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日本IBM、自動車産業を支援するAICを新設-電機業界などへのIPDの導入成果も披露


取締役専務執行役員 開発製造担当の内永ゆか子氏

日本IBMが提供するR&Dイノベーションサービスの概要

日本IBMが提供するR&Dイノベーションサービスの概要
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は7月20日、神奈川県大和市の大和ラボにおいて、日本IBMの研究開発への取り組みとイノベーション関連ソリューションなどの展示を行う、Yamato Innovation Dayを開催。それあわせて、同社の技術開発への取り組みなどについて、報道関係者を対象に説明を行った。

 日本IBMの取締役専務執行役員 開発製造担当の内永ゆか子氏は、「基礎研究、ソフトウェア開発、システム開発、製造といった役割を担う大和ラボ自身がイノベーションを実現するとともに、お客様の研究、開発活動のイノベーションをご支援することが大和ラボの役割」と位置づけ、「特に、お客様向けのR&Dイノベーションサービスで高い成果があがっている」ことを強調した。

 R&Dイノベーションサービスは、R&Dに伴うマネジメントおよび開発実行支援の2つの側面から、顧客の製品開発を支援する。すでに電機メーカーや自動車メーカー、携帯電話メーカーなどがこれらを利用して成果をあげているという。

 なかでも、内永氏が時間をかけて説明したのが、マネジメントプロセストランスフォーメーションの1つとして提供している「IBM統合製品開発(IPD)」による実績。IPDは、限られた開発資源で利益の最大化を目指すことを目的に開発された開発マネジメントプロセスで、プロジェクトチームによる推進の提案や、構想から計画、開発、評価、出荷といった、ライフサイクル全般にわたる意思決定プロセスの見直し、プロジェクトマネジメントの徹底により、的確な意思決定や開発コストの最適化、開発期間の短縮化などを実現する。

 これまでに国内30社以上の実績があり、生産性倍増、納期短縮、収益向上などのメリットが出ているという。

 内永氏は、「IPDを導入した企業のうち、87%の企業が、以前は期限通りに製品を市場に投入できないという問題に直面していた。だが、IPDの導入により、すべての企業がオンタイムで製品を市場投入することができた。また、開発費が36~40%程度削減でき、初期品質も10%ほど上昇しているという成果もあがっている」という。

 製品を予定通りに市場投入できるようになったことで、製品競争力がある段階で市場投入できるという営業・マーケティング面でのメリットを享受できるほか、製品の開発、製造、物流で協業する企業に対しても、当初計画した期間内のコストだけで協業が可能になるというメリットもある。

 一方、開発の実行環境では、エンジニアリングプラクティストランスフォーメーションによるソフトウェア開発の改革成果について言及。現状認知、課題抽出から、開発プロセス再構築支援、品質マネジメント支援、プロジェクトマネジメント支援、アーキテクチャ再構築支援などによって、再利用性を高めた生産ラインによる開発の実現や、同時期多機種開発の実現などで、導入企業が成果をあげていることを示した。

 「2004年1月から2006年7月までの間に、開発プロセスおよび品質保証支援で21件、プロジェクトマネジメント支援で18件、アーキテクチャ支援で9件の合計48プロジェクトの実績がある」(内永氏)という。


AICの新設により、自動車産業に対するイノベーション支援にも積極的に乗り出す
 また、同日付けで大和ラボ内に設置したIBMオートモーティブ・イノベーション・センター(AIC)の取り組みについても触れた。

 自動車メーカーや関連周辺装置メーカーなど、自動車産業の製造企業を対象に、イノベーション支援を行うもので、電機産業向けのIBMエレクトロニクス・イノベーション・センター(EIC)に続くものとなる。

 米IBMのワトソン研究所が中心となり開発した設計技法である統合システムデザイン(ISD)を採用し、機構設計、電子制御設計、組み込みソフト設計といった複数の分野にまたがる知識を横断的に集約するITインフラを提供。これをシステムエンジニアリング(SE)に特化した標準言語であるSysMLを利用して、暗黙値の可視化、変化する各種情報の共有化を行えるようにする。

 これによって、日本の基幹産業である電機産業および自動車産業において、日本のメーカーの開発を支援できる体制を整えることになった。

 「大和ラボが提供するイノベーション支援は、IBMの研究開発のリーダーが、お客様のもとに伺うのが特徴。これにより、大和ラボから先進技術を活用したイノベーションの提案や、顧客とのさらなる信頼関係を高めることに成功している。今後は、全世界の研究所と連携し、標準製品としての開発を行うワールドワイドR&Dと、ディープ・コンピューティングによる特化型ソリューション、およびデジタル家電などへ組み込みソリューションといったローカルR&Dの2つの側面から研究開発を進めていく」(内永氏)と、今後の展開について抱負を述べた。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  プレスリリース
  http://www-06.ibm.com/jp/press/20060720001.html


( 大河原 克行 )
2006/07/20 17:49

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