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NRI城田氏、「OSSおよびSaaSが商用ベンダーに大きな影響を与えつつある」


情報技術本部 技術調査室 主任研究員の城田真琴氏
 株式会社野村総合研究所(NRI)は8月8日、オープンソースおよびSaaS(Software as a Service)の市場動向に関するプレス向け説明会を開催。同社情報技術本部 技術調査室 主任研究員の城田真琴氏より説明が行われた。

 企業でのオープンソースソフトウェア(OSS)の導入状況について城田氏は、「調達コストおよびライセンスなど所有コストの削減を目的に採用する傾向がある」と紹介。また、SaaS導入企業に関しては、「アプリケーションのアップグレードなどの保守費が料金に含まれる点がメリットと判断している」と、どちらもコスト削減効果を見込んで導入が進んでいるとした。

 特にOSやWebサーバーなどの分野ではOSSはすでに成熟段階にあると城田氏は述べ、「今後はミドルウェアやアプリケーションサーバーにシフトしていく」とした。


 OSSには、研究者などが片手間で開発している印象が強いが、「それは古くからあるOSSで、今のOSSは企業内の専門家が業務として開発している」と説明。「品質や信頼性に対する先入観はなくすべき状況となっている」と、企業としては選択肢のひとつとして正しく評価できる状況になっているとした。

 とはいえ、OSSを評価するには基準が必要。この評価指標のひとつにBRR(Business Readiness Rating for Open Source)がある。このBRRは、OSS評価のためのフレームワークで、企業ユーザーに対して、対象としているOSSが採用するに値するかどうかの判断材料を提供することを目的としたもの。12のカテゴリについて評価を行うことで、5段階評価で表される。NRIでも“成熟度”と“プレゼンス”の2軸でOSSをマッピングした「NRIオープンソースマップ」を作成しており、「データベースやアプリケーションサーバーなどは成熟度が高いという結果が出ている。一方、SOA関連のミドルウェアはまだ発展途上という結果となった」と、データベースおよびアプリケーションサーバーは企業システムで使えるレベルに成熟しているとした。


SaaSのモデル
 一方、最近注目が集まっているSaaSに関して、「ソフトをサービスとして販売するモデルがSaaS。ASPと似ているが、カスタマイズが可能であったり、他のアプリケーションとの統合が可能であったり、数千ユーザーの同時アクセスを考慮しているなどの点がASPと異なる」と説明。「Salesforce.comがSaaSを有名にしたように、CRMがSaaSで多く提供されている。米国では、ERPやHR、コンプライアンス関連もSaaSで提供されている」とした。

 SaaSの特長は保守・管理をサービス提供企業にまかせられるという点。その結果、Salesforce.comと既存のCRMを比較すると、10~20%程度の費用で済むという。「ただし、使用料という形で毎月課金されるため、長期間利用した場合は上回る可能性もある。どの程度の期間、サービスを利用するのか判断が必要」と、3年以上使う場合にはコスト削減効果が得られなくなる点も紹介した。

 既存ベンダーもSaaSを意識し始めており、Sunでは開発環境をSaaSで提供したり、IBMではSaaSベンダーを囲い込むエコシステムを構築するなど、活発な動きを見せている。「米国の大手証券会社では、ベンダーがSaaSに対応しているかどうかで評価する動きもあるため、各社とも対応に迫られている」と説明する。


 OSSおよびSaaSの動きは採用する企業だけでなく、SIerにとっても大きな影響があると城田氏は説明。「SaaSの場合、メインフレームとの連携も可能であり、SIerに対してインテグレーション能力が求められる。他人事とおもっていては機会を逃すおそれがある」と、SaaSなどの動きに敏感になる必要があるとした。



URL
  株式会社野村総合研究所
  http://www.nri.co.jp/


( 福浦 一広 )
2006/08/08 16:23

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