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米salesforce.com会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏
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株式会社セールスフォース・ドットコムは7月7日、「Success On Demand Tour 2006 Summer」を開催。「The Future of Software:ソフトウェアの未来」と題し、米salesforce.com会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏による基調講演が行われた。
ベニオフ氏はまず、GoogleやYahoo!、Amazon.comに触れ、「コンシューマ向けのWebはさまざまなサービスが提供されており、大きな変化が起きている。また、Web 2.0をはじめ、Ajax、フォークソノミー、ブログなど、新しい技術が出てきており、より簡単に利用できるようになっている。これに対し、企業はインターネット以前のシステムを依然として使い続けている」とし、ビジネスアプリケーションもコンシューマ同様の進化が必要と述べた。
その上で、ベニオフ氏が考えるソフトウェアの未来像を紹介。「現在のソフトウェアはシングルテナント方式、つまり孤立して運用している状態だ。今後はマルチテナント方式、つまりソフトウェアを共有するというシステムが中心になるだろう。実際、すでに成功しているサービスの多くはマルチテナント方式を採用している」と、企業内でシステムを構築してソフトウェアを導入するのではなく、共有することが一般化していくとした。
また、「企業規模に関係なく、同じビジネスアプリケーションが使えることも重要」と、大企業だけがビジネスアプリケーションが使えるという状態から、規模に関係なく使えるという“ビジネスアプリケーションの民主化”を紹介。そのほか、Web APIによりアプリケーションの統合を行うことで、新しい価値が創出されるとした。
こうしたソフトウェアの未来をすべて実現するのがSalesforceであるとベニオフ氏はいう。「特にAppExchangeは、ビジネスアプリケーションをサービスとして提供できる唯一のオンデマンドプラットフォーム。すべてのサービスをAppExchange上に持ち込むことができ、また他のWebサービスと統合することも可能。アプリケーションの開発もAppExchangeで行えるので、開発用のソフトウェアもハードウェアも持つことなく、新たなアプリケーションを開発し起業することもできる」と、従来のパッケージ型のソフトウェアとの違いを強調。
また、カスタマイズも手軽にできるのがSalesforceの特長。「これまでは、コードを修正して変更していた作業は、クリック操作だけで行える。メタデータによりカスタマイズが行われるので、アプリケーションをバージョンアップしてもそのままカスタマイズ内容を引き継ぐことができる。検証作業に多大な労力がかかっていた既存のビジネスアプリケーションと大きな違いだ」と、柔軟性と容易なバージョンアップが可能な点も利点として挙げた。
「ワープロソフトや表計算ソフトなど、さまざまなアプリケーションがサービスとして提供されはじめている。たとえば、Writelyというワープロソフトは、作成したファイルを中央で一括管理でき、また他のユーザーと共有するなどの特徴がある。そしてなによりクライアントソフトが不要だ。これでどのバージョンのアプリケーションを使っているかを意識することなく、文書作成に集中できる」と、SaaS(Software as a Service)を利用するメリットを紹介した。
■ salesforce.comがゲイツ氏引退の一因
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サンブリッジ社長兼グループCEOのアレン・マイナー氏(左)とベニオフCEO
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基調講演終了後には、プレス向けのラウンドテーブルを開催。この席でベニオフ氏は米Microsoftのビル・ゲイツ会長の引退に触れ、「Microsoftは、インターネットを使ったモデルに対して、コミットメントが弱かった。その結果、salesforce.comにサービス化で遅れをとったという認識を持っている。これも引退の一因ではないか」と、アプリケーションのサービス化で優位に立っていると強調。日本のソフトウェアメーカーに対しても、「ソフトウェアのサービス化に移行することが重要になっている」と、パッケージ型のアプリケーションが岐路に立っていると指摘した。
ラウンドテーブルには、ベニオフ氏の米Oracle時代の同僚であるアレン・マイナー氏も参加。マイナー氏は、日本オラクルの初代代表を務めたあと、ベンチャーキャピタルの株式会社サンブリッジを設立。salesforce.comの日本法人に出資するなど、同社にとって深い関係のある人物だ。マイナー氏は、ベニオフ氏の米Oracle時代に触れ、「彼は、Oracleの中でおもしろい事業をいろいろ手がけてきた人物。たとえば、NCなども彼が担当した製品だ。ただし、会社の規模が大きくなると、なかなか新しいことは行えないもの。salesforce.comのように独立して新しい事業を行うしかなかった」と紹介。「SalesforceはOracleのエンジニアとしての経験が十分に活かされたもの。引き続き成長していただき、(VCとしてのサンブリッジの)成績を高めてもらいたい」と、ベニオフ氏にエールを送った。
■ URL
株式会社セールスフォース・ドットコム
http://www.salesforce.com/jp/
( 福浦 一広 )
2006/07/07 19:35
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