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NEC、NGN時代に向けた研究開発戦略を発表

研究開発の成果をプレス向けに披露

 日本電気株式会社(NEC)は6月30日、次世代ネットワーク(NGN)時代に向けた研究開発戦略についてプレス向け説明会を開催した。説明会では、まず執行役員兼中央研究所長の國尾武光氏によるプレゼンテーションが行われ、同社の研究開発を手がける知的資産R&Dユニットについて、その役割と研究開発の進め方、およびNGNに関する研究開発の取り組みなどが説明された。プレゼンテーション終了後には、NGNに関連するさまざまな研究開発成果の展示見学会が行われた。


國尾武光執行役員兼中央研究所長
 國尾執行役員兼中央研究所長は、知的資産R&Dユニットの役割について、「NECはグローバルなイノベーションカンパニーを目指しているが、そのなかでわれわれ研究開発部門では、技術のNECを支えるイノベーションを継続的に創出し、NECグループ全体の成長戦略に貢献していくことが大きなミッションであると考えている」と述べた。

 知的資産R&Dユニットの組織体制は、将来事業の創出や現事業発展のための先行研究開発をする「中央研究所」、IT・NWソリューション領域の新ビジネスの開拓をする「ソリューション開発研究本部」、経営資源としての知的資産の創造と活用を手がける「知的資産事業本部」の3つの部門で構成され、「研究開発と知的資産、つまり創出と活用を両輪にして運営している」(國尾執行役員兼中央研究所長)という。

 研究開発拠点としては、国内に6カ所(筑波、本社・三田、玉川、相模原、大津、生駒)、海外6カ所(中国・北京、独・ハイデルベルグ、英・アクトン、独・ボン、米・プリンストン、シリコンバレー)を持っている。

 次に國尾執行役員兼中央研究所長は、知的資産R&Dユニットにおける実際の研究開発の進め方について説明。「まず先行研究で革新技術や新技術を生み出し、その技術についてビジネスモデルや実証実験などのソリューション開発を行い、最後に事業化するというのが一連の流れ。そして、この事業化までの過程を加速させるために欠かせないのがイノベーションである」と述べた。先行研究では「テクノロジーイノベーション」、ソリューション開発では「ビジネスイノベーション」を起こす必要があるという。

 テクノロジーイノベーションの創出に向けては、先行研究段階で社外組織との連携を進めながら、サイエンスに立脚した強いコアテクノロジーの育生に取り組んでおり、また、ビジネスイノベーションの創出に向けては、ソリューション開発において市場を分析し、社内外のシーズを活用して、ビジネス開発、製品・サービス開発、ベストプラクティス実証などを実施している。

 さらに、この一連の過程の中で「オープンイノベーション」にも積極的に取り組んでいる。「現在、NECでは42個のコアテクノロジーを持ち、これらを全般的に活用してNGN関連の技術開発を行っているが、NEC1社ですべての領域をカバーすることできない。外部のパートナーといかにうまく連携できるかが今後の技術開発のキーポイントになる」とした。

 具体的には、先行研究では社内のシーズを活用、ソリューション開発段階ではコンソーシアムやベンチャーを活用し、事業化にあたってはグループ会社やパートナーを活用するなど、オープンイノベーションを推進している。これによって、「新しいコアテクノロジー領域を開拓できるとともに、コアテクノロジーの深耕をさらに加速することができる」としている。


知的資産R&Dユニットにおける研究開発の進め方 知的資産R&Dユニットの研究開発領域 オープンイノベーションの推進

 今回の説明会ではプレゼン終了後に、NGN関連の研究開発成果の展示見学会が行われたが、これについて國尾執行役員兼中央研究所長は、「これまでもNGNについては何度か資料ベースで説明してきたが、それではまだまだ理解度が低いと感じている。今回、NECの目指しているNGNとはどんなものなのか、もっと理解を深めてもらうために実際の技術開発成果を体験できる場を用意した」と説明した。

 同社ではNGNの定義として、1)IPベースのネットワーク、2)トランスポート(伝送)とサービスの分離、3)QoS(通信速度/品質保証)とセキュリティの確保、4)ITとの高い親和性-の4点を挙げている。「単にトランスポート領域をカバーするだけでないのがNECの考えるNGNビジネス。トランスポート領域の上に乗ってくるサービスプラットフォーム、それらを活用するための端末機器、そしてその裏側にある企業IT・ネットワークシステムまで、NGN全体を大きな事業機会として考えている」(國尾執行役員兼中央研究所長)という。


NGNの定義 NGNの事業領域 NGNにおける事業機会

 展示会場でも、企業IT・ネットワーク、サービスプラットフォーム、トランスポート、端末機器&環境・エネルギーという4つのビジネス領域ごとにNGN関連の研究開発成果が展示された。

 企業IT・ネットワーク領域では、VoIPにおいて世界最高レベルの高品質な音声コミュニケーションを実現する「VoIP通話品質向上技術(VoIPミドルウェア)」、企業内IP電話をサイバー攻撃から防御する「VoIPセキュリティ」、モバイル電子チケットサービス基盤「LightHolder FeliCa対応」を展示。

 サービスプラットフォーム領域では、世界初となるOMA準拠の階層型「サービス統合フレームワーク」、携帯電話などで同じ画面を見ながらグループコミュニケーションを実現する「マルチメディアPush To Talk」、高品位なIP放送を提供する「高品位マルチキャスト放送システム」のほか、「大規模ネットワーク向け品質劣化箇所推定」、「障害予兆検出マイニング」を展示。

 トランスポート領域では、「40Gb/s DWDM長距離光通信システム」、「光IP連携ネットワーク制御システム」、「シリコンフォトニクスによる光集積回路技術」、「超10Gbps対応高性能セキュリティプラットフォーム」、「量子暗号ネットワーク」を展示。

 そして端末機器&環境・エネルギー領域では、低電力高性能性とソフト生産性を両立した「マルチコアプロセッサ」、高植物性と実用性を実現し環境調和性も高い「バイオプラスチック」を全面採用した携帯電話のほか、形状記憶型のバイオプラスチックも展示された。


形状記憶バイオプラスチック マルチメディアPush To Talkの利用シーン ケナフ添加バイオプラスチック携帯電話


URL
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/


( 唐沢 正和 )
2006/06/30 16:35

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