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富士通研究所、バイオメトリクス認証技術の体験会を開催

指紋から顔、声、手のひら静脈まで最新技術を紹介

画像・バイオメトリクス研究センターの佐々木繁センター長

生体認証の精度と適用分野
 株式会社富士通研究所は8月25日、プレス向けにバイオメトリクス認証技術の体験会を開催した。今回の体験会は、「自分を見分ける生体情報のしくみ~生体情報を使った本人認証技術と社会での役割~」をテーマに行われたもので、同社の持つ「指紋」「顔」「声」「手のひら静脈」を使った最新の本人認証技術を、記者に実体験してもらおうというのが狙い。

 体験会に先立ち、まずバイオメトリクス認証が必要とされる社会背景や、各種バイオメトリクス認証技術の位置付けなどを、画像・バイオメトリクス研究センターの佐々木繁センター長が説明した。

 佐々木センター長は、「インターネットの広がりにより、ユビキタスネットワーク社会が現実のものとなってきた。しかし、いつでも、どこでも、誰もが簡単に情報にアクセスできる便利な環境が実現される一方で、他人の情報に誰もが簡単にアクセスできてしまう危険性も高まっているのが現状。個人の生体情報を使ったバイオメトリクス認証は、自動車、商取引、家庭、オフィス、街角、交通機関など幅広いシーンで高精度な個人認証を実現することができ、これからのユビキタスネットワーク社会において欠かせない技術になる」とバイオメトリクス認証技術の重要性を指摘した。

 また、「組織規定レイヤ、インフラレイヤ、アプリケーションレイヤという3つのレイヤにおいて、富士通が持つさまざまなセキュリティソリューションを組み合わせることで、独自のバイオメトリクス認証技術を開発してきた」としている。

 バイオメトリクス認証技術の位置付けとしては、認証精度を横軸に、適用分野を縦軸にして各認証技術を配置。「公共性があって精度が高いのは手のひら静脈認証。パーソナルユースに適していて精度が高いのは指紋認証。一方、顔認証や声紋認証は精度は低いが不特定多数の共用利用に向いている」と説明した。


 体験会では、指紋認証、顔認証、声紋認証、手のひら静脈認証のそれぞれについてデモコーナーを設置。実際に各認証技術を利用して、その特長や認証精度を確認することができた。

 指紋認証技術は、指紋模様の分岐や行き止まりなどの特徴を利用して、本人を高精度に認識する技術。世界トップレベルの照合性能を持ち、最新の開発技術では、他人受入率0.0002%を維持しながら、未対応率を従来の3%以下から0.1%以下までに改善している。すでに同社製PCや携帯電話に実装されるなど、実用が進んでおり、最近では個人利用だけでなく企業ネットワークのログイン管理にも活用され始めているという。

 顔認証技術は、相手に意識させない自然な動作の中、テレビカメラで撮影した映像から個人を識別する技術。従来は、部分的に顔が隠れてしまうと認証が困難だったが、同社では目、鼻、口の形や位置の違いなど、顔の部品ごとに認証する「局所パターン法」を開発し、その精度を高めている。現在、まだ実用例はなく、今後の課題として、大きな姿勢変動や照明変動に弱い点、めがね・ひげ・化粧・整形には対処が難しい点などを挙げている。


顔認証技術の特徴 指紋認証技術の特徴 指紋認証のデモシステム

 声紋認証技術は、それぞれの音声から周波数分析により固有の声紋を抽出し、デジタル化して照合する認証技術。富士通のベンチャー制度第1号企業である株式会社アニモが開発した。特別な装置が不要で、電話を利用して遠隔地からでも本人確認ができるのが特長。認証精度は、他人受入率を1%未満に設定した場合、本人拒否率5%未満を実現している。大阪の泉州銀行におけるテレホンバンキングで実用化されているという。

 手のひら静脈認証技術は、手のひらに近赤外線を当て、センサーに暗く写し出される静脈部分で本人を識別する認証技術。静脈パターンは体内の情報であり、複雑で偽造が困難なのが特長で、認証精度は本人受入率が99.99%の場合、他人受入率0.00008%以下を実現している。センサーは35×35×27mm(W×D×H)と小型で、衛生的で公共利用に適した非接触型を採用。金融機関のATMや静岡県裾野市、一般企業などでの個人認証に実用化されているという。


顔認証技術の特徴 手のひら静脈認証技術の特徴 手のひら静脈認証のデモシステム

小中学生向け体験会の様子
 なお、プレス向けの体験会終了後は、小中学生向けの体験会も開催された。この体験会は、電子情報通信学会と日本未来科学館(友の会)が、子供の理科離れを防ぐために実施している「子供の科学教室」として開催するもの。体験会には約30人の小中学生が参加し、デモコーナーで最新のバイオメトリクス認証技術に触れながら、その仕組みを学んでいた。



URL
  株式会社富士通研究所
  http://jp.fujitsu.com/group/labs/


( 唐沢 正和 )
2006/08/25 18:03

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