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IPA、OSSデスクトップの実用性を確認-自治体におけるOSS導入実証の成果を発表


実証対象となった4自治体

ネットワークブートのOSで市役所・出先のPCの集中管理を実現した津久見市
 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、オープンソースソフトウェア(OSS)の普及促進を図るため、自治体の実務現場においてOSSデスクトップの導入実証を実施。その実証成果をまとめ7月27日に発表した。

 今回の実証実験は、2004年度に行われた「学校教育現場におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての実証実験」に続くもの。北海道札幌市、栃木県二宮市、大分県津久見市、沖縄県浦添市の4自治体に対して実施され、4自治体、計400人の職員の協力を得てOSSの有効性を検証した。自治体の実務現場で、こうした大規模かつ広範囲なOSSデスクトップの導入実証を行うのは日本では初の取り組みになるという。

 4つの自治体ではそれぞれ特徴のある導入実証が行われ、北海道札幌市では、市内12カ所の遠隔拠点からなる水道局にOSSデスクトップを導入。Webブラウザやオフィスツールに加えIP電話やビデオ会議システムのマルチメディア分野にもOSSを導入し、その機能性、操作性、堅牢性、コスト改善を実証した。

 栃木県二宮市では、町役場全体および出先機関にOSSデスクトップを導入し、町役場全体のOSS化への移行によって実務を実証。ドキュメント作成、Web閲覧および特定のアプリケーションを利用した事務など、通常業務をOSSで実施した。

 大分県津久見市の導入実証では、ネットワーク環境を前提としたOSSデスクトップの導入を実施。OSSデスクトップの統合集中管理をネットワークブート環境で実証した。

 そして沖縄県浦添市では、デスクトップOSにUNIX系の「Solaris 10」を使用し、OSSデスクトップと基幹系システムの連携を検証。さらに、ヘルプデスク業務を分析し、ヘルプデスクの負担軽減、コスト削減を実現するツールを構築した。


橋本明彦研究員

2005年度自治体導入実証で残された課題
 導入実証の結果について橋本明彦研究員は、「今回の導入実証によって、OSSデスクトップは自治体でも実用に耐えられることがわかった。とくにOSSのオフィススイートやWebブラウザは各自治体で問題なく使われ、栃木県二宮町では事前に十分な現状調査を実施したため、従来行っていた業務を移行中・移行後とも支障なくOSSデスクトップで行うことができた。沖縄県浦添市でも、3月のOSSデスクトップ導入後のヘルプデスク対応状況を調べたところ、4月に人事異動の関係でやや対応時間が増加したが、その後減少し、導入前の状態に戻りつつあることがわかった。さらに、札幌市に導入したOSSのビデオ会議システムも8割の職員から高い評価を得ることができた」という。

 また、「OSSデスクトップの導入にあたり、地元企業と自治体が一緒に仕事をすることで、地元企業に需要の創造ができるかという点もポイントとなったが、その部分も十分に機能したと判断している」とした。実際に、自治体システム担当者とサポート企業の連携により手厚いサポートを実現したほか、栃木県二宮町では技術的課題についてユーザーコミュニティと連携するという新たな取り組みも行っている。

 今回の導入実証で残された課題としては、自治体と外部とで交換されるデータ、および自治体内部ですでに使われている基盤的情報システムにオープンスタンダードが採用されていないため、OSSデスクトップを既存システムと共存させながら導入し、移行することが困難であるケースがあることが明らかになった。

 このほか、1)OSSの運用において突発的に発生する問題解決などのための、継続的で低コストのサポート手法の確立、2)個々のOSSのさらなる機能強化および性能向上、3)プリンタをはじめとする周辺装置について、既存環境との共存など高度な運用機能の強化、4)外字や機種依存文字などのフォント、文字コードの管理機能、処理能力の強化、などが課題として挙げられた。

 今後IPAでは、今回の導入実証についてWebサイト上で各自治体の成果報告書などの詳しい内容を公開し、ほかの自治体、企業が参考にできるようにする。10月にはガイドブックの発行を予定しており、さらにOSS iPediaにも導入事例として収録し、2007年初頭に公開する予定。

 オープンソースソフトウェア・センター長の田代秀一氏は、「今回の導入実証によって、OSSの適用範囲と限界点が見えてきた。自治体のあらゆるシステムをOSSに置き換えていくのは現時点では時期尚早だと感じている。解決しなければいけない問題点もいくつか出ており、こうした点をふまえながら次の導入実証にトライしていきたい」と述べた。

 なお、現在2006年度の自治体導入実証を公募中で、8月31日に公募を締め切り、9月下旬に採択を決定する。実証期間は9月下旬から2007年2月28日までを予定している。



URL
  独立行政法人情報処理推進機構
  http://www.ipa.go.jp/


( 唐沢 正和 )
2006/07/27 19:29

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