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IPA、自治体でのOSSデスクトップ導入実証実験を実施

基盤システムのオープン化にフォーカス

実証実験の対象となる自治体
 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は10月2日、オープンソースソフトウェア(OSS)の普及促進を図る目的で、自治体の実務現場においてOSSデスクトップの導入実証実験を行うと発表した。対象となる自治体は、栃木県二宮町、山形県、大分県、千葉県市川市の4自治体。

 今回の実証実験は、2005年度に行われた「自治体におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての導入実証」に続く取り組み。2005年度の実証実験では、OSSデスクトップの有効性は確認できたものの、自治体と外部とで交換されるデータや自治体内部で使われている基盤システムがオープンスタンダード化されていないため、既存システムと共存しながら導入するのが困難であったという課題が出てきていた。今回の実証実験では、こうした課題をふまえ、OSSデスクトップ導入の際の障害解決や、運用面での問題解決への取り組みを重視したものが採択されている。

 2005年度に引き続き、実証実験を行う二宮町では、近隣自治体を含む広域サポートの実施や、OpenOffice.orgでのVBA互換機能の適用など外部ファイルとのやり取りなどを行う。これらの取り組みにより、Windows環境の完全撤廃を目指すとしている。

 山形県では、OSSを組み合わせたSOA基盤の構築、および同基盤上で文書管理システムを構築する。システム基盤をOSS化することで、OSSデスクトップへの移行に対応するとしている。


二宮町での実証実験内容 山形県での実証実験内容

 大分県では、職員認証基盤、電子決裁基盤、ファイル管理基盤の3つのシステムをOSSで構築。このシステムに対し、LinuxおよびWindowsの混在環境下での利用検証を行う。

 市川市では、公共施設予約システムをOSSで構築する。同システムには、職員が運用管理作業でアクセスする際、職員IDカードを用いた認証を行うことから、OSSデスクトップからICカードリーダライタにアクセスするためのソフトウェアを整備し、OSSとして公開するとしている。


大分県での実証実験内容 市川市での実証実験内容

 IPAオープンソースソフトウェア・センター長の田代秀一氏は、「2005年度は、PCの置き換えが中心ではあったが、それだけでは不十分であることがわかった。ベンダー独自のインターフェイスが使われた基盤システムのままでは、OSSデスクトップを導入しても対応できないためだ。基盤システムそのものをオープンスタンダード化する事例が中心となっているのはそのため。今後は、オープンスタンダードでないシステムのオープン化を実施することで、選択肢を増やし、コストダウンや地元企業の参入機会の強化を実現したい」とした。

 IPA参事の秋間升氏は、「これまで学校や自治体でのOSS導入実証実験を行っており、それぞれ積極的に取り組んでいる。しかし、実証実験終了後に、学校・自治体でサポートできるかどうかが課題だ。実証実験終了後のフォローのためにも、地方の業者を育てるなどの対策が必要」と、地域でサポートできる環境構築が今後の課題であるとした。



URL
  独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
  http://www.ipa.go.jp/

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  ・ IPA、OSSデスクトップの実用性を確認-自治体におけるOSS導入実証の成果を発表(2006/07/27)


( 福浦 一広 )
2006/10/02 13:30

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