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「いち早く新技術を投入できるパワーが売り」-米Foundry


 いま業界標準として普及しているEthernetは1973年に発明され、1983年にはIEEE 802.3として標準化、今日に至っていることは周知の通りだ。この間、10Mbps、100Mbps、1Gbps、10Gbpsなどと高速化を続け、速度面を見ただけでも顕著な発展を遂げてきているEthernetだが、現在、企業ユーザーの関心事の1つに、PoE(Power of Ethernet)がある。

 PoEは、1本のツイストペアケーブルで、データに加えて電力まで供給可能とするもので、これに対応するIP電話機や無線LANアクセスポイント、ネットワークカメラなどの機器であれば、ACアダプタや電源の工事を不要とするメリットがある。供給電力は、1ポートあたり7.7Wや15.4Wであり、2003年6月にIEEE 802.3afとして標準化された。

 多くのベンダが自社プロダクトラインにPoEを加えているが、米Foundry Networks(以下、Foundry)もいち早くこの機能に注目、さらなる向上をめざして鋭意その取り組みを強化しつつある。このたび、Interop Tokyo 2006で同社ソリューションのアピールのために来日した、プロダクトマネージメントディレクタのバル・オリバー氏、およびエンタープライズビジネスユニット 副社長兼ゼネラルマネージャーのボブ・シッフ氏に、同社のPoE戦略と、Ethernetのホットトピックスを聞いた。


PoEの成長は順調、新製品で他社との差別化を図る

プロダクトマネージメントディレクタのバル・オリバー氏(左)と、エンタープライズビジネスユニット 副社長兼ゼネラルマネージャーのボブ・シッフ氏(右)
 オリバー氏は「PoE機能を持つGigabit Ethernet(GbE)製品は成長を続け、2007年にはPoE対応の10/100Mbps製品を追い越してしまうだろう」という。これまでFoundryは、ボビー・ジョンソンCEOもたびたび主張してきているように、レイヤ2/3スイッチなど、得意とする分野で業界1番乗りを果たし、シェア確保することを基本戦略に据えてきた。もちろんPoEもその例にもれないという。同社では最初のPoE製品を2003年に出荷しているが、さらに2006年には関連製品をより多様化させ、実績を積み上げている。

 その証しが、このたびInterop Tokyo 2006において発表したFastIronシリーズだ。まずFastIronGSはGbE対応であり、スタッカブルで最大48の1ポートあたり15.4W供給可能な(Class 3)PoEポートをサポートしている。このクラスでは業界でもっとも高いPoE密度という。同社ではこのFastIronGSにおいて、標準でPoEを装備したもの2機種と、PoEアップグレード可能な2機種をラインアップした。「特にPoEへのアップグレードは業界でも、Foundryだけが可能」とオリバー氏はアピールする。

 最大48のClass 3 PoEポートを実現するためには、冗長、取り外し可能、ロードシェアリング対応のAC/DC電源がキーポイントになっており、1電源追加で1+1のPoE電力を確保し、2電源により最大48のClass 3ポートをサポートしうるのである。こうした「冗長化した電源構造にしたのもFoundryだけ」(オリバー氏)だ。

 さらにFastIronSX 800/1600は、10/100/1000Mbpsで最大384のClass 3 PoEポートをサポートするなど1シャーシで業界最高のPoE密度になっている。対応可能なPoEポート数を最大化させるために電力供給をデュアル構造化し、1つの配電システムをシステム駆動向け、もう1つをPoEポート向けにするなど、ここでは電源構造自体を別系統にしているのである。


PoEに向けたFoundryのこだわり

今回発売されたPoE対応の新製品
 Foundryは、なぜPoEにこだわっているのであろうか。オリバー氏は間髪を入れず「まぎれもなく強いユーザーニーズがあるから」と返す。いまユーザーはコスト削減に迫られ、システム管理もできるだけシンプルにしたいと考えているが、PoEを使えば、データおよびVoIPを1つのインフラでサポートできる上に、電源共有も一緒に行える。別のPBXを管理する必要もなく、1つのスイッチを管理するだけでいい。これで管理コストの最小化までをも、もたらしてくれるというわけである。Foundryでは、PoEポートあたりの価格200ドル以内を実現している。

 PoE対応スイッチで、Foundryの強みになっているものが3つある。第1がASICに基づく高速化、第2が上記の、システム向けおよびPoE向けというデュアル構造の電力供給を持つ点だ。これによって、高いポート密度のPoEを実現可能にしているという。特に電力供給のために懸念されがちの熱の問題については、1200Wのパワーサプライ2台で対応できるようにしたのである。

 この、業界でもっとも低い消費電力の実現で熱の問題を解決し、かつデュアル構造により1ポートあたりのW数を最大化できた。したがってユーザーは、スイッチに接続するVoIP用電話機の数も任意に設定できることになる。一方、競合他社の場合は、システムとPoEに対して1台のパワーサプライで対応している。これだと、既存製品からの設計変更の必要はなく、市場投入までの時間を短縮できるかもしれないが、どうしても消費電力の効率化は否めない、という。そして第3が高度な技術を投入している点である。たとえば、ASICはsFlowに対応し、ハードウェアベースのACL(Access Control List)やQoSにも対応、さらにハードウェアベースのセキュリティソリューションを実現しているのである。加えて、10Gbpsにおける高いポート密度も見逃せないであろう。

 こうしたことから「Foundryでは競合他社よりも9カ月~1年程度は先行しているはず」とオリバー氏は自信をみせる。しかし一方で「資金力が豊富な競合などは、多大な投資を行えばすぐ追いつくかもしれない」と、決して楽観はしていない姿勢だ。


PoEプラスと100GbEの展望

 なおFoundryは、Ethernetアライアンスの創設メンバーでもある。そこでPoE以外にも、現在のホットトピックスについて取材してみた。

 第1が、ポートあたり31Wの電源供給を可能にするPoEプラスだ。これにより、ノートPCでも別に電源をとらず、スイッチからのケーブルに接続するだけで使用することが可能になるという。残念ながらこの規格では、これまでとは異なるケーブルが必要で、Ethernetポートの形状も変更しなければならないし、またチップセットも変わってくるというが、シッフ氏は「すでにIEEE 802.3atと呼ぶワーキンググループもできており、2年以内にはIEEEで標準化できるのではないか」と見ている。

 第2にIEEEでも注目される100GbEソリューションがあげられる。「100GbEは、ASICをより微細化する必要があり、そのために65~90nmの利用が考えられているが、理想的には45nm技術がベスト」とシッフ氏はいう。メモリも現在の64ビットから128ビットにするなどより幅広くする必要があるほか、高速バッファが必要だし、またスイッチファブリックとの接続部分では、少なくとも100Gbpsよりも30%以上の帯域が余分に必要となる。まだまだ課題は多いため、「この標準化は2010年以降になるのではなかろうか」(シッフ氏)と予測している。

 「昨年スロットあたり帯域幅が100GbpsのBigIron RXを提供しているし、PoEプラスに向けてもデュアル構造の電力供給で、いつでも対応できるようにしている。このように、Foundryがこの業界で成功し生き残りうる根拠は、他社よりもいち早く新技術を投入できるパワーにつきる」と業界一番乗りの重要性を改めて強調した。

 また第3として、10GbEのうち10GBASE-Tの見通しも聞いた。Foundryでは、現在光ファイバーの10GbEでは3W程度の消費電力を実現しているというが、10GBASE-T向けチップセットの一般的な消費電力は9~12W程度。規格ができても、「10GBASE-Tは、さらに低消費電力化に向けた改善点をクリアしなければならないだろう」とのことで、低消費電力型が入手可能になるのは2006年末から2007年初頭くらいなのではないかと、オリバー氏は見ている。



URL
  米Foundry Networks(英語)
  http://www.foundrynet.com/

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  ・ ファウンドリー、最大384ポートまで拡張可能なPoE対応GbEスイッチなど(2006/06/07)


( 真実井 宣崇 )
2006/06/15 11:35

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