億円の大台に乗せたIT・ネットワーク統合ソリューション「UNIVERGE」の売上高を15%成長させるべく、「200名の販売・SI要因の増強を行ったほか、NECインフロンティアへの開発部門統合などで、大型から小型まで一気通貫の開発体制を作った」(矢野社長)。この開発統合に関しては、「NECインフロンティアはディビジョンカンパニーで1つの事業部と同じ。なぜ開発を本体にもってこないかといえば、ここは小回りを利かせる世界なので、そういう企業文化のところでやってもらうほうがいいと考えた」とコメントしている。

 なおこのうちのソフト事業に関して矢野社長は、「もっともっと伸びる。ITとネットワークを両方持っているところが強く、シスコとはここが違う。またオフィスにたくさんの製品が入っている、米Microsoftとの協業もここに焦点をあてている。(ソリューションの連携によって実現する)ビジネスプロセスの革新が、UNIVERGEを使ってもらうために必要ということで強化した」と述べた。

 NECではこうした構想の実現のため、NGN領域へ開発投資を集中していく。「NGNには従来に増して研究開発費を使っていく。RFID、GRIDなど、NGNができてくるともっともっと伸びる部分も改善する。あわせてBIGLOBEへの投資強化も行う」(矢野社長)。


 不採算事業の立て直しについては、まずモバイル関連事業で「着実に方針を実行しているところ」(矢野社長)とした。そしてこの一環として、「松下との協業をさらに深めるということで具体的な検討に入った。両社のブランドをそれぞれ生かしながら、全体でスケールメリットを出す」と説明したが、松下との事業統合については否定。アライアンスの例として、「たとえば、開発を一緒にやって、最後のNECらしさだけを独自に付加できれば、開発費用や期間が短縮できる。また資材調達などでもメリットが出るかもしれない」と語るにとどまった。

 もう1つの半導体事業では、「2005年度後半から受注が伸びている。東芝、ソニーとの先端プロセスの共同開発に加え、ソニーとのアライアンスにより、今まで以上に利用されるようになった。また自動車メーカーには、半導体とともにソフトの力を使ってもらう方向で話が進んでいる」とコメントしている。

 「今年は懸念事業のターンアラウンドをしっかりやる。そして、NGNへの集中などで、営業利益1300億円の業績予想を確実に達成し、中期経営目標達成のための大ステップにするというのが、今年の経営のスタンス。この達成によって、ステークホルダーの期待に応えたい」(矢野社長)と述べ、説明を締めくくった。



URL
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/

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( 石井 一志 )
2006/05/29 18:28

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